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カナダ留学日記 授業:キャリア準備

授業紹介編②、月曜日の2限、キャリア準備クラスである。
正直このクラスはそんなに課題が大変だったわけではなく、悪い言い方をすれば「息抜き」に当たる時間だった。授業の目的は、名前の通り就職活動の準備である。

メインは3つで、
①レジュメ(履歴書)作り
②インタビュー(面接)練習
③グループプレゼンテーション

である。特にレジュメ作りは最初の数週間を費やして徹底的に行われた。生徒の人数が多いため、教授が一人一人にアドバイスをしているとどうしても他の生徒に待ち時間が発生する。効率のいい授業形式だったかというと、決してそうとは言えない。しかしだからこそ、私はリラックスして参加することができた。隣に座っている友達と相談をする時間も取れたので、色々と確認しながらレジュメを作ることができた。

また、教授も私たちと同じ元留学生の立場で、カナダに移住して仕事をしている人である。大先輩なわけである。我々の立場を十分理解してくれているので、アドバイスが的確であった。

①レジュメ作り
レジュメとは日本でいう履歴書なのだが、カナダと日本とではスタイルが全然違う。まず、求職者の個人情報が驚くほど少ないのだ。(もちろん連絡を取るために住所や電話番号は載っているが)基本的に性別、年齢、国籍を載せないのである。相手の生まれ持ってのステータスで判断するのは「差別だ!」ということに繋がりかねない。つまり、自分の実力、経験、コネで勝負の社会なのだ。
また、「履歴書」という形式の紙がコンビニで売っているわけではない。求職者は履歴書のレイアウトからフォーマットまで自分で作るのである。
この授業では、一番基本のシンプルなスタイルでレジュメを作ったのだが、とにかく教授は「文法ミス」と「文章間のスペース」に厳しかった。カナダで就職経験のない留学生のステータスなどたかが知れているので、内容よりも、どれだけ完璧なスタイルレジュメが作れるかに重きが置かれていた。
「文法ミス」に関しては、ChatGPTのお世話になって文章の「お直し」をしてもらった。教授曰く、これは正しいAIの使い方だという。アイデアが自分で出したものなら、それの文法チェックや丁寧な言い換え等の修正をAIにしてもらっても問題はないとのことだった。確かに、ワードにも文法チェックのAIが搭載されていて、私は普通にそれを使っている。
私が一番苦戦したのは「スペース」だ。私はこういう「規格」を守ることがすごく苦手で、ワードで何かドキュメントを作ろうものなら段落がごちゃごちゃになってしまう。レジュメ作成でもこの段落ガタガタ問題が発生し、随分苦労した。途中で嫌になって投げ出したくなったが(短気)教授が手伝ってくれたのでことなきを得た。私がPCではなくiPadを使っているのもあって、ワード(アプリ)の形式が正規版と違っているため余計にやりにくかったのもある。

なんとかレジュメを完成させたら、次はカバーレター、リファレンス作りである。カバーレターはレジュメの表紙で、そこに簡単な挨拶と自分の経歴等の要約を載せる。これも書き方がわからなかったので、授業でやってくれて助かった。
リファレンスというのは、自分の信用を保証してくれる人たちの名前がリストになっている書類で、前の雇用主や大学の教授の名前が載せられる。採用者は、求職者のリファレンスリストにある人物に連絡をとって、求職者について色々聞くことができるわけだ。

②インタビュー練習
さていよいよインタビュー練習である。練習は授業2回分行われるのだが、教授がとにかく念を押してきたのが「服装」である。生徒たちは本番のインタビューに臨むつもりでフォーマルな格好をして授業に参加することになる。と言ってもカナダには日本のようなリクルートスーツの概念がないので、オフィスカジュアルな格好でもOKなようである。私は当然スーツなんて日本から持ってきていないし、新しく買う金銭的余裕もない。お馴染みのValue Villageに行って中古のジャケットと白いブラウス、黒のパンプスを調達してきた。30ドルくらいで用意できたが、授業2回のためにこんな出費をするのはちょっと痛いなぁと思っていた。ただ、この「面接に行ける服を持っている」という状態があることが、後々私がチャンス掴む後押しをしてくれたので、この授業には大いに感謝している。

インタビュー練習、とは言っても、1回目の授業はほとんど服装チェックであった。あれだけ教授が念を押して言っていたのに、スーツを着てこなかった学生は少なくなかった。なんならビリビリのダメージジーンズで参加した学生も2人いた。教授はそういう学生たちを一人一人丹念に注意していき、次回は必ずフォーマルな格好をしてくることを約束させた。これくらいやらないと話が伝わらない学生もいるのである。これは、「きちんとTPOにあった服装を期日までに用意して参加する」という練習にもなっているのだなあと思った。
インタビュー練習自体は、一人一人前に出て教授を面接官に見立てて1〜2問やりとりをするだけである。その都度教授が質問の意図や、生徒の答え方の良かった点、悪い点、模範解答を説明してくれる。私は個人個人がしっかり練習できるわけではないから、そんなに意味ないな〜くらいに思っていたが、これも後でクルーズラインのJob Fairで面接を受けることになった時に随分役に立った。


③グループプレゼンテーション
私が一番嫌いなグループプレゼンテーションである。というのも、グループのメンバーによってかなり苦労する博打みたいな課題だからである。3人グループで、他の2人が怠け気質だったのでプレゼン課題のリサーチやスライド作りは私がやった。グループのうちの1人が練習の約束の時間に遅れてきて私の予定を狂わせたり、私のメールを無視して発表の箇所を勝手に決めてきたり、そもそも課題のインストラクションを一切読んでいなくて全部私に1から説明させたり、本番でいきなり私に自分の発表の箇所を押し付けてきたりと最後の最後までかなりイラついたのだが、今思えばいい経験だった。何度キレようかと思ったことか…でも欧米では、キレる人間は「感情をコントロールできない幼稚な人間」というレッテルを貼られる。アンガーマネジメントが大切である。日本人としか一緒に仕事をしてこなかった私の「常識」と、彼らの「常識」は全然違う。イライラしても仕方ないから、話し合いで解決なんて面倒くさいことはせず、こっちが妥協してどんどん進めていったほうがいいのだ。そして、「こいつ無理」と思ったら次から二度と組まなければいいだけなのだ。今回の試練は私を随分生きやすくしてくれた。でもこの時のことに関して今詳しく書こうとしたら怒りがぶり返してきてイライラしてしまったので、もうちょっと冷静になった時に書こうと思う。


この授業の意義

さて、私が「楽だったな〜」と感じたように、この授業はどの学生にとっても「手抜きをしていい枠」だったと思う。他の授業の課題がかなりキツかったから、課題の締め切りが被った時に真っ先に捨てられる(雑にやる)枠だったと思う。私も「レジュメなんてネットで調べれば自分でも作れるし、インタビューもそんなにしっかり練習できなかったしな〜」くらいに思っていた。ただ、教授が熱い人だったので、その留学生たちを応援してくれる熱意に感動して私は真面目に参加していた。

しかし、まさに最終週、私はこのクラスの恩恵を受けることになった。
最終週、私はコーディネーターの教授から夏のバイトを探すのに、クルーズラインのJob Fairに参加するを勧められた。興味はあったのだが、とにかくその週はテストと課題、プレゼンテーションのオンパレードで時間がなかった。舞い込んできたチャンスなのだが、私はスルーする気持ち90%であった。なんなら、なんでもっと早く教えてくれなかったんだよ〜〜;;;くらいの気持ちであった。そしたら準備できたのに!と。

とにかく準備が必要である!!Job Fairに行くとなったら、まずフォーマルな服装がなきゃいけないし、レジュメもしっかりしたの作らなきゃいけないし、インタビューだってやるかもしれないから練習しなきゃだし・・・・・・!!!

ここで私はハッとした。そういえば、私はレジュメもカバーレターもリファレンスももう作ってあるじゃないか。キャリア準備のクラスで。教授にも目を通してもらってA判定のお墨付きをもらっているものがあるじゃないか。フォーマルな服装も買ったじゃなか。インタビュー練習も一応やっているじゃないか。

そう、私はすでに準備ができていたのだ。これに気づいた時には感動した。私は「忙しい」を言い訳にして、せっかく教授が勧めてくれた案件をスルーしようとしていた。しかし、忙しいながらも、参加できるだけの最低限の条件は満たしていたわけである。私は「就活の準備なんて4学期でよくない?なんで2学期にやるんだろう?」と思っていたが、2学期にこの授業があったからこそ、私は夏のバイトを探すのに間に合ったわけである。
これはもう参加するしかない!と決めた。

そして、Job Fair当日。
多くの留学生らしき人たちが参加していたが、スーツを着ていない人がほとんどであった。なんならレジュメも持ってきていなかった。その中で、スーツを着てカバーレターとリファレンス付きのレジュメを持ってきた私はかなりやる気のある学生になれていたのではないだろうか。
インタビューもその場で受けた。英語でインタビューを受ける初めての機会であった。緊張したし、英語が下手だから上手く答えられなかったと思う。ただ、面接官の質問はキャリア準備のクラスでやったものとほとんど同じだったから、「質問の意味がわからなくて押し黙る」ということにはならなかった。精一杯答え切ることができた。それで、1週間後にJob Offerを受け取った。

私も我ながら頑張ったと思う。忙しいながらも教授にメールしてテストの振替を工面してもらって、当日はテスト後にお金を払ってウーバーを使って会場に駆けつけたわけだから。でも、これを後押ししてくれたのは、「もう準備ができている」という自信をくれたのは、間違いなくキャリア準備のクラスであったと思う。今思えば、本当に実践的なクラスだったのだ。授業で習ったこと、作ったものが全部実際の就活で使えたのだ。本当にありがたいことだったと思う。

私がこのクラスでわかったこの一つは、「チャンスが巡ってきてから準備していたのでは間に合わない」ということだ。レジュメなんて、ネットで調べれば自分でも作れる。でも、「作れる」と「作ってある」は違う。参加したいJob Fairを見つけた時、その時点でレジュメができていないなら、いくら後から完璧なものを作ったって遅いのだ。やりたいことがあった時に、すぐに「やるぞ!」と踏み出すためには普段からの準備が必要なのだ。私のように土壇場でなんとかしようと考えて先延ばし癖がある人間にはチャンスは掴めない。本来なら。
今回は、このクラスのおかげで「教授のお墨付きのレジュメ一式」をたまたま持っていたのである。



私は教授にお礼のメールを送ることにした。実は私がシャイなのもあって、この教授とはあまり親しく絡んでいたわけではない。でも、最後の授業の日に「留学生の君たちのカナダでの未来と成功を願っているよ」と言ってくれた教授に、少なくとも、あなたのクラスのおかげでキャリアの一歩が踏み出せましたよ、とお礼を言いたかった。

ChatGPTで文法チェックをすべきだったのだが、勢いで書いて勢いで送ってしまった。
そうじゃないとこんなメールは書けなかった。

教授はすぐに返事をくれた。
おめでとう!と一番に言ってくれた。

ありがとうございましたーーー!!


カレッジで勉強をしていると、ただの座学だと思っていたことが驚くほど現実世界にリンクしてきて驚かされる。次回は英語のクラスの紹介である。


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