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冬しぐれ抱きし犬の終の息

ふゆしぐれ いだきしいぬの ついのいき

 膀胱に腫瘍の見つかった先代のワンコは、当時9才でした。4ヶ月から飼い始めたトイプードル。息子はまだ幼稚園の時だと思います。余命1年と言われたのですが、随分と生きてくれました。どこに行くのも一緒だったので、幸せな家庭と最悪の家庭を見てきたと思います。

 先代の愛犬は、私が病気で休職したことはもちろん知ってるし、薬の副作用で暴れたことも知っています。そんな私の影響で妻は鬱になり、息子も大きな影響を受けたことも知っています。

 愛犬は、私が薬の副作用でまともに歩けないときのリハビリ相手でした。

 毎日自宅にいる私が散歩行くのですが、連れて行ってもらってた感じです。最初の頃、私がゆっくりしか歩けないことを察知した愛犬は私に合わせてゆっくりゆっくり。少し歩けるようになったときはスタスタ。それまでずっと散歩を妻任せにしていたこともありますが、愛犬が気持ちを察してくれているようで、とても嬉しかったことを覚えています。

 一緒に散歩で神社まで行き、愛犬長生き出来ますように。と、息子の合格祈願。そして妻が落ち着きますようにと毎日お祈り。心を落ちつかす場所となりました。行き帰りの途中で近所の人たちと会い、多くの人達と話をすることが増え、しょっちゅう声をかけていただくようになりました。これは愛犬のおかげです。

 また、神社でのお祈りとは神様へのお願いですが、実は自らに言い聞かせているものなのだと初めてわかりました。



 その愛犬が徐々に散歩途中で休むようになり、ウンチする力も弱って来て、最後の頃は最初から抱っこして散歩を続けていました。

 私が休職して1年が経つころ、妻の実母が認知症で施設に入り、すぐ入院となり面会に行っても喋れず。そして妻は「私には娘なんかおらんと」と言われたままで、実の母を亡くしました。妻は落ち込み泣き崩れます。が、その頃の私には支えてあげる力も心もなく、妻の症状は悪化しました。

 同じ頃に、愛犬が静かな時は、息をしているか確認するようになり、2週間前には散歩行かなくなり毎日病院に。最後は食べなくなり毎日点滴に。そして、病院で今日か明日と言われた翌朝。

 先代の愛犬は妻の腕に抱かれてゆっくりと、途切れながらも息をしてましたが最後少し大きく「ふ~っ」と最後の息をしました。まだ暗い冬の朝で11才9ヶ月でした。

「ありがとうね。よかったね」

 49日前のばあちゃんが一緒に天国へ連れて行ってくれたのです。ばあちゃんも愛犬のこと大好きでした。

 実の父母を亡くした時よりも涙が出ました。溢れ出るとはこういうものだと…最後まで愛犬に教えられました。


…保護犬おかづ…やって来たのは、その1年以上後です。



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