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おすすめの作品集 清水朝子 「Finding A Pearly Light」

8月のうだるような暑さ、その空気を押しつぶすように襲ってきたゲリラ豪雨。そんな日にゆっくりとこの作品を鑑賞させてもらった。

作者は僕の日芸の同期、フォトグラファー清水朝子。もうかれこれ30年以上の付き合いになる。

http://shimizuasako.com

「元気で明るい」という印象が強い彼女から発せられたのはなんとも静かな、心が鎮まっていくような作品集だった。


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この作品集は2006年から2019年の間に世界の様々な場所で撮影された美しい写真作品と叙情的な散文が収められている。

一貫して流れる空気感、常時とは異なる時間の流れ、人と彼女(地球)との対話。

個展などで作品は目にしていたが、この一冊にまとまった彼女の意識の塊を鑑賞し目からウロコが落ちた。

これが朝子が追い求めてきた世界。いや世界との対話か、写真家が追い求め表現する世界はここまで人の感性に訴えかけるものになるのかと。

だがそれは決して押し付けがましいものでもガチガチにコンセプチュアルなものでもない、写真と文というリアルな表現を可能にしたメソッドを用いつつ、見る者にその受け入れ方の多様性を許容する美しい情景と言葉の連なり。優しく、しかしその想いは強く感じられる作品だった。

これは一貫してやり続けることによって生まれた清水朝子の世界感がもつ重力なのだろう。

撮影場所はボリビアのウユニ塩湖や雪のフィンランド、日本の工場夜景と多岐にわたるのだが、こんなに全く脈絡の無いように思えるロケーションが「Finding A Pearly Light」というタイトルでしっかりとまとまっている。

写真一枚一枚にはどこまでも澄んでいるのに底が見えない泉のような、そんな場所へ引き込まれる魅力を感じ、
散文は自分が知らなかった感覚を読み取れるような気持ちになる。

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この写真集を読み終えて、僕の心は少し透明度を取り戻したような気がした。


朝子 出版おめでとう!

清水朝子作品集 Finding A Pearly Light https://www.amazon.co.jp/dp/4909368019/ref=cm_sw_r_cp_api_i_9l6mFbHGENVRC

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