ほうき星を飲んだ話

『君に、見てもらいたいものがあるんだ』
酒場でビールを注文したとき、友人はそういうとハンカチにくるんだものを見せてきた。それは、ほうき星だった。
『そんなありふれたものをどうするんだい?』
 私がそう聞き返すと友人はニヤリと笑って、ぱっと栓を抜いたばかりのビール瓶の中に放り込んでしまった。しゅっという音がして、ビール瓶の中には不思議な光を放つ液体が残った。
『これが美味しいんですよ、いかがですか?』
 そう彼が勧めるので、勇気を出して私がそのビール瓶に口をつけると、舌が焼けつくような味がした。たまらずに口の中のものをプッと吐き出すと、私の口からほうき星が飛び出して、酒場の窓から逃げていった。
 夜空を見ると、ビールに酔ったほうき星が、フラフラと揺れながらお空を飛び去ってゆくのが見えた。

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