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台湾政府の合意形成プラットフォームvTaiwanについて

台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン氏が日本の様々なメディアに登場する中で台湾政府が推進するDigital Democracyに興味を持った。メディアでは彼女がトランスジェンダーである事や、3日でマスクマップを開発した事にスポットライトが当たりがちだが、個人的にはvTaiwanと呼ばれる合意形成プラットフォームを社会実装している点に興味を惹かれたので、初めてnoteを書いてみる事にした。

1. vTaiwanとは?

vTaiwanはシビックテックのコミュニティであるg0v(Gov Zero、台湾版Code for Japan)が構築・運営する合意形成プラットフォームである。2014年のひまわり運動の中で馬政権の要請に基づき始まった企画だ。このプラットフォームはpol.isをはじめとする様々なオープンソースのツールが使われている。

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非常にエコノミカルに開発されている一方、既にいくつかの法案でその有益性が証明されており、政策決定において存在感を示している。vTaiwan公式ページにUberの政策決定における活用例を発見したので以下抜粋。

Regulated Uber
vTaiwan hosted UberX case to discuss about Uber problem in Taiwan. More than 4000 participants crowd-sourced our meeting agenda for an open consultation meeting via 4 weeks of public survey on Pol.is. Uber agreed to vTaiwan’s coherent blended volition, and the administration pledged to ratify all the Pol.is consensus items into a new regulation

vTaiwanの大まかな仕組みは以下の通り。

1) 提案ステージ
オフライン・オンラインの討論を通じてまず議題を決める。スライドの共有はslideshare、FAQ編集はTypeformを用いる。

2) 意見ステージ
取り上げられた議題に関して特定個人が意見を投稿し、投稿された意見に対し賛成・反対・パスの投票を行う。この過程でPol.isのAIが多様な意見を持つ個人を複数の意見グループに分けていく。そして特定の意見グループが提言に対し感じる懸念点や、重視するポイントが可視化される。

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3) 反映ステージ
この段階では意思決定者同士が対面で討論を行う。この討論の様子はライブ配信され、HackPadを用いて議事録が作成される。ライブ配信では誰でもチャットで参加する事ができるため、高いレベルで透明性が担保される。

4) 批准ステージ
一連の議論を経て政府によるガイドラインの制定、政策策定、政府アナウンスメントなどのアウトプットが図られる。多くの場合は議論の過程で可視化された論点を織り込んだ形で発表される。

※上記内容はこちらからの引用です。

2. 既存のSNSとの違い

不特定多数が自由に投稿できる点ではSNSにも近いが、決定的に異なる部分は、vTaiwanが合意形成のサポートを目的に据えている点にある。twitterやFacebookなどのSNSでは共感を得やすい言葉(特にネガティブな言葉)、極端な意見、目立つ人の意見が脚光を浴びがちであり、合意よりはどちらかと言えば分断を産む事が問題視されている。
一方vTaiwanでは対立するグループ同士がより双方納得する合理的な提言に注目が集まる仕組みになっている。建設的な合意形成が図られる様、返信機能が無い点も特徴的だ。

どちらのプラットフォームも人間の承認欲求をガソリンにエンゲージメントを高める様エンジニアリングされている点は共通しているが、合意形成を目的とした場合異なるベクトルが働く。

3. プラットフォームの応用可能性

vTaiwanの累計ユーザー数は約20万人とまだまだ少ない。このプラットフォームが活用されるのはUberの合法化に伴う条例の制定など、一部議案に限られる。今後は国家を左右する様な重要議案にも適用していく計画だが、国民全員が抵抗感なく使える時代が来るまでには世代を跨ぐかもしれない。

個人的には企業の意思決定でも活用できる部分はあると考えている。企業は政治の世界と違い民主的に物事を決める必要がある訳では無いが、このプラットフォームの肝である合意形成の過程で生まれる「論点の絞り込み」こそ有用だと思っている。意見が対立するグループ同士が納得できる落とし所を探る際に何ヶ月も根回しと空虚な会議を繰り返すより、数週間で論点が絞り込まれた状態で意思決定者同士が会議に臨んだ方が、結果的に多数の納得感も得られるし時間の節約にもなるのでは無いだろうか?

以上、つらつらと書いてみましたが初noteでした!
乱筆乱文ご容赦ください。

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