カリブの女王 第13章 快速帆船の降伏②
煙が薄くなるのを待たずに水夫たちは通路に、特に大砲が火を放っている方に、ぶどう弾を投げ入れた。
最初、スペイン人たちは通路に立ち込める煙のせいで昇降口が開いたことに気がついていなかった。しかし、ぶどう弾が炸裂するのを耳にし、仲間の多くが砲弾の破片を浴びて床に倒れるのを目にして、大慌てで武器を放り出し、手当たり次第に大砲を撃って走った。
その急襲のせいでスペイン人部隊は大パニックに陥っていた。殺戮を逃れた数人の将校の叫びや、親方や准尉のののしりにもかかわらず、最も勇猛果敢な者さえ、持ち場を離れてしまっていた。船室と共同部屋の二分隊は射撃を続けていて、恐怖と混乱はますます広がった。甲板の一隊は、壊滅的な火事になる危険を冒しながら、四方八方にぶどう弾を放っていた。
兵士たちの叫び声、負傷者のうめき声、ぶどう弾の爆発音、そして射撃音の中、黒い海賊の声が力強く響いた。
「降伏しろ、さもないと皆殺しだ!」
「おしまいだ!……おしまい!」50もの声が起こった。
爆弾の雨が止んだ。船楼と共同部屋に隠れていた2分隊の一斉射撃も止んだ。
黒い海賊が昇降口に身をかがめてくり返した。
「降伏しろ、さもないと皆殺しだ!」
通路に漂っていた煙の中から声がした。
「武器を置こう」
「停戦交渉人を送ってくれ」
しばらくして男が一人甲板に上がってきた。快速帆船の中でも身分の高い者のうち、たった一人生き残った将校だった。その気の毒な男は真っ青な顔で、動揺していた。服はボロボロで、ぶどう弾の破片で片腕を負傷していた。
男は自分の剣を黒い海賊に渡し、意気消沈した声で言った。
「負けました」
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