見出し画像

円安に喘ぐわたしは、あんたの記事で作業所クッキーを思い出した

岸田奈美さんの定期購読に登録した。
無料キャンペーン中だったので、なんて
太っ腹!と思い、登録したら、招待コードを
入れ忘れてしまった。

けど、まったくまったく問題ない!
こんな素晴らしい作品を無料で読むなんて、
恐れ多いわ。
お支払いさせていただきまして、
ありがとうございます、と思った。

岸田さんのエッセイを購読するというのは、
お金を対価にして、岸田さんの人生に、
ほんのほんのほんのすこしだけ、
お邪魔させてもらう権利なのだ。

私にとっては、彼女の経験は恐ろしく辛い。
なので最初は、彼女の恐ろしく辛い経験に
対して、端の端の端の片棒を、
私なんかが担えれば、という気持ちでお金を払わさせていただこうと思ったのだ。
それは、普段気の抜けた生活をしている
私のおごりだったのかもしれない。
要するに、傲慢だったのだ。
だけど、最終的には彼女の文章で、私はゲラゲラ
笑い、楽しみ、そして、胸をジーンとさせていた。
なんだこれは、私がもらいすぎている…
私は、無料期間中に登録するという自分の卑しさにほとほと嫌気がさした。
恥ずかしい…。
こんな価値のあるものすら、無料で得ようとしていたなんて。

ちっぽけなこんな私を恥ずかしいと思いながらも、それも「おもろいやん!」と笑い飛ばしてくれそうな彼女に甘えてしまいそうになる。

同情とか、かわいそう、とかそんな言葉が、
さようならと背を向けて私から離れていくのが分かる。
ついでに、だいばーしてぃもさよならした。
バイバイ。
人気者だからな。今後も町では見かけるだろうけど、町で人気者のだいばーしてぃは、
なんか、岸田さんの文章から私が個人的に
感じ取った、それとはちょっと違う気がするんだ。

エッセイのひとつひとつを噛み締めるように、
じくじく読むんだ。
うん、大丈夫、これはゆっくり丁寧に読む。
関西弁で怒涛のように捲し立てるような文筆に追従して、いっぺんにがばっと読んでしまいたくなる衝動を抑える。
大事に大事に読むんだ。

岸田さんの↓エッセイを読んで、思い出したことがひとつ。今日の題名も、ここからちょっと拝借させていただきました。

障害者施設で働いている方が作ったクッキーのことだ。

私の母は、小学校の先生をしていた。
「たまに職員室まで売りに来てくれるんよ」と言って、クッキーを買って帰ってくる日があったのだ。
「これは、障害者の方が作ったものなんよ。」と
母が教えてくれた。
小さい頃の私は、その意図や意味は理解してなかったと思う。

なんたって、クッキー自体がものすごく美味しかったのだ。
うまいもんはうまい。
ココア、柑橘、プレーン、と、あと何種類か準備があって、素朴で、甘さとクッキーの硬さがちょうどいい。バターの風味もしっかりするのに、もったり、しつこくないので、袋を開けたら最後、最後のひとつになるまで食べ切ってしまうのだ。
1日で何袋も食べてしまった私に、
母は注意も何もしなかった。
美味しくて美味しくて、毎日食べたいと思っていた。

「次は、いつ食べられるん?」と母に聞いても、
「んん?分からん、たまに来られるだけやからな」と要領を得ない。

「なんでぇ、関西スーパーで売ったらいいやんか。」

「スーパーでは売られへんよ。そんなたくさん作られへんやろうし。」

「えー、いつも食べたいだけやのに…。」

生まれた時から、家の近くにコンビニもスーパーもあった私は、大抵のものは食べたいと思った時に食べることができた。
食べたい時に食べられないという事に、
やきもきしたのを覚えている。
小学校によっては、売りに来ないようにしているところもあるようで、私が高校生に上がる頃には、
母が買って帰ることは、なくなってしまった。

岸田さんのエッセイを読んで、クッキーを作っている障害の方はエリートであるということが分かった。
彼らの目的は、利益を得ることではなく、働く、毎日同じことをする、喜んでもらうという営みを続けること。
障害の方の特性上、せっかく覚えた工程が変わると混乱をするから、赤字が出ても食材もグラム数まできっちり変わらない。
私もイレギュラーなこと起こると、頭がちかちかして、言葉がうまく口から出ずに、変な喋り方になったりするので、よく分かる。

変わらない味。

今、食べたい。夫にも食べてもらいたい。
そう思い、25年も前のことなのに、脳に刻み込まれた名前、

「ぷくぷくのクッキー」を検索してみた。

すると、通販をされていることを発見した。
ホームページだけだと、注文方法がよく分からなかったのだけど、メールアドレスがあったので、注文方法について問い合わせをしてみた。
ついでに、昔小学校の先生をしていた母が購入していた旨も添えて。
いつもは、ホームページ上で注文の方法が分からなかったり、不明なことがあると、私は、注文自体を諦めてしまうことが多い。
ただ、今回はちがう。

ちゃんと聞こうと思った。

食べたかったから。
あと、それと、岸田さんから受け取ったものを、
自分の血肉にしたいという気持ちも、少しはあったかもしれない。
返信がなかったら思い切って電話をしてみようと思った。仕事でないのに知らない人に電話をかけることを異常に嫌う私にとっては、すごい気合いだ。
実際は、全部家のソファでごろごろしながらスマホでできたことだけど。

すると返信があった。

「今でも学校の先生方にはぷくぷくのクッキーをご購入いただきお世話になってます。文面を読ませていただいて、以前からこういうつながりが続いていることに感謝しかありません。」

なんか、泣いちゃう。
岸田さん、あなたのエッセイがきっかけで、
私こんな温かな気持ちになったわ。
つながれた。
人も時間も、ぜんぶ。
今回みたいな人との関わり方を、
今後も続けていきたい。

母に伝えると、
「わー、懐かしいわ。ありがとう、なんか嬉しいね。」と喜んでくれた。
そして、
「ずいぶん前はダイエーにも売ってたんやけどね。」

………売ってたんかーい!
私が関スーに限定したんがあかんかったんか?
私の記憶違いか?
まぁ、今となっては全然いいけど。

姪っ子と甥っ子にも、ぷくぷくのクッキープレゼントしよう。きっと喜ぶわ。

【ぷくぷくのクッキー】
興味ある方はぜひ。
注文は電話、fax、メールで受け付けているようです。
私のように電話するのあかんねんという方。
faxって何時代の発明品?と思った方。
私がメールで依頼した際の方法を共有しておきます。(万が一、間違っていて、ぷくぷくさんにご迷惑をかけてはいけないですが…。間違ってれば私が全部悪いです!)
1.メールで購入したい品をベタ打ちで記入。
送り先の情報である住所、名前+ふりがな、電話番号を記載。
-クッキーはギフトだけでなく単品でも承っているようです。
-金額は送料込みのお値段になっているとのことです。
-私は一応、私の方で合計金額を計算して、金額合ってますか?と尋ねましたが、値段が誤っていれば、ちゃんと正しい金額の返信をいただけました。
2.担当の方から注文を承った旨の返信が来るので、
金額が合っていれば、下記の振り込み先にお金を振り込む。
3.振り込みが確認できれば、商品を送っていただけます。

【振込先】
ゆうちょ銀行
支店名099
普通
口座番号238360
ドリーマープクプク


商品ラインナップ


2023.8.2水曜日


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?