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財務という手加減

 「財務」とは、財産を用いて存立を維持するという意味です。
 だけど現実は、経費削減、残業削減など、お金を使わないようにするパッシブな発想ばかりで、どのように使ったら良いんだろうというアクティブな発想があっても良い気がします。なるべく減らしたい使い道、なるべく増やしたい使い道、そういう基準を持つ手加減が、財務の本来の目的だと思う。
 どのような手加減のパーセンテージか、考えてみたいと思います。


財務の分かりやすい例、財政。

 令和4年度(2022年度)の日本の国家予算です。

 分かりやすいと思わないかもしれませんが、私たちが所属する組織というのは誰でも会社か学校か地方自治体か国、そのどれか。その中でも国についてなら、少子高齢化や安全保障、借金が大変なことになっていることなどのニュースがひとりでに入ってきます。他のどんな組織よりも財務について、いつのまにか詳しい。分かりやすい例が国家財政だと思います。

 その日本の国家財政について見てみると。
 総額107兆円です。
 これだとボリューム感が掴めなくて分かりづらいので、「 〇〇兆円 」を「 〇〇万円 」と言い換えてみる。107兆円は107万円だと思ってみる、ついでにキリよく100万円と思ってみる、予算全体を100%として割合も書かれているので、〇〇%のところだけを読んで、〇〇万円と読んでみる。100万円の予算で、何にどれくらい使っているんだろう。金額の正確さよりも、財務の割合いを把握したいのでだいたいでも大きな問題ではないと思ってみる。

入ってくるお金の割合

 まず歳入、赤い円グラフから見てみます。
 大きな割合になっているのが「租税および印紙収入」60.6%、これは税金のことです。先ほどのルールで読めば、収入100万円のうち60.6万円は税金なんだな、というイメージです。さらに税金の内訳を読むと所得税18.9万円、法人税12.4万円、消費税20.0万円になっています。
 ここでちょっとここまでの財務を検証してみると、消費税減税を主張する政治家もいますが、全体で100万円の予算の国が20.0万円の収入、2割の税収が目減りするなんて大変なことだということが分かります。
 さて円グラフに戻って、次に大きな割合が「公債金」34.3万円。これは新たに発行する国債、つまり新たな借金のことです。100万円の予算のうち34.3万円を借金によって補填している。国の借金が大変だ、プライマリーバランス、国が造るお金を増やして、というニュースはここに原因があります。

出ていくお金の割合

 次に歳出、青い円グラフを見てみます。
 100万円の支出のうち、一般歳出で割合が大きいのが「社会保障」33.7万円です。年金や医療費の問題はこの部分で、そもそも33.7万円ではすでに大幅に不足しています。実際に社会保障に使われている額は129.6兆円、分かりやすさルールで言えば130万円が必要です。高齢化の問題はこの部分で、社会保障費のほとんどが年金と医療費、医療費の6割は65歳以上が占めているという深刻さがあります。
 次に目立つのが「国債費」22.6万円、これは借金の返済です。
 地方交付税も14.8万円と大きな割合で、人口減少や高齢化の問題が特に深刻な地方自治体こそ、その地域に見合った使われ方をしているかを注視したいところ。
 ついでに国防費はGDP比1%から2%にということも発表されましたので、国家予算の割合も2倍に増えることになります。

日本の望ましい手加減

 さて、身近な組織、国の予算について大まかに把握したところで、財務が正しく行われているかという点で検証してみます。
 経費削減、なるべく出ていくお金を減らすようにすることはもちろん、未来につながるお金の使い道ができているかどうかの検証。国にとって未来につながるお金の使い道というのは、教育と科学技術です。
 「文教および科学振興」は5.0万円。107兆円の国家予算の5%しか分配することができていません。いつか社会が良くなる、原子力の問題も科学が解決してくれる、地熱発電などの再生可能エネルギーの割合が高まっていく、このような技術が海外に輸出できるようになって歳入が増えていく。漠然と楽観視したくなりますが、そのための予算は5%というのが現実。せめて10%以上、30%くらいの予算を投資できれば、未来につながる国の財務になるように思います。

財務の手加減、投資法則。

 なるべく使わないようにするという安易でパッシブな考えかたではなく、何にどのくらい使うかというアクティブな手加減。いまはなんの役にも立たなそうな使いみちだとしても、未来につながる可能性に種をまいておきたい。
 この割合をざっくりと分配してみると6:3:1が良さそうです。投資対象によって、財務状況によって変動は必要だとしても、6:3:1を補助線として調整していけば良い。

 課題を解決する  ・・・ 60%
 成長につながる  ・・・ 30%
 新たな可能性   ・・・ 10%
 
 この財務の割合を所属する組織やチームにあてはめてることによって、経費削減や残業削減など、使うお金を減らしていくことだけという財務の膠着状態から、動いて、未来に向けて進みはじめます。
 お金の使いみちを時間の使いみちに置き換えれば、6:3:1の未来につながる時間配分になります。有名な話しでGoogleの20%ルール。勤務時間の20%を直接業務とは関係ないことにあてて良い、この20%の時間に、現在のGoogle社を支える主要なサービスのほとんどが生まれているという事実も、興味深い一致です。
 財務の手加減、投資法則。今ある課題を解決するだけでなく成長につながる投資、新たな可能性が生まれるかもしれないちょっとした手加減。成功は10%のギャンブルかもしれません。


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