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うつ病を信じない私

布団の山を目の前にして、どうしたらいいか分からずにいたら、子どもたちが起きてきた。

どうしたらいい?でも、このままにはしておけない。

「ねぇ、子どもたちも起きてきたし、そのままだと熱中症になるよ。とりあえず、みんなで一階に行こうよ」

私の声に、少ししてから、布団の山は動き、もそもそと夫が出てきた。

顔はひどかった

顔色というか、寝ていないのか、目はうつろで、涙のあともあり、本当に顔が酷かった。

娘を抱っこして、震える夫を支えながら、一階に降りた。

夫をソファに座らせ、娘を夫の膝にのせ、テレビでアンパンマンを流し、朝食にパンを準備して、夫の隣りに座った。

「…なにがあったの?怖い夢でもみたの?」

「……わからない……突然、怖くなって、ここにいちゃダメだってなって…。それで…布団いっぱい出して…」

全くわけのわからない話だった。

夫は冗談でやっているようにも見えないが、どうしたらいいか分からず、とりあえず頭をなでながら、話を聞いていた。

「…あ、ごめん…布団、片付けてくる…ごめんね…ごめんね…」

「いい!いい!いい!やめて!そんな状態なのに、布団片付けにいくとか辞めて!やっておくから、大丈夫だから、ちょっとは安心して」
「…うん…」


夫をなだめて、子どもたちにパンを渡して、私は布団を片付けに行った

どうしたらいいんだろう?

布団を片付けながら、これからのことを考えたけど、どうしたらいいか全く分からなかった。

「とりあえず、親に相談しよう」

それぐらいしか、私にできることがなかった。

親に相談する時、私はトイレの中から電話をしていた。
夫に電話の内容を聞かれ

「俺のせいで…」と思われて、もっと落ち込まれるのが怖かったから。

トイレの便座に座りながら、親に「夫、しっかりうつ病だった」と伝えた。
親に相談すると、親は想像以上に色々なことを教えてくれた。

親の友人がうつ病になったことがあるらしく、
うつ病の息子を支えているお父さんもいるそうで、

「まず、病院はいってる?必ず病院は行くんだよ。薬もちゃんと飲むこと。病院代が安くなるから、自立支援は申請して、障害者手帳も申請すると、何かと便利だから。それから障害年金でお金がもらえるかもしれないから、そっちの手続きも…」

「まって、待って、待って。まったくついていけてないから。え、どうしたらいいの?」

「とりあえず、仕事辞めたばかりなんだから、所得税や国保、年金の減免とか行った?」

「えー…市役所よくわかんないよー…なんか怒られている気もするし…」

「それでも行かないと。仕事できてないんだから、申請しとかないと」

「うげぇー……」


ここまで、親が言ってくれているのに、私に切迫感は何もなかった。
当時、貯金は20万くらいはあった。
夫が働いてはお金をため、仕事を辞めては貯金分だけ、ニートして、貯金が尽きたら、働きに出る。そんな生活を2回繰り返していたから、また、夫はまた、すぐ元気になるだろうと、思った。

親に相談したのは、愚痴と不安を聞いてほしかっただけなのに、なんか随分大きな話になってきちゃったなぁ。

とりあえず私は自分の両親と、夫の両親に、夫がうつ病だということは伝えた。

両実家からは資金的援助をもらって、私はまた大丈夫だろうと、どこかで思っていた。

薬も飲んで、病院にも行って、お金も余裕はないけど、色々遊びに行ったら、気分も晴れるでしょ!

そう思っていた。

でも、夫の病状は良くなっていかなかった。



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