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ゴミ収集の仕事やってるんだけど、QRコードにピンチを救われた話【ゴミ収集車の運転席からお送りします】

 QRコードってめちゃくちゃ見かけませんか?

 スマホのカメラでQRコード読み取ってポイント付けたり、ウェブサイト見るときも使ったり。電車や飛行機の切符にもQRコードあるし、馬券にもついてます。テレビでも広告に使われたりしますわな。
 
 このQRコード、開発したのはデンソーウェーブです。
 デンソーウェーブは自動認識装置、産業用ロボット、プログラマブルコントローラ、IoT等の機器やシステムの開発・製造・販売をしている会社なのだそうだ。 
 それとゴミ収集のなんの関係があるねん? と思われる方もいると思いますが、ゴミ処理工場でもQRコードが印字された計量カードを使ってるんですよ。

 ワシはゴミを収集すると、ゴミ処理工場まで収集車を走らせます。到着したら、トラックスケールっていう車の体重計にゴミ収集車ごと乗ることで、収集したゴミの重さを量るんですわ。そんときにカードを使います。

 今から3年~4年前まで、テレホンカードのような磁気カードを使っていました。それがQRコードがついた紙のカードに変わったんです。

 磁気カードは機械に入れると、にゅるんと吸い込まれて、計測が終わると吐き出されます。新しいカードは機械の赤い光にQRコードを見せるとピッピッピ、とカードを読み取ってくれます。まあここまでは磁気カードもQRコード付きの新カードも、使い勝手はあまり変わりませんわ。
 だけど、QRコードってすげえ! と思える出来事があったんですよ。

 あれは昼休憩が終わった午後。住宅地のゴミを一軒一軒収集しているときでした。

 けっこう時間に追われる現場で、ゴミはそれなりに多いし、ゴミ処理工場から離れていて搬送に手間がかかるわで焦っていました。
 そんなとき、運転席の窓から金属の焼けたような臭いが鼻を横切った。この臭いがするときはロクなことがない。ゴミ収集車のどこか調子が悪い。故障しているかもしれない。

 あわあわしながら仲間の作業員二人とゴミ袋を回収しまくった。
 とりあえず午後一発目の収集を終え、ゴミ処理工場を目指すことにした。
収集車はさらにおかしくなっていった。ギアは固くて入りづらく、アクセルを踏んでいるのにスピードはどんどん落ちる。坂が思うように上らない。信号を左折するとき、あまりのスピードの遅さに後続車に追突されそうになっていた。
 
ダメだ。とても工場まで辿り着けない。邪魔にならないコンビニに停車して、会社に連絡した。30分くらいかかったけど、整備主任が代わりの収集車と共に来てくれた。

 ありがとうございます! とすぐに最後の現場に向かいたかったが、問題が起こった。
 ゴミ処理工場で使う計量カードが一枚しかないのだ。
 ゴミをぱんぱんに収集した故障車と、今からゴミを積まなきゃいけない代車。どちらも計量カードは必要だった。

 工場でゴミを降ろさないと故障車を本格的に修理できない。おまけにその日は金曜日。土、日と収集車にゴミを積みっぱなしにしたら悪臭も放つし、金属も腐食し痛みやすい。

 所属している環境事業所に代車のカードを取りに行くヒマはないし、ゴミ処理工場に電話して事情を説明するのも時間がかかる。
 こう頭を抱えていても時計の針は進む。ゴミの収集を心待ちにしているマダムは、いつもの時間にゴミ収集車が来ないことを心配しているはずだ。今頃カレンダーを確認して「今日はゴミの収集日のはずよね?」と首をかしげているかもしれない。環境事業所に「ゴミがまだ収集されてませんけど」と問い合わせの電話が殺到しているかもしれない。

 どーしよ。思考停止しかけたとき、ワシは思い出した。QRコードなら、できるかもしれないっ。
 
 ワシは計量カードを握りしめ、コンビニへ急いだ。お金を入れたのはコピー機。計量カードに印字されたQRコードをそのままコピー用紙で複製したのだ。
 
 元の計量カードは整備主任に渡し、ワシは仲間の作業員二人と代わりの収集車に乗り込んだ。コピーしたQRコードはしっかりとポケットにねじ込んだ。

 遅れた収集を根性で終わらせていく。最後の現場のゴミをすべて撮り終え、ゴミ処理工場でコピーした計量カードのQRコードを読み込ませる。
 ピッピッピ。正常に計量ができた音が聞こえてゴミの重量が数値として画面にでたときは、安心と感動が全身を包んだ。
 
 QRコードってすげえ!
 磁気カードには真似できない、QRコードだからこそ突破できたピンチでしたわ。

 QRコードは今でも進化しているそうだ。そのQRコードが普及するよう敢えて特許をオープンしてくれたデンソーウェーブさん、ありがとうございます。ゴミ収集の現場でも、QRコードで救われたました。ぜひ推させてください。ありがとうございました。


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