手をピンと伸ばして、信号を渡る。

近所を歩いてたら、そんな人がいた。

此処は都心ではないから、信号のない横断歩道で車は割と止まってくれる。でもその人(推測60歳過ぎのおばさん、背筋はまっすぐ)は、意志を持っていた。車を自ら止めるのだと、私はお前に勝つのだと。「さん、はい!」と言わんばかりの調子で、一拍助走をつけた風に、ピッと手を挙げた。若い頃はそんな気概で、修羅場を潜り抜けたこともあったもんだ。

近頃はヌルいよ。世の中は勝ち負けで溢れている。くだらない。比較で溢れている。しょーもない。情報で溢れている。暇人どもが。私は忙しいよ。これ、隣にいるの旦那だけども世話が焼けるのさ。手を挙げるのも私だしさ。

お金だけが大切じゃないとか、資本主義の次の時代だとか、言っている奴等だって、結局買い物をしてるんだ。ふっざけんな。グチグチつまらない事を言っている暇があったら、嫁さん見つけて子供でも育ててみな。

コロナだってさ、もう1、2年で終息さ。その前に、私がお前をブチのめしてやんよ。嫁も見つけてやるさ。私もね、60歳にもなると、生き甲斐という生き甲斐が無くてねえ。うんそうねえ、丁度良いかも、しれないわ。


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