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90年代の名画紹介その①「櫻の園」※ネタバレあり。

【はじめに】

ちくわぶです。さきほど公開したばっかりなのですが、近いタイミングでネタがほかの方とかぶっていることに驚きました!!こんなコアな作品紹介が、こんなタイミングで…と。にらんだとおり、銘作なんですね^^私の稚拙な文章も併せて読んでいただけたら嬉しいです!(スミマセン!嬉しさと驚きで…♡)

紅葉シーズン真っ只中に、桜がモチーフの映画紹介は季節外れのようですが、今回は1990年公開の「櫻の園」(製作:ニュー・センチュリー・プロデューサーズ=サントリー、配給:アルゴプロジェクト)について書きたいと思います。本作はこの年の11月公開にも関わらず、他の作品を押しのけて第64回(1990年度)キネマ旬報ベスト・ワン受賞をはじめ各方面で高い評価を受け、興行的にも成功して当時の話題となった一作です。原作は吉田秋生の漫画、監督は中原俊。中島ひろ子やつみきみほなど、現在も活躍する女優を排出しました。

物語の舞台は地方の女子高、私立櫻華学園高校。創立記念式典・チェーホフの舞台劇「櫻の園」が開幕するまでの2時間が描かれています(ネタバレあり)。


開演当日、それぞれの朝。

午前8時少し前。誰もいない部室。舞台監督を務める2年生・城丸香織(宮澤美保)と大学生の彼氏(三上祐一)の逢引き(古!)シーンから物語は始まります。どうやら二人は朝帰り…。もうすぐみんな登校してきちゃうというのに、いいムードに浸っています。そこに演劇部部長で小間使い・ドゥニャーシャ役の志水由布子(中島ひろ子)がやってきます。すんでのところで彼氏を追い出し、事なきを得た城丸は、ふだんお堅い志水がパーマをかけてきたことに驚きます。しばらくして続々と登校してくる部員たち。志水のパーマ姿に、だれもが唖然とします。本人は「目覚めたのかな?」と満足げですが、すぐにみんなの話題は前夜に起きた「杉山事件」に移ります。3年生で若い従僕ヤーシャ役・杉山紀子(つみきみほ)が他校の生徒とともに喫茶店で喫煙したことが問題となっていたのです。顧問の若い女性教師・里美先生(岡本麗)が対応に追われるなか、主役・女主人ラネフスカヤ役の3年生、倉田知世子(白島靖代)が遅刻してきます。昨年男役で人気を博した倉田は、初の女役がうまく演じられず、スランプのまま当日を迎えていたのです。

櫻の園、中止になるかもしれない

杉山事件で臨時の職員会議が始まり、部員たちも気が気ではありません。部室でガヤガヤしている部員たちに倉田は職員会議で、櫻の園中止の話が出ていることを告げます。部室には不穏な空気が流れます。

しばらくして、バツが悪そうに登校してきた杉山と志水は進路指導室に呼び出されます。杉山と志水は、初めてお互いのことを話し、打ち解けます。「櫻の園が中止になったら暴動を起こすから、その時は手伝ってくれない?」という志水に、目を丸くしつつも「…いいですよ」とほほ笑む杉山はなんだか嬉しそうです。そして「パーマ、似合ってますね。倉田さんなんていってました?」と訊く杉山に、志水は動揺します…。

そんなやりとりをしているうちに、里美先生が部屋に入ってきて、一言「櫻の園、やるからね。それだけ、みんなに伝えて」と伝えます。今までより、凛々しい姿がそこにありました。

満開の桜の下、彼女たちの幕開け

志水は倉田を教室に呼び出し、倉田の衣装の胸元にレースの飾りを縫い付けます。「胸が大きいことをコンプレックスに思っているだろうから、アクセントになると思って」。倉田は「女役を演じることに自信が持てない。今からでも櫻の園が中止になればいいと思っている」と告げます。志水には倉田を励ます言葉が見つかりません。

そこからまた一騒動二騒動ありつつも、それぞれの思いを胸に、開幕の時刻は迫ってきます。静かな部室では、志水と倉田の二人が衣装に着替え、メイクをしています。「中止になんてなんない。覚悟決めよう」という志水の言葉に支えられ、倉田はやっと落ち着きを取り戻します。二人は部室の外にある中庭に出て、一緒に写真を撮ります。ふざけあった後、志水は倉田さんのことが好きだ、と告げます。精いっぱいの告白に戸惑いながらも、嬉しい、と返す倉田。その二人の姿を遠くからそっと見つめているのは、少し寂しげな杉山でした。

舞台裏に揃った部員たちは、幕開けを待ちます。杉山がふと、「志水さん、今日誕生日でしょう?確かそうだよね、4月14日」と口にします。そして、部員たちは口々におめでとう、といいハッピーバースデーを歌います。

そこに、開幕のベルが鳴り響きます-。

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計算されつくした緻密なカメラワーク、リアルな会話と役者の初々しい演技、そして目が眩むような満開の桜の映像美が、この映画の世界観を形作っています。大きな出来事はなにも起きないのに、不思議と引き込まれてしまう作品です。

主役の志水・倉田・杉山・城丸は、他の生徒より少しだけ早めに大人へと近づき、新米教師の里美先生もまた、一皮むけた頼れる教師へと成長します。

女子校にお決まりの百合っぽさもかなり大胆ながらも(決して否定はしていません!笑)、さっぱりとした爽やかな演出になっています。友情とも恋ともつかない、未分化な気持ち。ただこの瞬間だけの「好き」という気持ちがよく伝わってきます。

毎年誇らしげに咲く桜。そして散る桜。めまいがするほどの美しさと儚さは、青春映画ととても相性がよいようです。ぜひ動画配信サイトなどで「櫻の園」を鑑賞のうえ、来春の桜を想ってくださいね。












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