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(11)未来の物語の作りかた

A:ちょっと逸れた話になりますが、ハリウッド映画との類似点を多く指摘されているように伺えます。

服部:まさに映画ですよこれは。ゲームを見ているというより、ハリウッドのサスペンス映画を見ているような感じがします。ハリウッドはもうシナリオをディープラーニングで作ったりしてるんじゃないかな。

A:行ってますかねそこまで?

服部:僕はやってると思うます。大まかな物語の流れとかをマーケティングデータとあわせて……

A:さらに興収や動員数を合わせれば最良のパターンが見つかると?

服部:あっておかしくないでしょう。ディープラーニングの得意分野だと思います。マーケティングデータから逆算してシナリオをカスタマイズしてくれたり。だいたいシナリオなんてパターンが決まってますからね。ルーカスなんかも、有名な民話や伝承の研究家の「人間の物語は9パターンしかない」というレポートを見て脚本を書いているらしい。

A:えー

服部:そういったコアな部分をOSとして、シナリオを学習させ、マーケットデータを照らし合わせると、ある程度の売れるシナリオはできるんじゃない?

A:ほおおおお、もしかしたらもう何本か作られているのかもしれませんね?
 っといったところでコナーくんデトロイト市警に参りました。おすわりして警部補を待ちます。

服部:机の上も調べられるんだ。だけどこういうディティールの細かさは、ゲームの本質とあまり関係ないんじゃないのかな?テキストベースで説明しても構わないと思う。

A:昔のADVはそうでしたね。でも僕はこっち好きです。こういう壁に貼られた写真をいちいち調べて情報を引き出す、なんていうのはテキストベースだと苦しい。

服部:確かに普段は煩雑すぎて省いちゃうような項目も、空間に押し込められるのはいいかもしれない。

A:署長に呼び出され、アンドロイド関連事件の担当に指名されます。

服部:時代考証はしないほうがいいんでしょうけど、このくらいの時代になったら事件の性格も変わってるかもしれませんね。例えば念力で人を殺せるような時代が来たとして、そこでは探偵小説は成り立たなくなる。サイバー攻撃で人が死ぬとして、その過程で可視化できるものは少ない。このゲームみたいに銃や刃物がないと、やはり想像しづらい。

A:情報主体になって会いに行くということもなくなってしまえば、殺す機会も奪われてしまう。

服部:シャーロックホームズって、あまり現場に行かなかったんだよね。部屋で椅子に腰掛けてパイプくゆらせてワトソンに調べに行かせて推理を働かせる。

A:安楽椅子探偵ですか。

服部:ああいう探偵小説ができたのは19世紀でしょ?

A:あー!産業革命で情報と物の流れが変わってからだ。

服部:ホームズが専門家に電話で話を聞くこともあったそうだし、明確に書かれてはいないけど。そういったコミュニケーションの上に犯罪も捜査もあった。全く違うコミュニケーションが生まれれば、全く違う犯罪も起こりうるわけです。

A:まさに先ほどのように、ワイヤレスでやり取りされたら絵的にわからない。

服部:そう、それだと映画にならない。それが謎を解く鍵になったりするならまだしもね。だからそういう意味で、今の探偵小説みたいなものをもう一度考え直す必要はあるんじゃないかな。

<了>
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