見出し画像

早稲田MBAのゼミと論文 〜修士論文が書けないなら卒業しなくてもいい〜


ゼミ活動と修論が、修了要件

早稲田大学ビジネススクール(通称WBS)は、卒業要件に修士論文が入っている。海外MBAは基本的に修論が必須要件ではないことが多いが、国内MBAは修論を課している大学が多いようだ。
早稲田、慶応、一橋は修論が存在し、グロービスや青学は無いようだ。

修論を書くということは、主査や副査の教授がついてくださって、それが必然的にゼミ活動になっている。早稲田MBA(WBS)の夜間主総合という、私のコースは2年時からゼミに参加ができる。1年時の冬頃から、ゼミ選び(教授との面談)が始まり、2月の頭にはゼミが決定している。ゼミ活動は週1回をベースとなっている。ゼミ生は最大6名の定員のため、教授も入れて7名ということになる。最小だと生徒1名なので、稀にではあるが教授と1on1というゼミもある。

生徒によってゼミと修論の重み付けは異なり、2年次のゼミに向けて1年次から履修する授業を工夫している人もいる。私が耳にしたのは、定量研究を行いたいので、定量分析に関する授業を履修し、解析ツールや分析の考え方を学ぶという人も一定いた。そして、ゼミ選択で第一志望のゼミに行けないと、この世の終わりかのように絶望する人もいた。たしかに、貴重な1年という学びの時間を誰と過ごすのか(教授だけでなく、生徒も)は重要だ。そんなゼミ活動と修論執筆を通して経験したことを書こうと思う。

修論否定派が修論を書くということ

私は修士論文否定派だった。これは、入学前から一貫している。早稲田に合格が決まった時も、修論を書きたくないのに入学していいのかと悩むくらいだった。「修論を書きたくない」というネガティブな気持ちが入学前から、卒業直前の今に至るまでずっと持ち続けていた。

修論を書きたくない理由の1つとして、ビジネススクールに「学術的なアウトプットを求めて入っていない」ということがあった。アカデミアの学びは求めているが、自分がアウトプットする先は自分の今の仕事であり、ビジネスが良いという考えからだ。もっと冷めた言い方をしてしまうと、学費というお金を払って、お金を稼ぐための武器を身につけにいっているのに、修論を書いても稼げない。まあ、そんなことを言ったら元も子もないが。

だから、修論に対しては割り切って接していた。常に「修論が書けなくて卒業できないなら、卒業しなくて良い」というモチベーションで向き合っていた。結果としては、他の生徒と同様に要件を満たすだけの修論は最低限書き、口頭試験もパスした。そして人並みに先行研究を学び、定性研究を行い、簡易的なテキストマイニングとかも回してみっちゃったりした。

修論のアウトプットについては、誇れるものではないが、修論を書く活動と、ゼミ活動では得るものが多かった。

春合宿で広島でゼミ活動

ゼミ活動というもの

1年のゼミ活動を振り返ると、前半ではインプット、後半では修論のアウトプットのためのディスカッションだった。早稲田MBA(WBS)の夜間主総合コースのゼミは毎週金曜日に同時に開催されているため、この時間は全M2が早稲田にいることになる。ただ、ゼミの教室はバラバラなのでほとんど会うことはない。ゼミの時間は基本的には、生徒からの研究進捗を発表し、教授だけでなく生徒同士のフィードバックも行う。私は同級生から素晴らしいアドバイスをもらえたおかげで論文の品質が向上していったが、私が同級生たちに良いフィードバックを返せていなかったのは反省である。

私は樋原准教授のもとで学ばせて頂いた。樋原ゼミは、自由闊達な雰囲気があり、教授との距離もとても近く、先生の気さくさと懐の深さが心地よかった。樋原先生は「エフェクチュエーション」という新しい理論を研究されている。エフェクチュエーションは熟達した起業家の思考様式で、これについては別のnoteで詳しく書きたいと思う。

樋原ゼミの年間計画

樋原ゼミは年間計画の大枠を4月に立てた。同じゼミ生は全員エフェクチュエーションについて学びたいということだったので、論文を中心に輪読を行った。英語でMBAの記事で、授業を英語で履修することについて書いたが、英語で学ぶことの心理的ハードルが下がっていたこともあり、論文を原書で読む経験は良かった。特に新しい理論ほど英語で書かれている事が多く原書を読んで理解を理解できたのは自信になる。ゼミ活動のスケジュールはざっとこんな感じだった。

  • 3月:春合宿@広島、輪読「CAUSATION AND EFFECTUATION」

  • 4・5月:輪読2本「OPPORTUNITIES AS ARTIFACTS AND ENTREPRENEURSHIP AS DESIGN」「Affordable loss: Behavioral economic aspects of the plunge decision」

  • 6月:各自で選択した論文1本、ゲストスピーカー Deep Skill著者 石川明さん、San Diego AI起業家 Anjum Guptaさん

  • 7月:イスラエルセミナー(KPMGイスラエル拠点メンバーと懇親会)、OBOG会、合同ゼミ(平野ゼミとディベート)

  • 8月:夏合宿(論文方針発表、BBQ)

  • 9月:論文指導、合同ゼミ(杉田ゼミ、平野ゼミ)

  • 10月:論文指導、(ゼミ後にハロウィンパーティー)

  • 11月:論文指導

  • 12月:冬合宿@浜松市(スタートアップ企業、浜松市役所スタートアップ推進課訪問、論文指導)

修論は夏合宿後から本格化し、8月以降は各個人の論文進捗について話をすることになる。もし論文がなかったら、4〜7月までのゼミ活動を秋冬にも続けられていたのにと思うと、やはり論文は否定派だ。

3月上旬の早稲田は桜が咲き始めている

論文を書いてみたから言えること

人間は自分がやったことを肯定したい生き物だ。だから、私が修論を書いてみて良かったと思えるのは、論文というものがどうゆう書き方をされているものなのかを学べたことだ。先行研究や仮説があり、そこから自身の研究結果を主張していく。この構成を理解できていると、他の論文を読む時の「読み方」というものを身につけられたと思う。また、論文という情報源へのアクセスの仕方を学べた。論文の扱い方を学べたのは、今後役立つといいなと思っている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?