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作者が楽しめば、小説はもっと面白くなる <小説の書き方>

本当の主人公は作者

楽しんで書いていますか?
創作は楽しい、と私も思います。
書くこと、原稿用紙を埋める、キーボードを叩く、それら書くという行為そのものが楽しい。時にはライターズハイのような昂揚した気持ちになることもあります。

でも本当の創作の楽しみは、ほかにあります。

自分が面白いと思うことを小説の中に実現できたとき
これは面白いと確信して書いているとき

それが一番楽しいときではないでしょぅか?

どういうときが楽しいか、恥ずかしいのですが、具体的に書きます。連載中の『紫に還る』でネタバレにならないところを例にしてみます。
(これが小説として成功したかどうかは別です。あくまで私が楽しく書いたということです)

リーというヒロインがいます。当初のプロットでは
・初めから王女として登場
でも本編を書いた後で
・従者(少年)として登場
というように変えました。

従者のしかも男の振りをしているが、本当は大国の王女だった
という展開です。

どちらでもストーリーには影響がないのですが、正体を隠す案を思いついたときに「これは面白い」と思いました。

越後の縮緬問屋のご隠居と思わせて、最後に
「頭が高い。水戸のご老公なるぞ」「ハハア~」
こういうのが好きなんです。ベタですね。

主人公は、親友になれるかもと思っていた従者の少年が、女性でしかも王女様と知って、驚き戸惑います。

実にささやかな工夫、演出ですが、それによって、主人公とヒロインの関係性や気持ちの綾も書き込むことができたように思います。ストーリーが豊かになった感じです。

作者は万能なのに、その能力を使い切っていない。
自由に書くことを許されているのに、その権利を行使していない。

これって、すごくもったいないです。

だからプロットでも本編でも、どこをさわればもっと面白くできるのか、もっと自分の好きな展開になるのか、と考えます。

それを思いついて、実際に小説に上手くはまったり、シーンが鮮やかに反転したりすると、言葉にできないほど、嬉しいし楽しくなるものです。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今日はこの作者さんは自由に伸び伸びと楽しんで書いているのだろうな、と(勝手に)思った作品を紹介します。

スタードライバー 水瀬 文祐さん

疾走感が素晴らしいです。意識的に余白の少ない、詰め詰め感のある文字組にしているのでしょうが、意外に重くなく、アップテンポに感じます。
それは短文を重ねていく文体、主人公の一人語りの親しみやすさによるのだと思います。

途中から主人公の語りやセリフが、作者がしゃべっているように聞こえてきました。この小説の世界をつくっている人のように思えたのです。作者が主人公に(逆かな?)憑依して書いているからではないかと思います。

特にスターウォーズを思わせる戦闘シーン、きっとわくわくしながら、書いてるんだろうと、こちらまでその楽しさが伝わってきました。
(コブラも混じってる?)
あれも書いてやろう、こうしたら面白そうだ、こうしてくれよう、という作者の声が聞こえてくるようです。

ぜひ読んでみてください。

本当の主人公は作者
今日はその思いを新たにしました。



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