中島みゆき 愛だけを残せ

残す(のこす)
全体のうちの一部をそのままにしておくこと。


遺す(のこす)
死後にとどめる。後世に伝える。

曲は詩であり、詩は選択された文字で、文字には意味がある。
だからどうしてこの字を充てたのだろうかと想いを巡らせると、近づく事ができる気がして調べてしまう。

今日は思いがけず出会った中島みゆきさんの曲「愛だけを残せ」に引き込まれたのでnoteを書こうと思う。
プロモーションビデオは全てに意味がありそうで魅入ってしまった。

私はどうして惹かれたのだろう。

PVを観る

 "どこかにサインがあるから見逃さずに探すといい"と教えてもらったことがある。
私の好きな人は見つけることが得意である。
面白いものを見つけることができる人と、そうでない人の違いはなにであろうか。
私は文字にするとより情報が可視化されて、"気づき"が増える気がする。


今回はこのPVの破片になったサインを一つ一つ拾い上げていきたい。
著作権があるのでそのまま載せることはしないけれど、このnoteをみた人がそれぞれの解釈でより豊かになればいいなと思っている。

鏡と夫婦

一枚の鏡と "愛だけを残せ" という強いメッセージから始まる曲は真理だと思う。

miroiterie /mirwatri/
[女] 鏡製造;鏡製造所;鏡製造[販売]業.

réparer
1修理する.
2償う,弁償する.
3(体力などを)回復する.
プログレッシブ仏和辞典

日本ではなく、どうしてわざわざフランスの地を選んだのだろう。

歴代フランス大統領とその夫人達の恋愛が日本と異なっていてニュースになるくらい、フランスは愛に重きを置くアムールの国である。
愛の国フランスで、"愛だけを残せ"と叫んでいる。
フランスの生き方に私はまだ詳しくはない。

愛が文化である事は理解できたが、私はフランスの生き方は何故か不安になる。
羨ましくもあり、後ろめたさも感じる。

子孫について考えてしまうからだろうか。

製造所には2羽の鳥がいる。


英語でparrotは鸚鵡、インコはparakeetだが、鳥には色々な呼び名がある。
二羽のインコがいたらきっとlovebridsも連想するはずだ。

lovebird
《鳥》ボタンインコ
《lovebirds》仲の良い恋人同士、アツアツカップル、恋人たち、おしどり夫婦

lovebirds of __ years
《the ~》付き合って_年になる男女[恋人同士・カップル]

lovebridは身体が緑のボタンインコでのことであるが、愛情深い性格で、つがいはとても仲良くなる。海外では、恋人や夫婦の暗喩として使われる。

これらの情報から、フランスの鏡製造所兼修理屋で働く女性と夫婦がテーマであることがわかる。

鏡は夫婦のメタファーでもあり、このPVになくてはならないものである。
鏡を作ることとは、夫婦を作ることであり
鏡を修理することとは、壊れた夫婦関係を再構築するという比喩が使われているはずだ。

私の鏡は最初から割れていて、直し方がわからないのかもしれない。
だから興味をそそられるテーマだ。

手鏡を覗く夫婦の部屋は、明るい日差しが差し込み、白い色と笑顔が印象的に映る。幸せそうである。

しかし場面が一瞬で転換し、白から黒へ変わる。
外は暗く、夫婦のどこかがすれ違ってそうな雰囲気を醸す。
服やカップなどの小物も全て黒となり不穏である。
色調が心理に影響する。
洋服、部屋の色使い、顔つき
それらがもたらす印象は幸福かどうかの判断となぜか結びつく。
逆をいえば、色彩を効果的に使用することで幸せに近づけるのかもしれない。

白、黒の意味も日本語は面白い。

少しずつ修理屋さんの磨く鏡が大きくなるのは時の流れを現しているはずだ。

歌詞

愛だけを残せ 壊れない愛を
激流のような時の中で
愛だけを残せ 名さえも残さず
生命(いのち)の証に 愛だけを残せ

やむにやまれぬ人生は綱渡りだ
選ぶつもりで選ばされる手品だ
闇の中の風のように
突然に愛は居どころを求める
弱き者汝の名を名乗れ しなやかに
強き者汝の名を名乗れ ささやかに
みんな儚くて みんな愛しくて
振り返ってしまうから

愛だけを残せ 壊れない愛を
激流のような時の中で
愛だけを残せ 名さえも残さず
生命(いのち)の証に 愛だけを残せ

思いがけない幻に誘われて
思いがけない風向きに運ばれて
偶然の朝 偶然の夜
我々は何も知らされず 踏み出す
愛だけを残せ 中島みゆき

"汝"という言葉は上のものが下の立場ものに対して使用する言葉であり、汝自身を知れ、汝の隣人を愛せよなどから判るように、神にまつわることが多い。

弱き者はしなやかに強き者はささやかにと書かれているが、これを辞書で調べる。

しなやか
・動きやようすがなめらかで柔らかなさま。
・姿態などがなよなよして上品なさま。

ささやかとは、形や規模があまり大げさでなく、控えめなさまである。


現代社会は男女の待遇を平等にするように働きかけているが、一般的に女性は男性に比べて、体力や金銭面で弱い立場にあることが多い。
弱き者は女性、強き者は男性を指しているはずで、女性はしなやかに、男性はささやかに神の前で名を名乗る。

柔らかで上品な女性と控えめな強い男性

愛を育むための意識

女性の私は、柔らかく上品であれるだろうか。
1人で生きていけるほど強くあっては壊してしまう。
そして年齢を重ねるほどに品を磨かなければならないと思った。

子と妻を守る男性は、強くあってほしい。
その"強さ"とは色々な形があるが、強さをひけらかさず控えめにするほうがきっといい。

新しい鏡


まだ残っている愛をみつけて、割れた部分を繋ぎ合わせて、日々を繰り返してきた。



男性が若い女性に白髪を抜かれるシーン
枯れた花
大きなソファーの片隅に一人で座る彼

どこで彼や彼女は寂しくなったのだろう


蝋燭は鏡屋さんが繋いだ人の縁か愛の炎だろうか

夫婦は熱烈に愛し合っている時間が長くは続かないかもしれない。

緩やかに愛しくなれば幸せだけれど、家庭によってはヒビやカケを見なかったことにして不自由なまま鏡を使用したり、思いの外亀裂が大きくなって割れてしまうかもしれない。

老いた男性が割れた鏡で指を切った。
その彼が、鏡を元に戻して欲しいと依頼する。

元に戻らないけれど、新しい額に割れた鏡を芸術作品のようにはめ込む中島みゆきさんが伝えたかったことはなんだろう。

"愛だけを残せ"で始まり
"愛だけを残せ"で終わる曲との邂逅

夫との関係を考えてしまった。
時が流れても修復できる愛への希望に惹かれたのかもしれない。

この曲と出会えたことも嬉しい。

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