お月様がいない話

『お月さまは、最初からいないのさ』
 そんなことを書かれた手紙がポリスのもとに届けられた。
 その手紙はただのイタズラかと無視されかけたが、ちまたで夜空のお月さまを見上げながら、その言葉をいって乾杯する習慣が流行っているらしいと言ったものがいたので、調べることとなった。
  ポリスが酒場にいくと、さっそくお客に混じったお月さまが例の言葉を言って乾杯しているのを見かけたので、店内で捕り物が行われることになった。結局、お月さまは、お空へ登るのが面倒になり、折を見て空に上るのをやめるつもりだったと白状した。
 そんなわけで、今夜もお月さまはいつもの通りに空に上っているというわけです。

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