猫山 ネコ

ロボと暮らしたい。 すべてフィクションです。

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最近の記事

いっしょに泣いてくれ

深夜、センセンと雨が振り刺さる。ひだり肩はずぶずぶに濡れて悲しい。玄関を開けて廊下を走る。靴下はまだ濡れていて気持ち悪い。ベットに横たわる彼女を抱きしめる。私はわんわん泣いた。彼女は動かない。死んでいるわけではないのだけれど、彼女は自分には関係ないというように全く動かない。私は彼女の毛むくじゃらの体に顔の表面全てを押し付けて、またぎゃーぎゃー泣いた。彼女はそれでも動かない。私は彼女に一緒に泣いて欲しかった。彼女はにゃーともごろにゃーごとも、ぶひぶひともひひーんとも泣かない。そ

    • 家にいよう

      他人と会うことをやめよう。一人一人別々に生きよう。他人の汚い息を吸わずに、バイキンだらけの手も握らずに済むのだ。家の中に閉じこもれば他人の気持ちなんて関係ない。狭い狭い狭い部屋の中で自分に歌おう愛の気持ち。親家族兄弟恋人友達知人先生阿保馬鹿どもに別れを告げてただただ閉じこもろう。四畳半六畳ワンルーム1LDKアパートマンション一軒家搾り取られる家賃に精一杯元を取れるように家にいよう。家にいよう家にいよう。踊るな。ただただ時間を潰せばいい。ねこねこねこねこ。最近何をしてる?本読ん

      • [No.013](社説)われわれロボットに自由はいらない

        ついに明日ロボット保有禁止法が施行される。 人類は人類と同等の感覚を持つことができるようになったロボットをどうしても自由化したかったのだ。現にロボットは人間以上の知能を持ち、鉄でできた冷たい体が傷つくと、量子的な心もまた傷ついた。不確定性の心だけでも十分に傷つくことはあったし、それが人間やその他の動物のように治らないことも多くあった。ロボットたちは十分に生命的であり、そしてどの動物よりも知的であった。それでも今日まではロボットは人間の所有物でしかるべきものであったし、鉄の塊の

        • [No.092]超特集[人類以後のデザインを考える]

          今回は人類がこの地球上から絶滅した後の世界でどのようなデザインが作られるか各界の著名な方々にインタビューして考えていきたいと思います。なぜこのような企画になったかというと、もともと人工物は人間の利用を中心として作られてきたものですが、インターネット以後UI/UXといったデジタル環境内でのデザインでは100%の人間中心設計が施せるようになりました。地球というフォーマットの上に物理的に設計するのではなく、人間の作ったインターネットやデジタル空間といったような場所に仮想的に設計する

        いっしょに泣いてくれ

          [No.011]ピカソみたいなハゲ頭のキミに

          ピカソみたいなハゲ頭のキミに 見えることだけが支配する世界で 文字で書かれた自然に嫌気がさして、あまりにも広い共産主義のニュータウンの中でかつての心を探しているんだね。どこまでもつづく同じ色に塗られた壁はキミよりも垂直に宇宙の上にのっかていて、見えないものなんてないはずなのに、確かにあるこの自意識がキミの言葉みたいに薄っぺらくてどうしようもなくなってしまう。別に薄っぺらくて何が悪いと、使えるだけの言葉で修飾するのが正解の世界で僕はまたちいさくなる。真っ白な時間が恐ろしくなっ

          [No.011]ピカソみたいなハゲ頭のキミに

          [No.129]自己紹介β

          こんにちは、初めまして。 今ようやく金星と火星の間の惑星に着いて、このテキストを書いています。聞こえますか? 私にとって窮屈な部屋で、冷たいパソコンに向かって私のこと、みなさんのことを書こうと思います。 私の名前は猫山ネコです。(※本名です。(嘘)) 好きなものはもちろんネコです。名前に二回もネコが登場しますから。この名前をつけてくれた両親に私がネコのことを好きになるように仕向けられたのかもしれません。名前が私の人格を決めたわけです。まあ呪いですね。 私たちに固有名詞は必要で

          [No.129]自己紹介β

          [No.074]光の速さになるまで

          本日の天気は晴れです。 地球から光の身体で飛び立った日のことを昨日のことのように覚えていますが、実際にあれからどれだけの時間がたったのか思い出すことはできません。かつての賢人アインシュタインの自己と他者を重んじた軽快な理論は概ね正しく実証されました。しかしながら人類があの理論の絶対者である光になるには質量の問題があります。人類には身体というこの世への拘束具によって、あらゆる障害を受けていました。どうしても光の速度に近付こうとするたびに身体の重さによって邪魔されました。それでも

          [No.074]光の速さになるまで