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TBSアナウンサー宇内梨沙氏の何が問題なのか

前にも書いたように、少なくとも日本においてはテレビはいまだ最大のインフルエンサーなのでキー局の出役の発言の影響力は大きい。
 熊崎風斗氏についてとりあげた前回は、その現場では性的な強要が横行しているグラビア界というものを自覚的に手放しで推奨しつづけているキー局のアナウンサーの危うさについて書きました。

TBSアナウンサー熊崎風斗氏の何が問題なのか?

 そして「依存症」もまた性加害同様に現代日本が抱える大問題の1つです。この「依存症」についてこのところのTBSは局をあげて焦点外しをしようとしているのではないかと疑われるような状況です。

今から遡ること5年前の2020年3月に香川県議会で「ネット・ゲーム依存症対策条例」なるものが可決したのを覚えているでしょうか?
 これは子供のゲームプレイ時間を平日は1日60分までとする、ただし罰則規定はなし、というものでした。
 かわった法律だとか、論議を呼んでいるという視点の報道はありましたが、キー局でまっこうから悪法だ人権侵害だと噛みついたのは私の知る限りライムスター宇多丸氏とTBSアナウンサーの宇内梨沙さんのラジオ番組(アフター6ジャンクション)だけです。
 当時の私の印象は「おいおい宇多丸さんさすがに人権侵害は言いすぎだろ」という程度だったのですが、今、改めて当時のラジオ放送と瀬戸内海放送の制作した番組を聞き返し、見返してみるとカルト宗教のような気持悪さすら覚えます。

 地元放送局が反論として作ったその番組を観ると
「?????」
てな感じです。
 反論になっていないどころか、墓穴ではないでしょうか。反対派の主張で分がありそうなのはパプリックコメントの件だけです。
 根本的な問題はゲーム依存の問題だと思うのですが「報・動・力「検証 ゲーム条例」の開始4分ほどで登場する、ゲーム依存などの「こども外来」を設けている三光病院の海野順院長の
家庭の問題だから学校は介入しませんとか
医療じゃないから病院は知りませんとか
押しつけ合いみたいになってはいけない社会問題なので社会全体で依存症対策に取り組む条例案の理念を評価します

という発言がすべてではないでしょうか。

「検証ゲーム条例2」条例が“できたら終わり”では、ない――(2022528放送)

報・動・力「検証 ゲーム条例」(2020627放送)

あとから登場するゲームクリエイターとか井手草平氏などは、実際には依存症の患者と相対したことのない「ザ机上」な人ばかりです。宇内アナと宇多丸氏も恐らくは。
 反対派のなかでいちばんアカデミックな人物が井手草平氏だとすると相当ヤバいです(この方はアフター6ジャンクションにも出演されていました)。
 WHOの2019国際統計分類「ICD-1」のゲーム依存に関する報告書の日本の報道における訳語が間違っていると難癖をつけ「ゲーム障害は病気なのか」などという勉強会までわざわざ開いていました。
disorder 障害
illness 病気
desease 疾病
なのでゲーム依存は病気ではなく「ゲーム障害」とすべきだと得意気に言っていますが、いや、だからゲーム障害でも全然かまわないんだって。
 この方は科学者を名乗っているくせに、英語の知識も精神疾患に関する知識も、あるいは一般紙の新聞記事に関する知識も少な目のようです。
 deseaseをdisorderにすれば弱毒化あるいは無毒化できると考えたのでしょうか。摂食障害はfeeding disorderですからむしろ自死とも背中合わせの憂慮すべき精神疾患のひとつであるという印象がよりハッキリします。
 ゲーム障害は放置していいはずのない問題ですから「代案なき反論」はありえないのですが、海野先生の「証言」があったのちになお個別の家庭の「教育力」の問題などと主張(しかも仮説といっている)するのはそもそも人としてどうなのかと。

氏は法案側のリーダーである議員の
ゲーム依存は覚醒剤と同じ

学習障害の原因になる

に反応して「トンデモ」と断じていましたが、物理的に脳が壊れる危険性を孕んでいるという事実考えれば覚醒剤もあながち「トンデモ」と切り捨てることはできません。
 学習障害は用語としてことばのアヤ的に間違いたのでしょう。でも、これとて否定するにしてもただ切り捨てるのではなく、丁寧に扱わないと重要な事実を見失ってしまいます。
 どういうことかというと今日では発達障害の子供(大人も)は依存症になりやすいことがわかっています。
 実は私自身がまさにそうだったのです。ゲーム依存でギャンブル依存でした。私は簡易チェックのようなものをすると依存症体質ではないと出るのですが、これは作家の川端裕人さんの言うところの、障害というのは連続的なものであるということなのでしょう。
 つまり「隠れアスペルガー」という言葉がありますが、「隠れ隠れアスペルガー」や「隠れ隠れ隠れアスペルガー」もあるということで、これが実は危険なのだと思います。つまり依存症というのはいわば一度その場所に座るとなかなか立てなくなるみたいなことです。座るというたった一度のきっかけさえあればおなじ結果になってしまうという意味では「隠れ」と「隠れ隠れ隠れ」の間に大差はないのです。
 それは薬物依存やアルコール依存の場合を想像すればわかりやすいでしょう。
 それが子供となるとさらに厄介です。実は発達障害をかかえながら発覚していない子供たちは大勢いると思いますし、成長の途上で依存症に陥ってしまったら、場合によっては取り返しのつかないことになるかもしれません。
 先述の「反対派」の方々は署名を集めていたようですが、この世には多数決がなじまない議題というのもあるということを彼らはわかっているでしょうか。

 私はギャンブル依存サバイバーでゲーム依存サバイバーのつもりでいますが、依存体質にかわりはないので、うっかりしたことで徹夜してしまうことがいまだによくあります。ただもくもくと「反復作業」に向き合うだけならいいのですが「荒れる」というイベントも起こるので注意が必要です。罰則のないあの法案は苦肉の問題提起だったのだと思います。

 宇内アナはゲーム実況もやっておられる完全ゲーム利権側の方なので、いまも同じ考えということでしょうか?

 さて月日はたって2023年の4月14日。荻上チキ氏のラジオ番組「セッション」のニュースコーナーで大阪IR構想についてギャンブル依存症問題を考える会代表の田中紀子さんが出演していました。構想にある「スロットマシン6400台」はあきらかにパチスロになれている日本人をターゲットにしているのがみえみえで心配であると。諸外国ではギャンブル産業から税金を吸い上げて依存症対策費にあてていて、カナダなどは90億円規模の予算で罹患率を0.9%におさえこんでいるのだと。日本はアルコール依存症などもふくめた予算が8億円しかない。さっき書き忘れましたがdisorderを状況に応じて「病気」と訳すのはまったく間違いではないのです。だからこその罹患率なのです。
 コロナ禍でネットカジノや公営ギャンブルのネット賭けが増え、なかでも競艇は急増したのだそうです。あのスター揃いのCMが威力を発揮したのでしょう。

 そして今年に入って、荻上チキ氏は番組に藤木TDCさんという人をわざわざゲストにむかえ彼の著作「はじめて行く公営ギャンブル: 地方競馬、競輪、競艇、オートレース入門」を特集します。
 どうやら1年前の田中紀子さんのお話は右から左に抜けていたようです。そういえば荻上チキさんもゲーマーです。そして彼のお仲間である日本財団は競艇の寺銭からの上納金でなりたっています。
 彼は番組内の通販コーナーになると席を外すという中立演出を気取っていますが、とんでもないところで中立性を欠く立ち位置にいるようです。
 日本財団の前身である日本船舶振興課はかつて「人類はみな兄弟」などとCMを頻繁に打っていて、CMにも自ら出ていた笹川良一氏はおおよそリベラルとは程遠い人物でした。

 競艇というのはギャンブルの中ではある意味「上級」な種目です。そして私がギャンブルから足を洗う前の仲間の間でよくいってたのは
「旅うちをするようになったらヤバいよね」
ということです。

 このギャンブル本推薦のたった2日後のことでした。
ロサンゼルス・ドジャース大谷翔平さんの通訳、水原一平氏の事件でまた話題にのぼったギャンブル依存の解説で田中紀子さんがまた出演なされました。

 サイコパスの説明で死体の転がっているよこで、ポリポリとポテチを食べながらテレビを見ることが平気なやつ…なんてのがありましたが、荻上氏にはそんなコワさを感じます。いへ、彼というより、宇多丸氏や宇内アナを含む世間全体に…でしょうか。

そうだ、世間に絶望したところでもうひとつ書いておきます。法案を出した議員の背景にはあやしい団体でもいるのではないかという陰謀論みたいなことを言っていましたが、「誰が得するか問題」でいえば利権があるのはゲーム反対よりゲーム推進です。「脳トレ」がいい例です。「脳トレゲーム」はいくらやっても「頭トレ」がうまくなるだけで、ボケ防止などには意味がない…というのは20年も前に欧米では検証結果が出ていました。常識のウソみたいなネタが大好きなはずの日本の健康情報バラエティがさっぱり紹介しなかったのは任天堂への忖度でしょう。
 昨年、やっと「ホンマでっかTV」で紹介されていました。
あともうひとつ。
 このお二人は、なぜか「江戸しぐさ」同様の20世紀生まれのフィクションである「武士道」というものをいにしえからの伝統だと信じていて、しかもそれをラジオで力説していました。鎌倉時代の武士が「俳句」を詠むというトンデモな海外製のゲームを精緻な日本描写と絶賛していたんですよ。
 日本史というのはクラスにひとりくらいはコアなマニアがいる人気ジャンルだということを考えるとカルチャーキュレーションを謳う番組の出演者としては恥ずかしくないですか?

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