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働き方改革2.0 ~新型コロナウイルスによって変えられた世界

前回は、「産業や産業構造が変わることで働き方は変わる/働き方改革2.0」について書きました。

今まさに、新型コロナウイルスの蔓延によって、いろいろな産業がカタチを変えていっています。そして、産業や産業の構造が変わることで、産業それぞれが持つ価値も、そして働き方も変わっていっています。

じゃあ、どのように変わっていっているのか?
私の妄想も含めて、脈絡もなく、つらつらと書いてみます。

▼まず初めに、教育研修事業。

弊社も事業として従事していますが、業界全体で昨年対比が約30~50%ダウンしている実感値(実施・開催に対する実感値/売上はキャンセル規程などでもう少し維持できている感じ)です。

3~4月は新入社員研修による繁忙期であり、そして新入社員研修は大切な節目研修でもあるものの、3密とまでは言いませんが、密集・密閉(一部は)なので、研修は1.5密くらいでしょうか。よって、延期・中止している会社が少なくありません。

そのような中でも、しっかり業績を維持できている教育研修会社は、WEB会議システムを用いたオンライン研修へ移行しています。オンライン研修では、ZOOMやTeamsなどのWEB会議システムを用いて、これまでの研修プログラムを一部WEB会議システム用にカタチを変えて実施しています。

これまで、eラーニングでは物足りなさがあったからか、「オンライン研修はリアル研修に勝てない」といった既成概念があったように思います。しかし意外に、オンライン研修でも、工夫次第で十分に研修が行えており、積極的にオンライン研修へ順次切り替えていっている教育研修会社は、これからも生き残っていくように感じています。

しかし、リアル研修からオンライン研修へ移行する変化が、教育研修事業における大きな変化ではありません。教育研修事業における最も大きな変化は、ZOOMやTeamsといったWEB会議システムに規制される。という変化です。

つまり、ZOOMやTeamsといったWEB会議システムで出来ることが、オンライン研修で出来ることと同義になり、WEB会議システムというプラットフォームに教育研修がコンテンツとして規制されることが最も大きな変化になると考えられます。

ZOOMやTeamsといったWEB会議システムは、会議をWEB化した便利ツールではなく、様々な領域におけるコミュニケーションプラットフォームになっていく可能性を秘めているわけです。

▼次に、WEB会議システム(ZOOMやTeamsなど)。

WEB会議システムは、新型コロナウイルスの蔓延によって、一気に市場を拡大しました。これまでは、新幹線や飛行機で行く距離の相手とのコミュニケーションツール、また極めて多忙なビジネスパーソンの会議やコミュニケーションを補完するものでした。しかし、新型コロナウイルスの蔓延によって、在来線、場合によっては歩いて行ける距離の相手とのコミュニケーションですらも、WEB会議システムが代替し、媒介として機能しています。

3密や不特定多数の人との接触を避けるように、電車・バス・タクシーなどの公共交通機関の利用は減り(タクシーは通常の約1/3~1/4程度)、これまで生活インフラであった公共交通機関から、これからはWEB会議システムが新しい生活インフラとして機能し始め、公共交通機関の市場をじわじわと侵食していっているとも言えるではないでしょうか。公共交通機関の陳腐化は、人口減が深刻な地方エリアならまだしも、人口の多い首都圏においても起こる。これまででは考えられない世界が、この先には待っているのかもしれません。

特に今は、「家で過ごそう」「Stay Home」を御旗に、どの会社でも在宅勤務が主流になり、WEB会議システムは社員同士を繋ぐコミュニケーションツールとして、仕事を進めていく上で欠かせないものにもなっています。また、このWEB会議システムは仕事上の利用だけでなく、新しい交流のカタチとして「ZOOM飲み会」というものも生み出しています。ひょっとするとこの先には「ZOOM合コン」や「ZOOM結婚式」なども出てくるのかもしれません(もう存在していたりして)。

移動や時間短縮といった物理的な行為を、WEB会議システムが代替しているだけでなく、このように新しい交流の文化も生み出しつつあるわけです。こうなってくるとWEB会議システムは、単なる便利ツールから、生活インフラを超えて、ひとつの世界になっていくことも考えられます。コミュニケーションの相手は、実際に存在する人なので、仮想現実とまでは言わないまでも、インターネット越しに半仮想現実的に交流する世界が一般的になっていくのでしょう。WEB会議システムは、まだセキュリティの問題を色々と抱えているものもありますが、新しいひとつのインフラとして、これから確立されていくと考えられます。

このようにWEB会議システムがひとつのインフラとして確立されていくと、また新たな問題も発生してくることが考えられます。少し前のインターネットニュースにもありましたが、それはWEB会議システム越しの“なりすまし”です。WEB会議システム越しには“鈴木さん”だけれども、本当は違う。なんていう気持ちの悪いことも、これからは発生しそうです。キムタクがしゃべっているけど、実は大野(笑)みたいな、イタズラで済めばネタとしては面白いですが、オレオレ詐欺も高度化して、WEB会議システムを使った“NEOオレオレ詐欺”もこれからは発生するかもしれません。

▼そして、在宅勤務・テレワーク。

前述の通り、新型コロナウイルスの蔓延によって、在宅勤務を強いられるようになりました。そして、在宅勤務を支援する事業やサービスなどが台頭し、在宅勤務は急速に一般化しました。更に、その在宅勤務を支援する事業やサービスの台頭は、産業や産業構造に変化をもたらし、在宅勤務を浸透・定着させつつあります。

これまでは、やや敬遠されてきたようにも思える在宅勤務。しかし、出社して勤務するよりも、個々の仕事の実態が強制的に可視化されることで、「誰が仕事をしていて、誰が仕事をしていないのか」、また「誰が成果を上げていて、誰が成果を上げていないのか」が明確になった会社も少なくないと思います。

在宅勤務によって明確になったのは、個々の仕事の運びや成果の実態だけではありません。発生しているコストと在宅勤務による生産性も明確になってきています。例えば、会社が負担している“オフィスの家賃”・“通勤交通費”・“光熱費”。そして在宅勤務することで、費やさなくてよくなった通勤時間。在宅勤務は、仕事の生産性を高めるだけでなく、気持ちに余裕をもたらしたという話も聞きます。会社によっては、これまで負担していた様々な費用を、在宅勤務手当として社員に追加支給し、自宅または自宅近くに、勤務用のマイスペースを作ることを奨励する会社も出てきています。

このような勤務用のマイスペースで仕事ができるようになると、港区や中央区など、都心やその近くにこぞって住居を構える必要は無くなり、湘南や鎌倉、京都、奈良、神戸といったような、自分自身が住みやすいエリアや街に住む人が増えていくでしょう。そして、丸の内や大手町、新宿などの高層ビル群は、時間と共に少なくなっていくのかもしれません。成果にコミットして、自分たちが働きたい場所で働く。そういった世界がすぐそこまで来ている気がします。

また、この勤務用のマイスペースは、副業も促進していくでしょう。在宅勤務は、時間による拘束よりも、成果にフォーカスが当たりやすいため、優秀な人であればあるほど、時間の余裕が生まれ、その空いた時間を使って副業を行う人も出てくるでしょう。

▼変化する会社の存在。

勤務用のマイスペースを持ち、副業を行う人が増えてくると、会社はどのような存在になるのでしょうか。会社に通勤することは無く、携わっている仕事も、とある一社からの仕事ではなく、複数の会社からの依頼によって成り立っている。これまで会社と呼ばれてきた場所は、これまでとは全く違う機能を担い、会社と従業員は全く新しい関係になっていくでしょう。

昔は会社という団体に入社することで、その会社が有している仕事に携わり、その会社から評価をされ、昇給昇格(場合により降給降格)する。そして、仕事の成果や結果に対して、新しいポジションや役割が与えられ、それらが経験やキャリアとなり、場合によっては、他社へ転職する際の足掛かりになっていた。

しかし、これからは通勤することは無く、携わっている仕事も、とある一社からの仕事ではなく、複数の会社からの依頼によって成り立っている。そうなると、所属と呼ぶのか、在籍と呼ぶのかは分かりませんが、会社は、とある管理している人材の身元を保証するような認証機関、代理で税金を納付する機能に変化していくのかもしれません。

また、会社と従業員の関係は、これまでとは異なり、生産性の高い優秀な人材は会社に対して(今まで以上に)優位に立て、その優秀な人材が気持ちよく働けるような、従業員サービスを提供することが会社の役割になる。そんなタレント事務所のようになるのかもしれません。

自分自身がこれまでに所属・在籍した会社によって、その人の価値が変わるような、経歴に偏重した考え方も、これからは変わっていくでしょう。会社や所属している団体ではなく、今まで以上に個が尊重され、経験や成果、また自分自身の情報発信や繋がりが、その人の価値を決める。所属してきた会社や団体よりも、インターネット上に記された、フォロワーの数や秀逸な意見の発信がその人の価値を決め、就ける仕事を決めていくのかもしれません。

「おじいちゃんが若い頃は、会社というところで働いていたんだよ」 なんてことを言う未来が、すぐそこまで来ているのかもしれません。

▼本格的な情報資本主義の到来。

個が尊重され、所属や在籍している会社に左右されない世界。今まで以上に個が尊重され、経験や成果、また自分自身の情報発信や繋がりが、その人の価値を決める。今の日本ではまだ、個人の格付けに対しては否定的な意見も多いですが、これからは、中国のようにインターネット上の情報による個人の格付けが当たり前になっていくのでしょう。

お金よりも何よりも、自分自身に対する情報の方が重要。自分自身に対する情報が良い情報であれば、格付けは上がり、社会的ステータスも上がり、仕事も舞い込んでくる。そんな世界、本格的な情報資本主義が到来するかもしれません。

所属や在籍している会社や学歴よりも、個人が発信している情報、また繋がっている情報や情報元の方が、その人の価値を決める世界が、もうすぐそこまで来ているのかもしれません。

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▼最後に。

今まさに、新型コロナウイルスの蔓延によって、いろいろな産業がカタチを変えていっています。そして、産業や産業の構造が変わることで、産業それぞれが持つ価値も、そして働き方も変わっていっています。

これは明らかに、ピンチではなく、チャンスであり、
このチャンスをものにした、個人や事業主だけが、この次の産業や産業構造、そして世界を描くのだろうと思う。

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