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「頭の良い人が話す前に考えていること」の読書レビュー、感想

この本はAmazonのレビューが良く、自分自身コミュニケーションに関する本で良さそうなものがあれば読みたいと思い手に取りました。

この記事では本の中で頭に残った箇所や、自分が感じたことを書いていきます。

頭のいい人が話す前に考えていること

この第一部は第二部の思考の深め方のベースになる考え方が書かれている章です。
下記のようなことが頭に残りました。

  • 感情的になったら負け、反応しない、遅い思考を大事にする

  • 地頭、コミュニケーション能力とは社会的知性(SQ)のこと

  • 他者とのコミュニケーションの中で知性を身につける、学校的なインプット中心の学習ではなく

  • 頭の良さは他人が決める、人に頭が良いと思われると生きやすくなる

  • 優秀なのは前提として、ちゃんと考えてくれているかというところで信頼が生まれる

  • 人に議論で勝とうとするのではなく、その奥にある課題を見極める

  • 知識は披露するのではなく、誰かのために使って初めて知性となる、むやみやたらに知っていることをひけらかさない

  • 結果を出したうえで他者に親切にできる人が承認、信頼される

よく語られる地頭やコミュニケーション能力という言葉がありますが、さし示しているものはわかるもののどこか漠然としている気がしていました。
それを人間関係を生き抜く社交性・社会性、感情を共感的に読み取って行動する能力を示す社会的知性という言葉で説明しているのは納得感があり心に残りました。

また実力があるのは前提として、結局は人と人のコミュニケーションの中で仕事は進んでいくため、問題発見や課題解決の過程で思いやりを持って考えてくれていると思ってもらえるかが重要だというのもその通りだと思いました。
仕事に関わらずプライベートでもその通りだと思います。

またあることを知らない人に対して、自分を含め多くの人が「〇〇っていうのはこういうことなんだよ」と教えたくなると思います。
ただそれが本当にその人のためになって、受け入れられるかというのはまた別問題です。
特に承認欲求、優位に立ちたいなどの気持ちがあっていわゆるマウントのような形でコミュニケーションを取ってしまうと、例え正しくても素直に聞いてもらえる可能性は低くなるでしょう。
なるべくやらないようにはしていますが、知らない内にやってしまっていたり、知っていることを他人に教えてすごいと思ってもらいたいという承認欲求は自分にもあるなと思います。
なので「知識は他人のために使って知性となる」という言葉は覚えておきたいです。

思考の深め方

第二部では第一部の考え方をベースにより具体的な方法論に関して書かれています。
5つの事柄について書かれ、確かにこれが実践できれば少なくとも雑なコミュニケーションをする人間だと思われることはなくなりそうだと思いました。

客観視

  • 自分の意見と真逆の意見も述べる、統計データを調べる

  • 言葉の定義に敏感になる、解像度が上がり伝わり方が変わる

  • 成り立ちや経緯を知る

私たちは認知バイアスや確証バイアスによって、直感に頼ってしまったり、自分の信じたいものを信じてしまう傾向があります。
しかし仕事で自分の意見を主張して受け入れてもらうには統計や論文、本といった根拠に基づいている必要があるでしょう。

また自分が使っている言葉の定義が正しいものか疑い、解像度が高い言葉を使うことも重要だと思いました。
本の中ではコンサルタントは「問題解決をする仕事」ではなく「問題発見と課題解決をする仕事」だと正された話が載っていましたが、正直私はここまで言葉の定義に気を遣っていなかったため、仕事の中で意識していく必要があるだろうと感じました。

整理

  • 話す前の理解に時間をかける

  • 理解するとは違いを認識し整理すること

  • 結論とは相手が最も聞きたい話のこと、結論から話して相手の聞くスイッチを入れる

  • 事実と意見を分けて話す

  • 意見は感想に根拠がついたもの

相手に自分の話が伝わるかというのは話す前にどれだけ自分の頭の中で話すことが整理されているかに掛かっていると著者は言っています。
小学生1年生の子供に「コンサルタントは企業の問題発見と課題解決をする仕事である」というよりも「コンサルタントは会社のお医者さんみたいなものだよ」と言う方が理解してもらえますし、「PCのメモリとはストレージなどから読み出したデータの一時的保存領域」と言うよりも「PCのメモリっていうのは机みたいなものでPCが何か作業する時にはそこを使うんだよ」と言ってあげた方がわかってもらえることが多いでしょう。このように相手にわかりやすく説明するためには自分がその事柄について根本から理解している必要があります。

また結論から話すためには思考が整理されている必要があります。
エンジニアとして思ったのですが、結論から話すか、順を追って話すかというのはプログラミング言語の書き方にも似ていると思いました。
1から5までの数字を足すときに手続き的な書き方は下記のように順を追って計算します。

sum = 0
for i in range(1,6):
  sum += i
print(sum) # 15

一方で宣言的な書き方は下記のように書きます。

print(sum(range(1, 6)))  # 15

これくらいのコードだとそれほどの違いはないですが、宣言的な書き方の方が短く、何をしているのかがわかりやすくなっています。
コードも話も同じで順を追うよりも結論から話す、書く方がわかりやすいというのは面白い発見でした。

傾聴

  • 肯定も否定もしない

  • 意見を安易に言わない

  • 好奇心を総動員する

  • 基本的に相手の話を整理するだけで良い、しっかりと聞いてもらったと思ってもらえる

話を聞くときの姿勢としてある程度気をつけてはいるけれど、しっかりはできていないだろうなという点が多かったです。
否定はしないように気をつけていても、安易に肯定してしまったりすることはあります。
全部話していないのに安易に同調、肯定されるとちゃんと話を聞いていないのかもしれないと思われてもおかしくありません。

また相手の話を聞いてすぐに自分の話をしてしまうのも、相手の話を奪ってしまうのでやらないように気をつけてはいますがたまにはやってしまっていることもあると思います。(俗に隙あらば自分語りと言われるやつです)

相手の話を聞く時にどのように聞いたり、相槌を打ったりするのが適切だろうと思いますが、相手の話を整理しながら聞くというのは良い聞き方だと思ったので意識しようと思います。

質問

  • 誰かに相談して言語化できていなかった思いが明確になるとスッキリする

  • 一人では気づけなかったことに気づくのがコミュニケーションを取る理由

  • 過去のことや仮定条件で質問する

  • 状況、行動、結果・成果を深掘り質問する

  • 仮説を立てて質問する

  • 教わる時は一度に一つのことしか聞かない、目的を知らせる

人はなぜコミュニケーションを取るのだろうという問いに対してこの章に載っていた「一人では気づけなかったことに気づくため」というのはかなりしっくりきました。
人に話しているうちに思考が整理されて、自分で結論に辿り着けたということは多くの人が経験したことがあるのではないかと思います。
そしてその結論は自分でだしたのですから、人に押し付けられたものより納得できるはずです。

またここに載っていた質問の方法はシンプルですぐに使えそうだと思いました。
導入として過去のことや仮定の条件で質問してから、その時の状況、行動、結果を深掘りしていくという物です。
日常で使うならこのような感じでしょうか。

A「最近は趣味の海外旅行とかいった?」←過去に対する質問
B「行ったよ。マレーシアに一週間くらい行ってきた。」
A「そうなんだ。マレーシアはどんな感じだった?どの辺行ったの?」←状況に関する深掘り
B「クアラルンプール中心に観光地行ったり、カジノ行ったりって感じかな。カジノではちょっとガラ悪い人に絡まれて大変だった。」
A「マジか、その時はどんな感じで対応したの?」←行動に関する深掘り
B「このまま行ったら殴り合いになるかもと思ったから、カジノのセキュリティを呼んで対応してもらったよ」
A「それで何事もなく、怪我したり、金奪われたりはしなかったんだ?」←結果に対する深掘り
B「うん、何事もなく終わったよ。カジノで結構金はスッたけどね、、」
A「結構負けたんだwもしまた海外行ったらカジノ行きたいと思う?」←仮定に対する質問
B「もちろん!すぐにでも行きたいよ。」

実際の会話のテンポや状況に合わせて工夫は必要だと思いますし、スムーズにこの型を使いこなすためには訓練も必要だと思いますが、なかなかいい感じに会話できそうだと思いました。

言語化

  • 電話が楽なのは相手に言語化コストを負担してもらえるから

  • △△ではなく〇〇であると再定義する

  • 名前のついていないものを深く考えることはできない

言語化コストという言葉は耳慣れないですが、確かに脈絡のない話をして相手がこれはこういうことですか、ここが問題なんですかねと言ってくれる場合相手に多大な言語化コストをかけているというのはその通りだと思いました。
電話やZoomで話す方がニュアンスや表情が伝わって良いこともあるのですが、言語化コストを相手に負担させるために安易にZoomやMeetを使うのはしないようにしようと思いました。

また本ではゆるキャラの例が出てきましたが、言語化されていないものを深く考えることができないというのはその通りだと思いました。
これと同じように物が少ないライフスタイルを送る人を「ミニマリスト」と言ったり、学習指導要領の改訂が行われ、学びの内容や量が変更された世代のことを「ゆとり世代」というのは言語化されるまではふわっとしか認識されなかったのではないかと思います。

自分が一つこういう造語を作るとなるとなかなか難しいです。
新しいことを常にやるが移り気なため身につかない人を「トレンドチェーサー(trend chaser)」と呼ぶとかでしょうか。

なかなかキャッチーな言葉を考えるのは難しいですね。

全体的な感想

全体を通して非常に良い本だと思いました。
巷の記事や本ではコミュニケーションのテクニックを羅列したようなものも多いです。
しかしコミュニケーションというのはテクニックではなく思いやりであるというのが、著者のベースの考えとしてあるのだろうなというのが伝わってきました。

構成も第一部の内容が第二部につながるようになっており、構成が練られていると思いました。
あとがきに第一部は根であり、第二部は幹であると書かれており、実際のコミュニケーションの場で書いてあることを活かして花を咲かせられたらいいなと思います。

また最後の方に書いてあった「わかった気になった時が一番危ない」というのも何事にも通じることだと思うので、心に留めておきたいです。

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