自分の文体を探す<小説の書き方>
小説をどう書いて良いか分からない人は多いと思います。私も読書は大好きでしたが、いざ書き始めたときは、ずいぶんと戸惑いました。たとえば……
ルール的なこと
・一つの文章の長さは
・読点(、)はどこで打つのか
・……と――の使い分けは
・「~、と言った」か「~と、言った」か
・何行書いたら改行するのか
・節とか章は何ページ書いたら変えるのか
技術的なこと
・主語は「私」と書くのか、「酒本」と書くのか(人称)
・地の文に心の声を書く時はどう書くのか
「~~」か『~~』か――~~か、何も付けないか
・漢字で書くのか平仮名か?
「言う」「~の為に」「その時」「何とか」「馬鹿」は平仮名にする?
・プロローグとエピローグは両方いるのか?
・回想シーンはどう書くか
初めから自分の文体がある人はいない。でも好きな小説、作家はいるはず
自分が読んで心地よい、楽しいと思った作品、作家から学ぶのが手っ取り早いです。
①まずは図書館で、好きな作家の本をたくさん借りてきて、「ああ、こんな風に書いてみたいなあ」と思う本を一冊決める。
私はその時は、宮部みゆき、池井戸潤、大沢在昌、恩田陸、浅田次郎、奥田英朗、伊坂幸太郎さんなど、大好きな作家さんの本を一冊ずつ借りました。
『下町ロケット』が一番、しっくりきた
池井戸潤さんですね。私は短文でテンポ良く進み、セリフが多め、地の文に心理描写をする文章が好きなので、『下町ロケット』がしっくりきました。
この本をテキストにして、池井戸さんの書き方にならって、小説を書くことにしました。私淑、というやつですね。
②その一冊を今度は購入して、読むのではなく、分析する
その本がテキストになります。傍線を引いたり、メモを書き込んだりしながら(見出し画像参照)、冒頭に書いたような知りたいことの答を探します。後はそれを真似するだけです。
もともと自分が好きな小説なのですから、抵抗はないはずです。むしろたくさんの気づきがあるでしょう。
このテキストは辞書代わりにもなります。何度も確かめて、書き方のコツを摑みましょう。私の『下町ロケット』はボロボロです。
好きな小説を丸写しする、ということを進める本もありますが、そこまでしなくても、傾向さえつかめば、後は自分の小説を書くときに、それを真似して書けば良いと思います。
そして自分の文体(マイルール)を定める
冒頭にいくつか書いた疑問ですが、実はこれといったルールはないのです。創作は自由なものです。ただ何かしらの拠り所がないと、書こうとする都度、迷って悩んで時間が掛かります。
そしてルールはないけれど一冊の本の中に、違う書き方が混じっていると、読みにくくなります。
なのでマイルールをつくって、それを基準に書いていけば、いつしか自分の小説、文体のスタイルが定まるのだと思います。その時は、迷うことなく創作の世界に羽ばたいているでしょう。
参考 私のマイルール
私のルールについて書いておきます。(これがすべて正解というわけではありません。酒本の小説はこう書いている、というものです)
ルール的なこと
・一つの文章の長さは
私は一行40字で書くのですが、一つの文章が一行を超えることはほとんどありません。平均すると30字程度でしょうか。短文でテンポ良く書くタイプです。
・読点(、)はどこで打つのか
一息で読めない長さになったら打ちますが、短くても読者が読みにくいと感じたらその場所で打ちます。特に平仮名の単語が続くときです。
ex.「あくまのぬいぐるみ」は「悪魔のぬいぐるみ」か「あ、熊のぬいぐるみ」か分からないので打つ。
・……と――の使い分けは
……はその言葉の後に、少し間が空くとき
――はその言葉にかぶせるように、次の言葉がくるとき
ex.「でもそれは――」「いいわけはやめて」
・「~、と言った」か「~と、言った」か
「~、と言った」
・何行書いたら改行するのか
3~4行になったら改行すると決めています。
・節とか章は何ページ書いたら変えるのか
これは決めていなくて、場面や日付が変わると節を変えます。章は長編なら「起承転結」に合わせて1~4章に区切ることが多いです。
技術的なこと
・主語は「私」と書くのか、「酒本」と書くのか(人称)
これは主人公に深く入り込むかどうか、好みにもよると思います。私も両方書いてみました。人称については別の記事に紹介しましたので参考にしてください。
・地の文に心の声を書く時はどう書くのか
括弧は何もつけません。ただ心の声と分かるように、独立して一行にします。その後に地の文が続くときは改行します。
・漢字で書くのか平仮名か?
「言う」「~の為に」「その時」「何とか」「馬鹿」は平仮名にする?
俗に言う「開く(平仮名にする)」か「閉じるか」問題です。これは大いに悩むと思います。面倒です。
私もかなり困って、最初は写真の『記者ハンドブック』(共同通信社)を使っていました。
その後、新聞記事と同じ使い方では、小説が淋しくなる(情緒がない)場合があると感じたので、自分で簡単な一覧表を作りました。100ワードくらいあるでしょうか。
ex.開く 位 くらい 為 ため 等 など 迄 まで
閉じる いう 言う からだ 体 身体
大事なことは一つの作品の中で、同じ単語なのに、平仮名と漢字が入り交じること、あるいは別の漢字を使うことです。表記揺れと言います。
下の写真で言えば、「命をかける」時は、「命を懸ける」か「命をかける」かのどちらかに揃えたいです。「命を掛ける」は間違いです。注意しましょう。
・プロローグとエピローグは両方いるのか?
これは自由です。ない場合もあれば、どちらか片方だけの場合もあります。ミステリなどは、冒頭に事件を起こすために、それをプロローグにすることがよくあります。
・回想シーンはどう書くか
これはとても大事なことなので長くなりそうです。別の記事にします。
まとめ
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。私の場合、こうしているということなので、別のやり方もあると思いますが、参考になりましたら嬉しいです。
質問などありましたらコメントにどうぞ。
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