海外駐在前に読みたいおすすめ書籍 #4 - 金持ち父さん 貧乏父さん
自己紹介
ご覧頂きありがとうございます。新卒で食品会社に就職し、営業職を経験したのちにアメリカの子会社に赴任。約10年間海外駐在しています。
自分自身への備忘録も兼ねてアメリカでの体験や自身の考えをnoteに残していきたいと思います。同じ境遇やこれから海外に挑戦したいという方にとって少しでも参考になれば幸いです。
はじめに
読書というのは自分ではない誰かが人生をかけて得た知識や経験を疑似体験できる非常に素晴らしいものだと思います。
海外駐在に向けては渡航する国によって、すべき準備は変わってくると思いますが、読書は渡航先に関わらず大きな助けにとなると考えています。
自分自身が実際に読んで、これは海外駐在前に知っておきたかったなと感じた書籍を紹介させていただきます。
おすすめ書籍#4:金持ち父さん 貧乏父さん(ロバート・キヨサキ著)
言わずと知れた、財務・投資にまつわる世界的なロングセラー。この書籍では著者ロバート・キヨサキ氏自身の父親と友人の父親との対比を通じて、お金に対する異なる考え方とアプローチを探求しています。
金持ち父さんは資産を増やし、お金を働かせる方法を教え、貧乏父さんは安定した仕事と収入を重視する考え方を代表しています。
この対比を通じて、著者はマネーリテラシーの重要性を強調し、読者に資産を築く方法やリスクを取ることの重要性について啓発しています。
ではなぜ、所謂マネーリテラシー本が海外駐在員にとって示唆に富む書籍となりえるのでしょうか。私がそう考える理由は2点あります。
理由①:金融資産防衛及び蓄財
駐在員は日本国内勤務者と比較すると海外駐在手当により所得水準が上がることは確かです。しかしながら海外駐在を長らく続けていくと、年々生活レベルが上がるどころか相対的に落ちてきているのを感じます。
理由としてはいくつか挙げられますが、以下のような要素が挙げられます。
過去数十年にわたって日本の給与水準が上がっていない。
インフレ率が日本の比ではない。
為替レートの影響を受けてしまう。
雇用体系の違い:職能給 vs 職務給。
金融資産以外の資産が漸減。
子供の教育費。
最近では日本でもよくニュースになっていますが、特に欧米諸国と比較して日本の給与水準は極めて低くなってきています。もちろん福利厚生や社会保障制度の違い等給与だけでは比較できない部分はあるのですが、アメリカの場合は同じ役割(同一労働)を担っている人材で日本の給与水準はアメリカの給与水準の2/3~1/2のレベルだと感じます。
そして給与水準だけではなく、役割範囲や同じ役割を担うためにかけている実質的な労力(時間や精神的負担)も2/3~1/2だと感じます。
(それが日本の生産性が低いと言われる所以なのかもしれません。)
つまり体感的な日米給与差は2~4倍という印象すら受けます。
なんとも悲しい状況ではありますが、特にコロナ禍以降はその傾向が加速してしまったように感じます。なぜなら現地社員はアメリカのインフレ率を考慮した昇給率になっているのに、駐在員は本社での社内等級昇格がない限りはインフレ率など関係なく月数千円~数万円しか昇給しないという状況が続いているからです。
そのように給与が上がらない中で歴史的なインフレが発生し、しかも急激な円安という不可抗力により現地通貨での給与所得が激減するというトリプルパンチ状態に置かれています。
そして海外駐在では実は失うものも多く、そのリスクヘッジのためにも金融資産が重要になってきます。
失うものの中で最も大きいと感じるのは(人との)つながり資産です。
両親親族をはじめとする家族(将来家族となりえる可能性も含めて)や社内外の人脈がそれらに当たります。それらの損失を金銭的に図ることはできませんが、海外駐在における見落とされがちなリスクだと感じています。
私自身、10年という駐在期間で孫たちの一番かわいい時期を両父母にほとんど見せてあげられなかったという罪悪感を感じています。ビジネスパーソンとしても社内に人脈を作ることができなかったことはこの先の社内キャリアに大きく影響するのでは…と不安を感じる部分もあります。実際、長期の海外駐在後に日本に帰ったら、社内に居場所がないというのはよく聞く話です。
そして日本人でありながら人格形成に多大な影響を与える幼少期をアメリカで過ごしてしまった子供たちが、いずれ日本に帰らなければならないということにも親としては不安を感じざるを得ません。
日本の教育や社会にどう頑張っても適応できなかった時に他の選択肢を取れるだけの経済力を有している必要があります。そこまでではなくても(駐在期間にもよりますが)そもそも日本の公教育に戻っていくこと自体が困難になるので、教育費が通常以上にかかることは覚悟しなければなりません。
そのようなことをしっかりと意識して駐在期間を設定している会社なのかどうかは、辞令を受ける前にしっかりと見極めた方が良いと感じます。
いずれにせよそのような金融資産以外の資産が駐在によりある程度犠牲になってしまうことはしっかりと認識しておいた方が良いかもしれません。得難い経験には大きな代償が伴います。
逆説的ではありますが、だからこそ金融資産を守って育てていくことは極めて重要だと感じています。
理由②:ビジネスシーンへの応用
本書は個人資産に対する投資指南本ではありますが、それはビジネスシーンでも応用可能なものだと考えています。
なぜなら突き詰めていくと事業運営も個人同様に資産を守って、育てていく活動そのものだからです。また職位が上がれば上がるほど、ビジネス=投資という要素が大きくなってくると感じています。
そして海外駐在員というのは、国内勤務時と比較して職位が上がることが多い(そうしなければ日本人を派遣する意味がない)ので、投資に関連した意思決定を求められることが多くなります。
その時に意思決定に足る情報を集めることは極めて重要ですが、その情報自体が特に海外では何なのかわからないということが多々起きます。
その時に本書のメインテーマであるマネーリテラシーが大いに役に立つと、自身の経験から強く感じます。
実際、投資に関する考え方や単語などほとんどが共通していますので、経理・財務知識に関して苦手意識を持っている方にとってはそれらの専門書で学ぶより圧倒的に理解しやすい内容だと感じます。
また本書では人のマネジメントについても学ぶことができます。
高学歴だが自分自身が働かねば価値を生み出せない著者の父親、低学歴だが他人とお金を働かせることで多くの価値を生み出す友人の父親。
全く正反対の父親の対比はまさにマネジメントの重要性そのものであり、自ら一生懸命働くことを美徳とする日本人にとってはより重要な感覚だと感じます。
前述したように、アメリカにおいては部下の方が人的リソースとしては自分自身より大きいということは多いだろうと思います。自分が一生懸命働くことも重要ですが、部下のアウトプットを最大化するということをより重要視しなければ会社としてのROI(Return on Investment)は上がってきません。
本書はなんとなく感じていたことを気付かせてくれた、私にとってはただの投資指南書という枠には収まらない書籍でした。
投資や経理・財務に対して得体のしれない恐怖心を抱えている方や、投資や海外駐在に挑戦してみたいとは思っているけどなかなか行動に移せない方にうってつけの書籍だと感じます。
是非ご一読を。
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