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心をとろけさせる、超スター、台湾 周傑倫の輝き曲 紹介

こんにちわ。江南です。note一番最初の投稿で、当時あまり読まれなくて、でもその後需要が多かったので、再度掲載します。

Amazonで出版予定の本の中に、主要な内容ではないのですが、中華圏のポップスについて紹介する章があります。以下はそちらからの抜粋です。本の中では、各歌手について数曲づつを紹介していますが、ここでは周傑倫の曲について、2曲分の紹介を抜粋して公開します。

周傑倫は中華圏では、日本のサザンとユーミンや米津玄師と同じくらい有名で、不動の人気がある男性の歌手です。名曲が無数にあります。私も好きです。今40才くらいのまだ比較的若い歌手です。ファン層の中心は30代くらいじゃないかと思います。Youtubeに沢山オフィシャルミュージックビデオが上がっていますので、見ながらご覧いただくと、イメージが湧きやすいかと思います。「周傑倫」は、日本語の漢字表記で、中国の簡体字では「周杰伦」,台湾で使われている繁体字では「周杰倫」の表記のようです。

いま日本では、中国の政治や経済については、偏見が強く問題の多い本も含めて、かなりたくさんの本が出版されています。一方、中国の一般の人たちの生活や中国社会について総合的に解説した本は、ひじょうに少ない印象です。このため、日本国内の日本人の方には、一般の中国の人たちがいま、どんな生活をしていて、どんな状態なのか、とてもイメージが湧きにくい状態になっているように思います。在中生活の長い者として、Amazonで出版予定の本は、その穴を埋める意図で書いた本です。いまの中国関係の本の中ではたぶん珍しく、だと思いますが、肯定的視点から書いています。

本は、シリーズにする予定で、おそらく最低でも3冊以上になると思います。2冊半分くらいは既にほぼ書きあがっていて、残りの部分を補充、および推敲しています。一般の中国の人たちの生活について、詳しく知りたいという方は、是非、注目していただければと思います。こちらでも出版後に告知したいと思います。遅くても2-3週間以内くらいには第一冊目が出版できるのではと思っています。

前置きが長くなりましたが、では以下、出版予定の本から抜粋して、周傑倫の曲の紹介です。太字が曲名です。

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珊瑚海

周傑倫と梁心颐(Lara)という女性歌手の二重唱曲です。英語でいうと二重唱はduetなので日本語では「デュエット」でいいのだと思いますが、日本語だと「デュエット」という言葉は男女の掛け合いのイメージが強いかもしれません。この曲は掛け合いではなくて、二人の声が出たり入ったり重なったりの、二重唱という感じです。

誰が聞いてもよいと思える曲だと思います。周傑倫がとても才能ある作曲家だというのが、一曲だけ聞いてもすぐわかるような曲だと思います。女性のほうの梁心颐は、これを歌っていた頃、17歳だったようです。Youtubeでオフィシャルミュージックビデオが見られます。
曲の感じは本当にサンゴの周りに魚が泳いている透き通った重い海水の動きのような感覚を与えます。これはMVの映像だけのせいではなくて、音だけ聞いてもそんな感じがします。出だしなどは、たとえようもなく美しいという感じです。

歌詞は、やや文学的すぎて私の中国語力だと細部がわからない感じですが、恋愛がうまくいかなくて別れにいたる、痛みを歌ったような曲になっています。「我々の愛は、差異がずっと存在した」「身をひるがえし離れる。別れを口に出すことができない」。なにかふくよかでとても甘い感じのなかに、身に差し込んでくるような痛みがあるというような、音とメロディーの感じが、言葉では表せない人間の微妙な気持ちを表しているように思います。重たく繊細で透明で、流れるようにかすれる、という感じでしょうか。別れる本人の痛みというより、第三者の目からその人の恋愛と痛みを見たような感じの第三者の感傷という感じのする歌です。

Youtubeで見られるオフィシャルMV(ミュージックビデオ)は、容貌はあまり冴えない、ストリート系というか日本でいえば音楽とか美術系でクラブに行っていそうな感じのまったりした男性が、気のよさそうな飾らない、でもそれなりにかなり綺麗な女性と知り合って、つきあうようになる。しばらく楽しい日々が続くけれども、そのうち現代的な感じのすっきりした、そしてお金もその主人公の男性より持っていそうな男性から主人公の女性が花を贈られたりして口説かれるうちに、女性がその新しい男性に気が移って別れることになる、その悲しみを表したような映像になっています。おもしろいことに、このふられてしまう男性を演じているのは方文山というこの曲の作詞をした作詞家のようです。周傑倫の多くの歌は、この方文山の作詞で、青花瓷、夜曲、东风破、蒲公英的约定、七里香など、彼の作詞でひじょうに有名な曲がたくさんあります。このビデオの中ではぱっとしない、同情されるふられてしまう男性を演じている方文山は、中華圏では押しも押されぬ地位を築いている作詞家といえます。

私はこの曲、音だけ聞いていて竜がうねっているような感じをうけました。周傑倫と梁心颐の声が出入りし、からみあって続いているような。そして周傑倫の声の重く湿り沈みかかる感じに対して、梁心颐の透き通った声が下からしっかり支えて弾性あって持ち上げる上昇の感じで拮抗しているように感じました。喜びと悲しみと、一言でどちらというでもなく、この世に生きてあることの感じ、ということでしょうか。


稻香
気の置けない素朴で口ずさみ易いメロディーの曲です。少し諧謔的な感じの、そして同時に心温まる感じのリズムが刻まれます。途中でストップモーションみたいな音の止めの入る遊びもあります。
この曲はあまりくだくだ書かないで、直接聞いていただけばいいだろうという感じでもあります。


私は音楽ジャンルの定義はあまりよくわかりませんが、カントリー調のラップと言えるのではないかと思います。冒頭は、たぶんコオロギだろうと思いますが、虫の声で始まります。


音は自身で聞いていただくとして、YouTubeのMV。見て暖かい気持ちになる、よい出来になっています。夕暮れの、あるいは早朝の一面の稲穂、流れる川面のきらめきで始まり、会社で叱責される40才くらいの中年会社員の様子に続き、その社員が荷物をまとめて、段ボール箱を抱(かか)えて退職して、とぼとぼ歩きながら、ふと振り返って会社のビルを見上げる姿が映し出されます。

自宅で力なく寝込んでしまったいい年をした主人公は、子供や奥さんが心配して世話をしにきても、かえって苛立って起き上がらずに自分に籠る(こもる)という風で、奥さんと子供も荷物をまとめて出て行ってしまう、という筋になっています。ここまでの1分半の間で、よく出来たビデオと思います。

この間、冒頭で映し出された稲穂の並び拡がる田舎の田んぼのあぜ道を、リヤカーのようなものに乗って、麦わら帽子をかぶりラップの歌詞を歌いながら引かれていく若い周傑倫と、同じ年頃のギターを弾いている相棒の姿が時折り織り込まれます。奥さんと子供が出て行くシーンの後は、その田園の中でラップを歌う二人の姿がひとしきり続きます。


--- 倒れて前に進めない?でも多くの人ががんばっている。足るを知ったほうがよくない?実家は唯一の城、稲穂揺れ、河流れる。帰ってみれば?一番初めの美しい場所、夢がかなわない、ならば夢を変えればいい。自分を愛して笑ってみれば。子供の頃の紙飛行機が帰ってきた。田んぼの中をとんぼを追った思い出。---

まあだいたいの意味でいうと、上のような、温かい眼差しで包み込むようなやわらかな歌詞が続きます。


ひじょうに特徴的なのは、その後、その田園の中の田舎町の、外に開かれた大きな庭のある、農家のような家に主人公の会社員が帰ってくると、母親と思われる初老の女性が両手を広げて抱きついて迎え入れ、白米のごはんを作ってあげて、それを主人公がうれしそうに食べている、という映像が続くことです。ほぼ40才くらいの男性なんですから、都会で辛いことがあったといっても、それを母親が手を広げて出迎えて、しかもご飯作ってあげて、それをうれしそうに食べて、なんとなく元気が戻ってくる、という映像というのは、日本では「なさけない事」と見なされて、実生活上はあちこちでありそうとしても、公(おおやけ)に何百万という視聴者に向けてこういう映像が発信される、ということはまずないのではないかという気がします。


そういう意味で、この映像は、中国社会の一面での温かさ、人間的な寛容さ、暖かい眼差しを、とてもよく表しているビデオのような気がします。中国社会は日本ではどうも苛烈とみなされがちですが、こういう、人がなにか傷ついたり打ち沈んでいる時に、何も言わずにいつもと変わらないまなざしで受け止めてくれるようなところを持っていると私は感じています。日本が、日本国内の言葉で言えば、「自分にも他の人にも自分を厳しく律してどんな時にも自分で立つことを求めている社会」とすると、中国の場合は、人はみな同じ動物のようなものとみなして、みなで一緒にやっていこうというような感じがちらほらと、いろんなところで見えているような社会の感じがあります。


ビデオを見ていると、40才近い男性が母親の前でパクパクとおいしそうにご飯を食べる、子供たちと一緒に駒を回す。そしてみんな、麦わら帽子をかぶった近所の子ども、若い人たち人たちから年寄りまで、その家の庭に集まって、周傑倫と相棒の歌うのを聞きながら、椅子に座って体を揺らす。田んぼの中ですっかり自信を取り戻して生気のある壮年に戻った風に見える男性に、農作業をしている近所の人たちが「あれ、XX(名前)か?」という風に大きく手を振る、そして主人公が、子供たちと虫取りをし、ちょうど母親と囲碁か将棋のようなものを指している時、家を出て行った男性の妻と子供が訪ねて来て、子供を抱き上げ、妻とも肩を抱く、というハッピーエンドの結末になっています。


私がこんなことを言っても説得力がないわけですが、実物は音楽とビデオですから、YouTube でOfficial Music Video と書かれたのを曲名で検索して見ていただければ分かると思います。よくできたフィルムだと思います。
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抜粋おわり

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