#16 勝負師

 前回に引き続き、「APEX Legends」の話である。あとは少し、自分の好きな考え方についても少々(…?)。


 #15でも書いたが、APEXには様々なスキルを持つ個性的なキャラクターを自ら選んでプレイすることができる。キャラクターの数は2021年3月現在で16人。16「人」と書いたがロボット等の人外もいるので不適切かもしれない。とにかく、プレイヤーはこの16人の中から好きなキャラを選び、3人チームで協力して1位を目指していく。

 こういうシステムであるので、当然「いつも使うお気に入りのキャラクター」というのが各プレイヤーには存在する。流行りの言葉で表すならば「推し」だろうか。

 なぜそのキャラを「推す」のか、これは人によって実に多種多様だ。「強いから」という理由が大多数だろうか。他にも、「友達が○○だから俺は相性の良い□□使うぜ」とか、「見た目が好きだから」とか、「好きな人が使ってるから」とか。色んな理由があるから、この手のゲームでプレイヤー同士キャラの話をするのは一種の楽しみだ。


 そんなわけで、僕がAPEXでよく使うのは「ミラージュ」というキャラクターである。

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 本名はエリオット・ウィット。ノリの軽い、陽気な30のオッサンである。彼の能力はホログラムと光学迷彩を駆使した「撹乱戦術」。分身(デコイ)を作り出して敵を騙したり、自分を透明化(クローク)させて裏を突いたりする。

(↑キャラクター紹介動画。気になる人は是非)

 ミラージュの長所は「戦闘力の高さ」だ。作り出した分身(デコイ)は肉眼で本物と区別することが不可能であり、上手く操作されたデコイは敵からするとどれが本物か分からない。デコイを撃っても勿論本体にダメージは入らず、そのデコイを撃っている隙に本体から攻撃を受けて倒されてしまう。故に、このAPEXにおいては「1vs1の勝負では最強格」とまで言われる。敵を綺麗に欺き、戦況を切り抜ける姿はまさに「トリックスター」の二つ名の通り。

 ではミラージュはAPEXにおいて強いキャラクターなのかというと、実はそうではない。むしろ、弱いキャラの部類に入ってしまう。大きな理由として、ミラージュのスキルは「貢献度が低い」のである。このAPEX、他のキャラクターのスキルには「味方を一瞬で運べるポータルを作る」や「360°無敵のシールドを生成する」など、結構とんでもないスキルが存在する。一般的に強いスキルと呼ばれるのは上記のようなチーム3人に恩恵があるスキルであり、自分に関するスキルしか持たないミラージュはチームへの貢献度が低いと評されるのだ。


 ではそんな「弱キャラ」ミラージュを、なぜ好んで使っているのか。勿論、キャラクターとしてデザインも設定も好みなのだ。しかしもっと大きな理由、それはミラージュがこのゲームにもう一つの勝負、いわば「付加価値」を与えてくれるからである。


 APEXに限らず、銃ゲーでは基本的に撃ち合いの中で様々な駆け引きが存在する。それは銃の操作だけではなく、自分の位置取りだったり、撃つタイミングだったり。それらの総合的な結果が、撃ち合いの勝ち負けというわけだ。

 しかし、ミラージュを使った場合は、その撃ち合いに加えて「分身で敵を騙せるかどうか」という新たな「駆け引き」が加わる。「ここの曲がり角をこう曲がってあっちに走るように分身を出せば引っかかるだろう」とか、「この岩陰からあっちの方向に分身を走らせたら敵は撃ってくれるだろう」とか、そういう思考がこのキャラクターの操作には必要になる。

 「1つ行程が増えるから面倒じゃん」と思う人もいるだろう。その通りだ。この「もう一つの駆け引き」は無くてもゲームは成立するし、そもそも戦術とはより簡単・確実に敵を倒すために存在するものである。ここからは、自分の価値観の話になる。話が重くなってきた?気のせいだろう。

 自分は「『駆け引き』は勝負の醍醐味である」と考えている。ここでいう「勝負」とは、何もゲームに限った話ではない。スポーツや試験、人生における選択、ありとあらゆるものを意味する。ある程度のリスクを背負った状態で、大きいリターンを狙って確実性の無い所に飛びこむ。これが本当に楽しい。野球をやっていても1番楽しいのはキャッチャーで対戦打者と読み合いをする瞬間だし、それができれば正直試合の勝ち負けは比較的どうでもいい。テニスもそうだ。ここ1番、試合が大きく動くであろうそのポイントでする相手との駆け引きがゲームに勝つことより楽しい。よく「勝負に負けて試合に勝った」などというが、基本的に自分は「試合」に勝つことよりも「勝負」に勝ちたい。


 こういう「駆け引き」が上手い人のことを、人は「勝負師」と呼ぶ。


 僕は「勝負師」に憧れている。だってかっこいいから。失敗のリスクを背負って、それでもなお大胆にここ1番の大勝負を鮮やかにひっくり返す、そんな「勝負師」に自分もいつかなりたいと思っている。…誤解されそうなので先に言っておくが、別にギャンブラーになろうとは微塵も思っていない。そういう「考え方」ができる人間になりたい、という話だ。


 随分と壮大な話になってしまったが、つまりこれが僕が「ミラージュ」を好んで使っている理由である。なんでこんな話をしたかって?「なんでそんなゴミキャラ使ってんだよ」という周りからのプレッシャーに対する言い訳である。



 …いつかそいつら全員デコイで騙してやるからな。

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