見出し画像

スポーツチームの協賛セールスについて考える

看板は売れない

本日は、スポーツチームの協賛について考えてみたいと思います。
私は、バブル世代(終盤)の広告会社を経験しているので、1990年代前半は、スポーツチームあるいはスポーツイベントの広告看板なんていうものが、『テレビにも映りますよ。』なんて一言で割と簡単に売れていた時代もありました。
でも、それは今は昔。。。現代においては、そのようなセールストークはもはや通用しません。提案先の広告主から、ある程度の認知効果は認めてもらえたとしても、メディア露出からの認知効果“だけ”では、他の広告媒体と比較して割高と評価されてしまい、ご契約いただくことはできません。逆な言い方をすれば、格安なら興味を持ってもらえる可能性もありますが、それでは、スポーツチームの運営に支障が出てしまいます。限りある広告スペースを安売りはできません。
とはいえ、スポーツチームの主な広告枠は、

  • ユニフォームスポンサー

  • 会場スポンサー(看板等)

  • イベントスポンサー(冠スポンサーからPRブース出展まで)

    に限定されます。つまり、最終的には広告看板等を売らなくてはいけないのです。売れないものを、どうやって売るのか?今回は、その点を考えてみたいと思います。

スポーツチームがパートナー企業に提供できる5つの価値

売れない看板を売るためには、まず、協賛する企業に対して、スポーツチームから何が提供できるのか?を考えて見る必要があります。提供できる価値を元に、協賛企業の会社の成長や事業の成長を支援していく必要があります。つまり、スポーツチームは、協賛企業の事業パートナーにならないとい
けないということです。一昔前の“協賛”という言葉には、何だか、企業が文化的、社会的な活動に奉仕する(あるいは寄付する)といったような意味合いもあったように感じていますが、今は、そのような目的は存在しないと思います。むしろ、スポーツチームを事業パートナーとして、投資対効果(ROI)があっているのか?を検証する相手になっていると思います。

その投資対効果の元となる、スポーツチームからパートナー企業に提供できる価値を整理してみましょう。大きく分けて5つに分類されると考えます。

1.ブランド効果
2. 販促(営業)効果
3. 社内活性化(一体感)効果
4.CSR効果(SDGs)効果
5.採用効果

以上の5つの効果をもたらす価値があります。では、簡単に1つずつ見ていきましょう。

ブランド効果

やや認知効果にも近い印象があるかもしれませんが、単なる認知効果ではありません。ブランド効果とは、スポーツチームがもつ“チームカラー(色ではなくて、イメージ)”や“チームストーリー”を、企業イメージや商品イメージに付加させること期待する効果です。
スポーツチームのチームカラー(イメージ)って何だろう?とお考えの方はいると思いますが、例えて言えば、かつてのレアル・マドリード(サッカー)が銀河系軍団と呼ばれていたり、あるいは、故・野村監督時代のヤクルトスワローズが野村再生軍団と呼ばれていたりと、チームに特徴があることを総じて、チームカラー(イメージ)といえます。逆に、強くても、弱くても競合チームとの特色差がないと、あまりチームカラー(イメージ)があるとは言えないと思います。ちなみに長い歴史から作り上げられた、常勝巨人軍なんていうのも、チームカラーだと言えます。

このようなスポーツチームのもつ独特のイメージを企業ブランドに付加させることで事業成長を加速させることを目的とした活動といえます。なので、スポーツチームは、独自のカラーをつくりあげなくてはなりません。(このテーマはまた後日書きたいと思います。)

販促(営業)効果

これは、文字とおりの効果です。一般的にBto C企業の場合には、そのチームのファンに向けた施策を言い、Bto B企業の場合には、スポーツチームのパートナー様同士でのビジネスマッチングなどを期待するケースが多いです。
最近では、試合会場だけではなく、SNSを活用した展開にもパートナー企業からの期待も高く、SNS運用能力もスポーツチームが保持するべきスキルにもなってきています。つまり、DX時代のスポーツチームの価値提供には、SNS活用スキルも含まれていると言っても過言ではありません。

社内活性化(一体化)効果

日本では歴史的に社会人スポーツが盛んだった理由は、まさにこの効果を期待してのことだっと思います。社員一同で同じ目的(応援するチームの勝利)に向かって行動することは、経営的には、社内の一体感を高め、結果として生産性向上に繋がると考えます。
あのカルロス・ゴーン元日産社長も社長就任当初、コストカッターで有名だったため日産硬式野球部の存続が不安視されたそうですが、ゴーン元社長は都市対抗野球での社員の応援に感銘を受け、硬式野球部を存続させることを決心したとされてます。(後に、ゴーン元社長は「都市対抗野球こそが日本の企業文化の象徴だ」とも断言したと言われています。)

かつては一部の大手企業のみが、自社チームを保有して、社内の一体感醸成に活用していましたが、現在では、様々なプロスポーツチームがパートナー企業の社員(関係者)向けに独自の応援プログラムをつくるなどして、パートナー企業の社内活性化(一体感)に寄与するようになってきています。

CSR効果(SDGs)効果

これまでは、地域貢献という言葉で表現されていた内容が、現在では、もう少し広義な意味を含むようになっています。
もちろん従来のように、『地域の子供達にスポーツができる環境つくり』のような活動もありますが、それ以上に、スポーツチームが行う多様なSDGs活動に賛同するようなケースも出てきています。

東京に拠点を置くプロ3×3チームの東京DIMEは、チームカラーのグリーンに合わせて、SDGsゴールのうちの3つ、「3 すべての人に健康と福祉を」、「13 気候変動に具体的な対策を」、「15 陸の豊かさも守ろう」をチームのテーマ「DIME GREEN SDGs」に選んでいます。
具体的な活動としては、地元渋谷を中心とした美しいまちづくりや環境負荷の少ない製品の開発、SDGs活動支援金を各団体に寄付して報告、などの取り組みを進めています。

このようなプロスポーツチームが行うSDGs活動に共感し、これを支援することでパートナー企業としてもSDGs活動への取り組みとするなどのケースも出てきています。

採用効果

スポーツチームからの支援で最近注目を集めているのが採用支援です。具体的な事例でみてもらうと理解しやすいと思います。
プロ野球の千葉ロッテマリーンズが、パートナー企業である株式会社ライブス社の事例です。同社は、新卒採用において、新卒採用サイト内や自社のPRビデオ内で千葉ロッテマリーンズを活用して、採用を進めています。

採用候補者の中から、千葉ロッテマリーンズのファンや野球ファンの関心を集めることが期待出来る他、全社員で冠協賛試合のイベント運営や企画を行った旨も記載し、会社の雰囲気をアピールしています。
同社のように、まずは自社がプロスポーツチームにスポンサードしていることを多くの採用候補者の目に止まる場所に記載するのが有効と考え、特に、自社の採用サイトや求人サイトへの記載は、最も効果が期待できるいアクティベーションのひとつとして考えられます。

まとめ

今回は、スポーツチームから提供できる価値について記載してみました。冒頭に記載したとおり、広告価値(露出価値)のみでパートナー企業からお金がもらえることはなく、価値の交換があって始めて成立する契約関係であることは間違いありません。

今回は、5つの価値について記載いたしましたが、この先には、
・どの企業に(ターゲット)
・何を(どの価値を?どの企画を?)
・どうやって
提案するのか?というスポーツチーム側の営業戦略も重要になってくるのは言うまでもありません。

このあたりのスポーツチームの営業戦略については、また後日、書いてみたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?