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謳う魚、騒がしい蟹達

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稲垣足穂『一千一秒物語』のオマージュ作品です。
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2014年10月の記事一覧

ある深夜の話

 誰かが言った。
『今夜12時、この場所で全ての謎が明らかになる』
 それを聞いた人々は、謎の真相を知るために、その場に集まって時を待った。そして時計が11:59:59になったところで、何かがパチンと落ちる音と同時に、彼らの世界はすべて暗転して、放送時間の終了を伝える寂しい音楽が流れ始めました。
 そして、彼らのいたモノクロテレビにノイズが走ったと思うと、パッと真っ暗に飲み込まれてしまった。
 私

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一睡もできなかった話

 友人が何者かにとらわれたという電話があった。
 私は急いで電話で伝えられたゴシックの廃墟へと駆けつけた。私が窓から様子をうかがいつつ一部屋一部屋を確認していくと、ある一室で椅子に縛り付けられた友人が数人の悪漢に取り囲まれているのが見えた。
 ガシャン!と窓を叩き割ってなかに入り、折り畳み式の自動機関銃を取り出してダダダッと撃った。すると、ヒラヒラと紙切れが舞ったと思うと、そこには何枚かのトランプ

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ほうき星を飲んだ話

『君に、見てもらいたいものがあるんだ』
酒場でビールを注文したとき、友人はそういうとハンカチにくるんだものを見せてきた。それは、ほうき星だった。
『そんなありふれたものをどうするんだい?』
 私がそう聞き返すと友人はニヤリと笑って、ぱっと栓を抜いたばかりのビール瓶の中に放り込んでしまった。しゅっという音がして、ビール瓶の中には不思議な光を放つ液体が残った。
『これが美味しいんですよ、いかがですか

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訪ねてきた人

 私がホテルの一室にいると、不思議な客が訪ねてきた。
 彼は扉をノックしたあと、ドアの隙間に一枚の丸いボール紙を差し込んだ。
 そのボール紙は不思議なかがやきを放っており、どうも見覚えがあった。慌てて扉を開けてみたが、もうそこには誰もいなかった。
 私は知人と相談し、そして、その紙切れについて大学校の一室にて、検査が行われたが、それは間違いなくお月さまだった。
 果たして、お月さまを空から持ち出し

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お月様がいない話

『お月さまは、最初からいないのさ』
 そんなことを書かれた手紙がポリスのもとに届けられた。
 その手紙はただのイタズラかと無視されかけたが、ちまたで夜空のお月さまを見上げながら、その言葉をいって乾杯する習慣が流行っているらしいと言ったものがいたので、調べることとなった。
  ポリスが酒場にいくと、さっそくお客に混じったお月さまが例の言葉を言って乾杯しているのを見かけたので、店内で捕り物が行われるこ

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ほうき星と競争をした話

 ある晩のこと、交差点で車を止めると、車の扉を開けて飛び込んで来るものがあった。彼はほうき星に財布をとられて追いかけているのだ、と言った。逃げたほうき星を追うように頼まれた私は、アクセルを踏み込み、彼の言うとおりに進路を選んではしると、やがて光るものが見え始め、とうとうほうき星に追い付いた。
 エンジンがひときわ大きな音を立てた。ほうき星が電信柱をかすめて火花を散らした。
 曲がり角を曲がるところ

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