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デザインの語源を知ると、デザインの世界が広がった

ビジネス系の書籍を読んでいると、一般的に使われている単語の「そもそもの言葉の意味」が解説されていることがよくあります。

なぜでしょうか。
一般的に使用されている単語は、使う人の業界や、その人のバックグラウンドによって意味が一人歩きし、解釈がバラバラになってしまうことがあります。
著者の狙いとしては、まず語源を説明することによって、読み手の解釈を統一することを図るということなのでしょう。
語源の説明を目にすることが多いので、今回はいくつかの単語の意味を紹介します。

アジケがIT業界、デザイン会社であることと、私がマネジメントに携わっていることから、下記のような用語のラインナップになっています。

デザイン(Design)

デザインという言葉の語源はラテン語の「Designare」にあるといわれています。Designareは「計画を記号に表す」つまり図面に書き表すという意味であったといわれています。

公益財団法人日本デザイン振興会 デザインとは?

ここから、「デザイン」という言葉が、見た目や装飾を表す言葉ではなく「設計」の意味が込められていることが理解できます。つまり、「デザイナー」とは「設計者」ということになり、設計する対象はさまざまです。
ここ数年で、「デザイン」に対する理解が広がってきていますが、デザインする対象は「ロゴ」「UI」「構造」「サービス」「事業」「組織」など、広い範囲で解釈が可能ですし、デザイナーが活躍する領域がもっと広まっていくのでは無いかと思います。

エンジニアリング(Engineering)

エンジニアリングは、日本語で「工学」と訳されています。「工学」は「何か役に立つものを」「実現していく」学問です。エンジニアリングとは、つまるところ「実現」していくための科学分野だといえるでしょう。
(略)
曖昧な要求からスタートし、それが具体的で明確な何かに変わっていく過程で、その過程の全てがエンジニアリングという行為です。つまり、「曖昧さ」を減らし、「具体性・明確さ」を増やす行為が「エンジニアリングとは何か」という答えでもあるのです。

(エンジニアリング組織論の招待 第一章)

エンジニアリングは、プログラムを書くことをイメージしている人が多いと思いますが、意味を理解するとそれは一部分でしかないことがわかります。
プログラミングは、エンジニアに求められるの最も重要な能力ですが、「曖昧な要求を具体的にする」ための一つの工程、手段と考えることもできます。これからのエンジニアは、プログラミング力一本で勝負するのではなく、「実現するまでの工程でどこに強みを持つか」を探っていくのが良いかもしれません。

システム(System)

システムという単語は、syn「ともに」st「たつ」という意味の組み合わせです。

「複数の構成要素が相互作用しながら前と対としてまとまった機能を果たすもの」と定義されます。
(略)
たとえば、箸は2本の棒が相互作用しながら食べ物をつかむという機能を果たすので、システムとして考えることができる。しかし、目の前に偶然2本の棒が落ちていても、それらをシステムとは見なせない。

(実践システム・シンキング)

システムというと、IT業界の方はエンジニアリングと近しい意味と解釈している人が多いかもしれませんが、それは「コンピュータシステム」の略語です。

組織、制度、仕組み、関係など、身の回りにシステムと呼べるものはたくさんあります。
「システムを設計する」という言葉は、「ソフトウェアを開発する」と似た意味で捉えられることが多いと思いますが、システムの意味を知ると、もっと広い意味で使われる用語だということがわかります。

また、ロジカルシンキングなどと同じく、課題や施策を整理する手段として頻出する「システムシンキング」は、複数の要素で構成された組織や仕組みなどの「関係性」に注目する、全体論的思考です。ある事象を「部分」として捉えるのではなく、「全体」の関係性に注目して、問題の構造を解き明かす考え方です。

マネジメント(Management)

マネジメントと聞くと「(部下を)管理する」と理解している人が多いかもしれませんが、元々「management」という言葉に対応する日本語はなかったようです。
「Manage」とはそもそも「何とかする」ということです。「deal with problems - 問題を対処する」「do something difficult - 難しいことに取り組む」というような意味合いで使われていました。

つまり、組織におけるマネージャーとは「何とかする人」であり、決して「部下を管理する人」ではありません。
ついつい忘れがちになってしまいそうですが、本来の意味を理解したところで、もう一度ドラッガー入門を読み直してみようと思います。

メンター(Mentor)

「メンター」の由来は、古代ギリシャ神話にまで遡ります。ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」に登場する、オデュセウス王の息子を立派な王に育てた賢者として伝承された「メントール」にちなんで、良き指導者、良き支援者を「メンター」と呼ぶようになったのです。

(エンジニアリング組織論の招待 第一章)

なるほど、メンターは「良き指導者」を指しているのですね。ともすると「素晴らしい人間力」がないと「良き指導者」になれない気がしてしまいますが、メンタリングは「技術」であり体得できるものと紹介されています。

サーベイ(Survey)

「サーベイ」という言葉の語源は、もともと「見晴らすこと」「上から全体を見渡すこと」です。一般にサーベイとは、「質問紙調査(オンライン調査)」だと考えられる向きもありますが、「見える化」の手段は必ずしもそれに限られません。

「データと対話」で職場を変える技術 サーベイ・フィードバック入門

サーベイという言葉は、あまり聞きなれない人も多いかもしれません。一般的には、従業員が自社に対してどのような課題を持っているかを明らかにするときに使われるようです。

「上から全体を見渡す」とは、つまり個別具体の課題に注視するのではなく、全体感を見るということです。前出した「システム(シンキング)」も、「全体の関係性に注目する」ことが強調されており、近い意味をもつ用語なのですね。


今回は、備忘録的な記事になってしまいましたが、本来の意味を少しだけ意識しながら使ってみることをお勧めします。

これからも書籍で出てきた「語源」解説はメモしていこうと思います。
では。

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