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萌芽は何処から

夜と朝が入れ替わるとき、過去と現在が交錯する

2016年冬
京都がまだまどろみの中にいる時間に
私は自転車を走らせていた
耳が痛くなるくらいの寒さと静けさが
寝ぼけ眼の私の五感を尖らせる

眠たげな朱色を放つ仁王門
龍が番をする手水
千年間生きた生き物の匂いがする黒ずんだ舞台
一歩進むたびに軋む音が緊張を煽る

意を決して
深く息を吸い込み目を閉じた

まどろむあなたの顔が見える

昨夜遅くまで書いていたのだろうか
筆を手にしたままだ
起こすのは悪いかなと思ったが
どうしても伝えたくて私は語りかけた

”あなたの言葉が大好きです。
同じ時代に生きてお話したかったです。”

聞こえたのかはわからない
でも少しあなたが微笑んだのが見えた気がする

誰かが何かを語りかけてきた
そんな気がして目を開いた
しばらくしてからああ夢かと気づいた
まだ朝は早く、雪がちらついていた

その景色を見て微笑んだ彼女は
昨夜書いていた文章に続きを綴りはじめた

”冬はつとめて。”

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