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あんたは家事で手を抜けばいい


「あんたは家事で手を抜けばいい。」

このひと言に肩の力がすっと抜けたという話です。

この言葉を放ったのは
私の長男でした。
当時、反抗期真っ盛りだった彼は
私を「あんた」呼ばわりしていました。

でも

可愛い我が子と行動を共にしたい!活躍しているところを応援したい!できれば写真におさめたい!

そんな野望を胸に私は並々ならぬ努力をしていました。

たとえば
息子と買い物に出ます。
 
お母さんと一緒にいるところを友だちに見られるのを極端に恐れて、私から離れて歩く息子。その息子に遠くから話しかける能天気な母。その距離、なんと50メール!!
異様でしょ?

部活動の練習試合に応援に行くこともひと苦労でした。

見に来られることを嫌がられるので、サングラスをかけ、ひさしの大きな帽子を深々とかぶって会場にこっそり駆けつけました。そして、陰に隠れるように応援したものです。異様でしょ?

(これは、悪目立ちしたせいか、すぐにばれて「来るなら、普通にしろ。」と言われ、普通に応援できるようになりました。ある意味作戦成功です笑)

よい母親でいたい。
よい母親であるためには
自分の時間の犠牲はつきもの。
こんな風に思っていました。


私は家事が苦手です。


しかし
よい母親でなければならない。

よい妻でなくてもいいけれど、子どもに対しては責任があるからです。

一番心を悩ませていたのは
毎日のお弁当でした。

当時
仕事も忙しく
冷凍食品のお世話になっていました。
我が家の台所には
チン!というレンジの出来上がりを知らせる音が毎朝ひびきました。


「クラスの他のやつの弁当は彩りがいい。デザートがあったり、三段重ねだったりするやつもおる。」

ある日
ぶっきらぼうに呟く息子。

これはいけません。

日頃、仕事が忙しく
家事をめいっぱい手抜きしていた私。その事に日頃から、負い目も感じていました。

お弁当は
私と息子の言葉なき会話のチャンスです。
学校でお弁当の蓋を開くとき
心の中できっと息子はつぶやくのてす。
「おっ。今日は俺の好物のハンバーグ。」
「今日はおかずは茶色ばかり。」
「卵焼きの味付けが甘いな。」

でも
友だちと比較して、恥ずかしい気持ちになっているとしたら。

息子は友だちの前で弁当箱の蓋を開けなくなるのではないか。
それは、お弁当との会話も途切れることを意味しています。

次の日から
私は冷凍食品を一切使わない
手の込んだお弁当作りにいそしみました。

私は家事が苦手です。

朝、5時前に起きて
彩りや栄養も考えて作りました。
デザートもつけました。
夜遅くまで仕事をする私にはけっこうキツイことでした。

ても
よい母親であるために頑張ろう。

私は疲弊しました。

1週間後

お弁当を受け取った息子は
まっすぐに私を見て
こう言ったのです。

「あんたは家事で手を抜けばいい。」

私は、意味がわからずにぼかんとしていました。

「あんたは仕事が忙しいんだから、家事は頑張らなくていい。全部頑張るとたおれる。そのほうが困る。」

続けて

「友だちの母さんは仕事を遅くまでしてるわけじゃない。だから、弁当作りを頑張る。あんたは仕事を頑張る。それでいいよ。」

私が頑張る姿や想いは伝わっていました。

そしてこの1週間にかなり無理して、お弁当を作っていたことも察していました。

「人はすべてを完璧にしなくても、頑張っているところがあればいいんだよ。他の人もちゃんとわかってくれて応援してくれるよ。」

以前
息子がうまくいかなくて悩んでいるとき、私がかけた言葉でした。

そうだった。

私は私のやり方で息子を愛すればいい。

私の息子の育て方で
自分自身の設けた
たった1つのルールは

どんなに忙しくても
息子が話をしたいときに耳を傾けること。

そうだった。

家事はできる範囲でやろう。

やらないではなく
やれる工夫をしよう。
便利なものがあれば、それに頼ろう。
手をさしのべてくれる人がいれば、助けを求めよう。
何でも自分1人でやらなくてもいい。


息子は弁当箱を受け取ると
相変わらずぶっきらぼうに
「いってきます。」
そう言って出掛けて行きました。

次の日の朝
我が家の台所には
チン!という冷凍食品の温めが終わったことを知らせる音が、再び響きわたりました。

それ以来

相変わらず
一緒に出掛けてくれない息子。

でも
家の中での会話は増えた気がしました。

仕事と子育ての両立。

子どもに関わる時間がうまくもてずに葛藤する母親は多いものです。しかし、一生懸命な姿はきっと心に届きます。


子育て真っ最中のあなた
1人で抱え込まないで。

すべてを完璧にしなくても、頑張る姿は子どもにちゃんと伝わります。






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