歯科技工士という職業

僕は歯科技工士という歯を作る仕事をしています
現在は都内の歯科医院内の院内ラボという形で勤務し、ほとんどのケースの場合、患者様と対面し要望を聞いて、その方に合わせたオーダーメイドの歯を作っています。

歯科技工士が精魂込めて制作した歯は補綴装置と呼ばれる人工臓器の意味合いを持った物になり、患者さんの健康と笑顔を守るお手伝いをします。

働いてきたなかで特に印象深いケースのお話をします。

上の歯全部と下の片方の奥歯の無い超高齢のお婆ちゃんの患者さんでした。
元々の入れ歯がありましたがうまく噛み合わず、柔らかい物ばかり食べているとの事でした。
食事にも時間がかかり、好きなものも食べれず、楽しみだった食事が楽しくなくなってしまっていました。
特に家族との食事が楽しめないのがとても残念で、残りの人生の間に好きなものを食べたい、どうしてもしっかりしたお肉が食べたいと願っていました。

僕は先生とコミュニケーションを取りながら患者さんと何度も立ち会い、試適を重ね、上下の入れ歯を完成させました。

入れ歯と聞くと外れる、痛い、噛めないというイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、適合や支えのバランスがうまくいき、噛み合わせがしっかりいけば天然歯には劣りますが噛めるようになります。

少し専門的な内容になりますが、前歯は見た目のバランスが良い所で排列し、食物をすりつぶしやすいようイメージを持って臼歯を排列・咬合調整し、前歯で食べ物を噛んだ時に切断しやすいよう、その力を奥歯でも支えてバランスを取って外れずらいようコンマ何㎜の中、調整しました。

口に入れて再度噛み合わせを調整し、フードテストを行います。
実際に食べた時に問題が無いか、痛いところが無いかチェックし、微調整を行います。
その場で野菜スティックを召し上がられた患者さんは非常に喜んでくださり、僕らも一安心することができました。

「家族と食事に行くのが楽しみだ!」と仰って帰られた患者さんは、翌週念願のお肉が食べられたと報告して下さりました。

そしてそのお婆ちゃんは2ヶ月程後にお亡くなりになりました。
深く治療に関わっていた僕らにとってもとても悲しい事でしたが、ご家族から「亡くなるまでの間に好きな物や大好きなお肉を一緒に食べれて本当に良かったです、ありがとうございました。」と非常にありがたい言葉を仰って頂きました。

この入れ歯完成させるまで本当に脳が焼けるほど考え、気持ちを込めて、時間をかけて調整を繰り返しました。
そして歯科は人生の最期までの時間をより良いものにするお手伝いができる仕事なんだと、僕はこの時心から思いました。

要望を叶えるためには長い時間もかかり、患者様にも協力頂き、調整やコミュニケーションを積み上げてできるものです
しかしそうして得られた結果は時には患者様の人生がほんの少し変わる程の力を持ち、治療に関わった僕らも誇りとやりがいを感じる事ができます。

僕はこのような症例を通して生活をより良くするお手伝いができる自身の「歯科技工士」という職業に誇りを持つことができ、その仕事で自分の家族との生活に繋がる事がとても幸せに思います。

こういった経験ができる事は周りの方にも環境にも恵まれ、とてもありがたい限りです。

技量不足で要望を達成できず、ご迷惑をかける事もありますが、日々研鑽を積んでいます。

10ヶ月になった子供はメチャメチャ米食うので、家計を支えるためにも頑張ります!

#歯科技工士
#歯科
#医療
#生活
#家庭
#育児
#職業
#国家資格

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?