【EXHIBITION】 沖潤子「さらけでるもの」

2022年10月某日
@神奈川県立近代美術館 鎌倉


人の呼吸の跡が布の上に残っているようだった。


規則的な糸使いの中に現れる乱調は、自然の摂理が働いて生まれた美のようにも、世界の縮図のようにも見えた。あらゆるものは、非常に不安定ながら完璧な美をもっていると感じる。



少しだけ刺繍をしていたとき、コースター1枚を作るのもやっとのことだった私には、想像にも及ばない世界だった。



しかし、実際に作ってみて感じたことがある。完成を急いだり結果を求めると、その作業が苦しくなり、出来上がりも美しくならない。ただ、一針一針に意識を向けて出来たものは、何故かそれなりのバランスをもって美しさを表す。


溶け合うように布と向かい合い、出来上がったバランス。ダウンライトの展示室の中では、作品の息遣いはより差し迫ったものに感じられた。

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