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朝歌舞伎統一53&54

体入を終えてそのお店の社長に入店しますとは言ったものの家に帰るとその気持ちは揺らいでいた

立川でホストをするという気持ちだけは変わらなかったのだが体験入店の時にNo.1と喧嘩してしまった事や意外にそのお店のレベルが高かった事が俺の気持ちを遮断しようとしていた

歌舞伎町よりはレベルが低いだろう
俺は歌舞伎町でやってたんだ
立川のホスト如き余裕だろ

俺の心と頭の中で天使と悪魔が戦っていた

歌舞伎町で俺をホストの世界に導いてくれたレオさん
俺はレオさんのお店で1番になる
レオさんに売れた姿を見せて恩返ししたい
その気持ちだけで毎日死に物狂いでやっていたから

そして俺の初めてと言っていいエースのRちゃん
彼女を助けれなかった罪悪感
でも彼女の気持ち、俺が歌舞伎町を辞めても俺の事を思ってくれていた思いを無駄にしたくなかった
立川で頑張っていればまたもしかしたらレオさんに会えるかもしれない
またあの優しいレオさんが俺を見つけてくれて連絡してくれるかもしれない
そしてまた一緒にレオさんの元で働けるかも知れない

俺がホストを続ける理由はそこにあった

当時俺は大学に在学していた
東京六大学の一つだ
大学を卒業して政治家になりたいと本気で思っていた

ホストしてるのに矛盾してるかもしれないがその夢、目標はあったのだ
ホストが忙しくてなかなか大学には行けてなかったが人知れず隙を見つけては勉強は欠かさずにしていた

元々高校生になるまでは勉強なんて殆どした事がなかったけれど
高校3年時に大学に行くと決めて勉強し始めてからは勉強が好きになった

ホストと両立は難しいし、甘えかもしれないけど両方の夢を叶えたいなと当時は思っていた

大学に近い八王子に住んでいたのもその為だ

立川のお店に入店しようか迷っている時

何気なくほすほすを見ていると八王子にもホストクラブがあるのに初めて気付いた
西東京は立川にしかないと思っていたけど当時6、7店舗八王子にもホストクラブがあったのだ

八王子もワンチャンありだな
家から近いし、ほすほすの写真見てる限り立川よりもレベルが低そうだ

俺はそう思い7店舗くらいあったお店の中から新規店として掲載されていた一つのお店を見つけた

完全新規グランドオープン!
ただいまオープニングメンバー募集中!
皆平等スタート!

これだ

今までは完成されたお店で1番後輩として入店する事しか考えてなかったから

新規店なら皆同じスタートライン
先輩も後輩も関係ない
気を使う必要もない

俺は元々先輩後輩とかの関係が嫌いだったから
これならやりやすいと思った

歌舞伎町でも先輩に気に入られる、面倒見てもらうのが凄く辛く大変だったから

今のホストクラブは先輩や上司がやたらと後輩に気をつかって面倒みるのが当たり前

先輩上司にかまって貰えないから辞めます
この店は上がよくないから辞めます

とか言うホスト、ホストクラブが普通の時代

当時は逆
先輩、お店に目をかけてもらえるように自分から必死に先輩上司の機嫌をとって、ヘルプしてプライベートでも気に入られるような努力をするのが当たり前だった

だから今の若いホスト達には違和感を感じざるを得ないのだがそれも時代の変化なのだろう

俺はそうやって生きてきた

その時代を

オープニングメンバーならそれも無い
みんな同期か

俺はその八王子の新規店に連絡をして次の日直ぐに体験面接に行く段取りを決めたのだ

そして体験面接当日

レオさんに貰ったスーツ
親父から貰った時計をバッチリ付けて
俺は八王子の繁華街の入り口に立っていた

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