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カリブの女王  第13章 快速帆船の降伏①

数分後、海賊たちの中から選ばれた狙撃の上手い40名が2列になって、通路の端に積み上げられた家具や木箱に身を隠しながら、船室、共用部屋へと静かに降りて行った。お分かりのように、黒い海賊はこれら40名の男たちを犠牲にして、新たな、特に倍以上いる敵を攻撃するつもりは毛頭なかった。攻撃はただのデモンストレーションで、スペイン人たちの注意を喚起するためだった。敵を屈服させる襲撃は、メインハッチから行われるはずだった。メインハッチの周りには既に残りのすべての海賊が集まっていた。
「大騒ぎするんだ」黒い海賊の言葉だった。
 騒ぎはすぐに始まり、段々と耳をつんざく、ものすごいものになった。2分隊は密かに配置されると、すぐにスペイン人たちが築いたバリケードに銃撃を始めた。総攻撃を促していると思わせるために、恐ろしい叫び声を上げた。
 スペイン人たちはすぐに激しく撃ち返し、通路の真ん中に置いた大砲を轟かせた。近距離での射撃のせいで船は壊滅的だった。砲弾と銃弾はあっという間に仕切りを打ち砕き、船室や共用部屋の家具を壊した。鏡、クリスタル、陶器がガシャガシャと音を立てて落ち、絵画とシャンデリアも落下した。海賊たちは床に腹ばいになり、破片が身に降りかかるのを感じていたが、じっと動かず、砲撃に火縄銃で応酬していた。とは言っても、息苦しくなるほどの煙が通路に立ち込めていたため、発砲は盲滅法だった。
 煙が甲板の隙間から漏れて来た時のことだ。甲板にいた海賊たちは足元で起こっている戦闘に参加したくてじりじりしていた。突然、黒い海賊が手下たちの方を向いて言った。
「ぶどう弾を用意しろ」
「用意できています」補給係長が答えた。
「昇降口を上げろ。銃弾をケチるな」
 4人の水夫が鉄柵を起こすと、昇降口が開いた。すぐに白い煙がもうもうと出て、メインマストの帆桁へと上がって行った。煙の下では閃光が走るのが見え、耳をつんざくような爆発音がしていた。船の両端を打ち砕き、壊して響いてくる大砲の音だった

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