落書き

退屈な授業中

黒板の因数分解が踊りだし
こちらを見て
あっかんべー

むぅと睨みつけた

教科書の角の『落書き』が
ねぇねぇと囁きかける

目を見張る
『落書き』がウインクする

時空が歪み
同級生が動かなくなる

止まった時間の中で
チョークが紫式部を描き出し
因数分解を消して
源氏物語をさらさら…

別のチョークは
虹を描く
囁きかけた『落書き』が
虹の上を歌いながら
歩いていく

『落書き達』は因数分解を蹴飛ばして
詩を作り歌を作り
紫式部と競い合う

なんとなく…
いたづら心が吹き出して

動かない同級生の頬に
『落書き』が仲間を書いた
くくくっと
『落書き達』と声殺し
笑っていたら
チャイムがなった

ゆっくりゆっくり
時が動き出した

同級生の頬の『落書き』が
親指立ててにっこり笑った

黒板を走り回る妖達が
因数分解を書いたが
少し間違えた

ガヤガヤと
クラスはうるさくなり

同級生はみんなに笑われた

素知らぬ顔で
因数分解を解いた僕は

「先生、そこ違います」と声を上げた