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「VLOGCAM」を深掘り

※2023/08/14更新:一部追記しました。

2020年、感染症プロパガンダが蔓延する中でとあるカメラが登場。
その名は「VLOGCAM」

前述通り感染症プロパガンダによる大愚策(おうち時間など)によりYouTubeを始められた方も多いと思われるが、その需要に合わせて登場したのがこのVLOGCAM。
そもそもVLOGは「ビデオブログ(Video Blog)」の省略形であり、この言葉が流行り出したのは2005年のYouTube創設からではあるが、VLOGの言葉自体は1980年代からあったとされている。

そんな「VLOGCAM」を今回は深掘りしていこう。



VLOGCAMの登場

2020年5月27日、ソニーから新たなコンセプトのカメラが発表。
その名は「VLOGCAM ZV-1」。

ソニーの高級コンデジ「RX100」シリーズをベースに、Vlog用途に特化した仕様に変更。レンズは35mm判換算で24-70mm相当のZEISS バリオ・ゾナーを搭載している。開放F値(絞り)は広角側がF1.8、望遠側がF2.8。

見た目はコンデジそのままと言えるが、コンデジには無い機能が備わっており、

  • 大型のマイク搭載(3カプセル型)

  • 録画ボタンの大型化(赤色の丸枠)

  • バリアングル液晶

  • ストロボ非搭載

この4つが大きな点と言える。

VLOGCAMが登場した背景は、冒頭の感染症プロパガンダも一因ではあるが、動画に特化したコンパクトデジタルカメラにてVlog撮影を行うことが増えたためとも言われている。なお「VLOGCAM」はソニーの登録商標であり、他のカメラメーカーでは一切用いることが出来ない。
(温水洗浄便座における「ウォシュレット」と同じ理由である{「ウォシュレット」はTOTOの登録商標}。)


VLOGCAMの特徴

VLOGCAMは先ほども紹介したが、コンデジには無い機能が備わっている。
ここではそれぞれの特徴について紹介していこう。

大型マイク

VLOGCAMで一番の大きな特徴と言えるのが「大型マイク」。
まず見た時に一番目に入ってくるものと言える。

中央にあるのが大型のマイク

こちらのマイクは一見するとスピーカーの様にも見えるが、実は3つの指向性マイクが中に入っており、前方の音声をしっかり捉えることが可能となった。併せて、ウィンドスクリーン(通称:もふもふ)も標準装備されており、隣にあるマルチインターフェースシューに取り付けて使用することが可能だ。
もちろん、マルチインターフェースシューに対応したマイク(例:ECM-W2BT)があれば、それを外部マイクとして使用することが可能である。

ワイヤレスマイク「ECM-W2BT」を装着したZV-1(Smallrig製ケージ装着)


録画ボタンの大型化

次に挙げられるのが「録画ボタンの大型化」。
今までのコンデジやミラーレス一眼などの録画ボタンは、録画機能があくまでもおまけ程度のものであったため、ボタン自体も小さく押しづらかった。

VLOGCAMでは、録画ボタンを大型化することにより動画機として利用出来るように改善され、ボタン自体も「赤色の丸」から「赤色の丸枠」に変わった。赤色丸枠の録画ボタンはアクションカメラの代名詞とも言える「GoPro(ゴープロ)」にて採用されているが、恐らくそこから取られたものだろうと思われる。


バリアングル液晶

VLOGCAMの特徴の3つ目として挙げられるのは「バリアングル液晶」。
バリアングル液晶自体は一眼カメラでは実績のある液晶可動方式ではあるが、コンパクトデジタルカメラではあまり馴染みのない機能であった。
チルト式でも自撮り含め撮影は可能ではあるが、画面の見やすさ等を考慮するとバリアングルにせざるを得なかったのだろうと思われる。なお、ソニーにはビデオカメラ「ハンディカム」が販売されている関係で、ハンディカムの撮影方法を取り込む形でこの液晶を採用した可能性もあるだろう。

ZV-1の液晶画面


ストロボ非搭載

VLOGCAMを見て気づく点の最後は、ストロボが非搭載であること。
他のコンデジには必ずと言っても良いほど内蔵ストロボが搭載されており、フラッシュ撮影時はこのストロボを用いて撮影を行う。
しかし、ストロボの光は一瞬であるため静止画では有効だが、動画ではすぐに暗くなってしまい何も意味を成さない。そう言うこともあってか最初からストロボは非搭載となっている。

そもそも動画で光を取り入れるとなると、別途LED照明などが必要となるので、ストロボの搭載は不要なのだ。
もし、ストロボが必要な場合はマルチインターフェースシューに対応したものであれば使用可能である。

ZV-E10の軍艦部。
普通のミラーレス一眼なら中央辺りにポップアップ式のストロボを搭載するが、VLOGCAMにはストロボを搭載する場所が一切ない。


VLOGCAMのラインナップ

VLOGCAMは2023年7月現在、計5機種が登場している。
それぞれの特徴などを見ていこう。

1:ZV-1

VLOGCAMの記念すべき第1号モデルとなったのがこのZV-1。
高級コンデジであるRX100をベースにVLOG仕様へアレンジ。センサーは1型の裏面照射積層型CMOS「Exmor RS」、レンズは35mm判換算24-70mmで開放F値1.8~2.8のZEISSバリオ・ゾナーT* ズームレンズを搭載。

2023年6月に発売された後継機種「ZV-1 II」の登場により生産終了。入手するには在庫商品か中古品となる。


2:ZV-E10

VLOGCAMの第2号は2021年9月に登場したこのZV-E10。
コンデジベースのZV-1と比べてボディが大きくなった上、初のレンズ交換式(ミラーレス一眼)となった。そのため、αシリーズにも分類される。
α6000・6300・6400をベースにVLOG仕様へアレンジされているため、センサーサイズはAPS-Cとなり、ZV-1より解像度が上がった。

ベース機のα6000シリーズは全機種電子ビューファインダー(EVF)を搭載しているが、ZV-E10はVLOG仕様へ特化したカメラなのでファインダーは非搭載。α5000シリーズ以来のファインダー非搭載機となった。
レンズ交換可能なため、高級仕様の「Gマスター」含めあらゆるレンズで撮影可能。また、マルチインターフェースシューに対応したマイクにおいてデジタル音声の収録が可能となった。


3:ZV-1F

VLOGCAMの第3号機となったのは2022年10月に発売された「ZV-1F」。
ZV-1と異なる点としては、「単焦点レンズ」「AF方式」「ホットシュー非搭載」「静止画記録方式」の4つ。

まずは単焦点レンズからであるが、ZV-1と同じZEISSのレンズではあるが、ZV-1Fでは35mm判換算20mm相当のZEISS テッサーT*単焦点レンズに変更された。また、AF方式がZV-1では位相差AFが可能だったのに対し、ZV-1FではコントラストAFのみとなった。カメラのレビューなどを扱うDPReviewでは「ウォブリング(ピントが前後に行き来する現象)」が見られるなど批判の的となった。
3つ目のホットシュー非搭載であるが、ZV-1Fでは一見マルチインターフェースシューのように見えるシューはあるものの、こちらは電子接点を持たないコールドシューに変わった。外部ストロボを使用することが出来ないのと、マイク装着の際は音声ケーブルを用いることとなる。
4つ目の静止画記録方式は、ZV-1・ZV-E10はRAW記録も対応していたが、こちらはJPEGのみに削減されている。


4:ZV-E1

VLOGCAM第4号機は2023年4月に発売された「ZV-E1」。
VLOGCAMとしてはZV-E10以来のレンズ交換式ではあるが、同シリーズ初の1210万画素フルサイズセンサーを搭載し、価格も同シリーズの中では高価となった。
(2023年7月17日現在の最安価格はボディのみで¥270,000-)

高感度に強いフルサイズ機「α7S III」がベースとなっている関係からか、VLOGCAMシリーズの中では画素数が低いモデルである。ZV-E10同様VLOG仕様へ特化しているカメラなので電子ビューファインダーは非搭載。ソニーのフルサイズ機としてはコンパクトデジタルカメラのRX1R以来(※)の登場となる。


5:ZV-1 II

VLOGCAM第5号機は2023年6月に発売された「ZV-1 II」。
ZV-1の後継機種でマイナーチェンジを行ったモデルとなった。レンズはZEISSバリオ・ゾナーT*に変わりないものの、35mm判換算18~50mm相当と広角寄りに設定された。開放F値は1.8~4.0。

ボディ自体はZV-1Fをベースとしているため、三脚穴ネジが本体左寄りになったのと、データ転送・充電ケーブルの差込口がmicroUSBからUSB-Cに変更された。
また、動画時の手ブレ補正がZV-1では光学式を併用していたが、本機では電子式手ブレ補正に統一されている。このため、静止画では手ブレ補正なしでの撮影となるので注意しよう。


これからVLOGCAMを始めるなら・・・

今回の記事をご覧いただいて「VLOGCAMを使ってみたい!」と言う方もいらっしゃるかと思うが、そのような場合は現在どのようなカメラを所持しているかによって異なる。
私がおすすめするならこの通りとなる。

カメラを持っていない or 違うメーカーのカメラを持っている

カメラを一切持っていないまたは違うメーカーのカメラを持っている場合は、ZV-1 II・ZV-1Fなどのコンパクトデジタルカメラタイプが最適。
カメラを持っていない方がレンズ交換式のZV-E10やZV-E1を選ぶのは荷物が増えるのと、違うメーカーのカメラを所持している方がZV-E10やZV-E1を選んだ事を考えると交換レンズのマウントが合わないので、それを踏まえるとコンパクトデジタルカメラタイプのZV-1 II・ZV-1Fが望ましい。
ただし、私が選ぶとしたらZV-1 IIの一択しかなく、ZV-1Fは微妙な立ち位置である。ZV-1 IIの価格はまだ高めなので、お安く手に入れたいのなら中古のZV-1も視野に入れてみよう。

ソニー製のミラーレス一眼「α」を持っている

この場合はレンズが活用出来るZV-E10かZV-E1がおすすめ。
コンデジタイプでも構わないが、折角の資産を活かすならレンズ交換式が最適。フルサイズ機またはAPS-C機お持ちの方も小柄なZV-E10であればこちらを動画専用にすることで立場を分けることが可能だ。
ただしZV-E1を購入する場合、既にα7S IIIを導入しているのならα7S IIIを活用して欲しい。何故ならZV-E1もα7S IIIも画素数が同じだからである。α7S IIIからZV-E1に買い替えてもファインダーの有無だけなので、α7S IIIを所持している場合は買い替えずにそのまま動画機として活かすのが最善。


最後に

今回は「「VLOGCAM」を深掘り」をお届けしました。
VLOG専用のカメラと言う全く新しいジャンルに踏み込んだソニー。流石にチャレンジ精神があるなぁと思いました。
これをきっかけに競合他社でもVLOG用カメラが次々登場し、パナソニックではLUMIX G100、ニコンではZ30、キヤノンではPowerShot V10など新しいVLOGカメラが次々と登場しています。

果たしてVLOGカメラは今後どうなるのか。そしてVLOGCAMはライバル機とどう競争していくのか楽しみですね。

今回はここまで、最後までご覧いただきありがとうございました。


※レンズ交換式のフルサイズ機としては初めての採用。

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