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道端に落ちたものから広がる世界①〜はじまり〜

歩くのが好きだ。歩いている時は、大抵足元を見ている。一歩一歩順番に出てくる自分の足を眺めながら、この体が少しずつ道路を進んでいくさまを感じるのは、おもしろい。足ってすごい。自然、そう思う。

足元を見ていると、それ以外にも様々な副産物がある。例えば、季節ごとに草花が変化していくことに気づく。草や花は定期的に入れ替わり、それを見るたびに今が一年のどのあたりなのかを知ることができるし、何より草花の姿は何とも神秘的である。なぜ神様はこんな形にこの草花を作ったのだろう?と、つい考えてしまう。花びらや葉っぱの形は美しい幾何学で、その影までもが完璧だ。影が風に揺れるのを見ているだけで、永遠に時間を過ごせる気がする。

足元を見る醍醐味は、それだけでない。たまに道路には、突拍子もないものが落ちていることがある。足元を見ながら歩いていると、そういう出会いにしっかりと気づくことができるのだ。

道端に落ちている、突拍子もないもの。私はそれとの出会いが、たまらなく好きだ。別に拾うわけではない。もちろん、誰かが困っていそうな落とし物は届けるが、それ以外のものはただ眺め、これがここにある理由について、想像を巡らせる。

誰が落としたのか、どのように落としたのか、なぜ落としたのか。考えていると、足元にあるその落とし物がとても愛おしいものに思えてくる。私はこの工程が、好きなのだ。

道端には、本当にいろいろなものが落ちている。その一期一会と、そこから巡る物語を、記していこうと思う。

歩きスマホなんかしていたら、一期一会は起こらない。だから私は今日も、足元を見ながら歩くのだ。


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