いっしょに泣いてくれ

深夜、センセンと雨が振り刺さる。ひだり肩はずぶずぶに濡れて悲しい。玄関を開けて廊下を走る。靴下はまだ濡れていて気持ち悪い。ベットに横たわる彼女を抱きしめる。私はわんわん泣いた。彼女は動かない。死んでいるわけではないのだけれど、彼女は自分には関係ないというように全く動かない。私は彼女の毛むくじゃらの体に顔の表面全てを押し付けて、またぎゃーぎゃー泣いた。彼女はそれでも動かない。私は彼女に一緒に泣いて欲しかった。彼女はにゃーともごろにゃーごとも、ぶひぶひともひひーんとも泣かない。それでも私は彼女の腕の中で、いや私の腕の中に彼女を抱え込んで、力強く優しく抱きしめて泣いた。泣いた。そこで彼女は一言。「にゃー。」暖かい。すぐに彼女は立ち上がり、自分の小さなベットに行った。私も立ち上がる。本当は陽が出るまで彼女と泣きあおうと思っていたのだけれど。夜はまだまだつづく。彼女は自分のベットで私の涙で濡れた体をざらざらの舌でぬぐう。彼女は私になりたくないのだ。私の涙に溺れて彼女自身を殺されるのを避けたのだ。白いシーツに肩の雨が染み渡る。遥か昔のおねしょのように虚しさと恥じらいがこの部屋いっぱいに響き渡るように感じて、ああ彼女だけは守らなきゃと思った。

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