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[恋愛小説] 1974年の早春ノート...7/夏の日々(R-15)

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[注意:この回は過激な性的表現があるので、気分を害する恐れがあります。ご心配な方は、ここで他のページへ移動することを、お薦めします。]


1975年の梅雨明けは例年より早く関東地方は7月15日だった。

泉が住む勝田から、海水浴場のある阿字ヶ浦までは、私鉄のローカル線・海浜鉄道で約30分だった。

だから泉は小さい時から、よく友達を誘って泳ぎに行っていた。

この頃の海水浴場は、夏は人で一杯で、子供から大人までよく遊びに来ていたいし、海の家と呼ばれる、休憩所も海辺に沢山並んでいた。

優の予備校と泉の短大も7月上旬になると、夏休みになった。

優は、知り合いの親が、阿字ヶ浦で海浜旅館を経営しており、この期間頼んで住み込みのバイトをしていた。

悪友の宮本も誘った、彼もまた浪人していのだ。

夏の期間は、海水浴客で忙しい。食事の手伝い、寝具の片付け、風呂の準備、やることは山のようにあった。

だが、泉が遊びに来ると、夕食の片付けが終わり、空いた時間で二人、夜の海辺で並んで、潮騒の音をいつまでも聞くことが日課になっていた。

暗い水平線から波は繰り返し押し寄せまた、引いていった。そして押し寄せ、引いていく。
二人はその潮騒を飽きずに聞いていた。並んで座る泉の右腕の素肌から、熱いものが伝わってくる。

だから泉は、暇さえあれば、その旅館に来ていたので、いつの間にか、彼女もそこでバイトをすることになった。

明るい彼女は、いつの間にか旅館のアイドル的存在になった。

優の部屋は、同じバイト仲間の宮本と相部屋だったので、泉を入れる訳にはいかなかった。だから泉とのデートは夜の海辺だった。

阿字ヶ浦海水浴場の北側には、米軍から返却された射爆場があった。

当時返還されて間もなくで、まだ開発計画も纏まっていなかった、唯の砂丘だった。

だからそこは優と泉の夜のデートに格好の場所だった。誰も立ち入らなかったからだ。波打ち際は、簡単な柵も切れていて、そこからふたり忍び込んだ。

月明かりの下、いくつかの砂丘を超えて往くと、そこには潮騒の打ち寄せる音と潮の強い香りしかない場所だった。

二人が愛し合う場所にはもってこいだった。直ぐ傍まで打ち寄せる波、常に形を変えていく砂、絶え間ない潮騒の音、それらに囲まれてふたりは愛し合った。

泉「この時が終わらずに、いつまでも続けば良いのに,,。」

優「ああ、本当に。」

勿論、長いキスも十分な愛撫もしたが、ベットじゃないので、色んな姿勢は無理だった。

大体、彼女を乗せるか、抱きかかえる姿勢しか取れなかったが。

泉のあえぎ声は大きな潮騒に消されていった。

時折の達したときの声は、少し心配だったが…。

時々旅館に客が少ないとき、奥の空いている客室にふたり忍び込んだ。

そんな時でも、優は抜かりなかった、必ず避妊の用意はしていた。

泉を守るために。

海浜鉄道の最終は11時だったが、優は9時には彼女を駅まで送りに行った。若い子をそんな時間まで、家に帰さない訳にはいかなかったからだ。

やがて7月は過ぎ、旧盆になると土用波が来るようになり、客は少しずつ減り、海辺の短い夏は終わった。

そして、彼らの海辺の生活も終わり、そこから引き上げた。

それが1975年8月の出来事だった。


1974年の早春ノート タイトル一覧と公開予定日

第1部
1.ダンスは踊れない^7/4
2.小さな恋のメロディー^7/5
3.弘道館公園^7/6

4.クリスマスの夜^7/7
5.春の気配^7/8 
6. 新緑の頃^7/9 [R-15]
7.夏の日々^7/10 [R-15]
8.インディアンサマー/ ^7/11
9.八王子って何処?/ ^7/12
10.雨のステーション/ ^7/13


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