短歌作品　Kaleidoscope

8首連作。

　　　Kaleidoscope　　　　生田亜々子

知ったことかと脳底を這いずる魚の好きにまかせる　まどろみの中

舌・くちびる・指先・まぶた・感情を出さないように発すれば乾ききる

ボルタレン飲めば浮かんで春巻の中に巻かれた季節も食べる

飛べそうでも飛ばないことが負けている気がする非常階段にいる

意味まみれアピールまみれの指先にひび切れていて四月一日

八つ当たりに失敗　自分が傷ついてもそれでいい春のはこべら

ついに万華鏡に進化を遂げたクレイジーソルトを覗く　両目で

ヘアピンを指でなぞってお前によるお前のための話のあいだ

［かばん2021年4月号掲載］