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アメリカ ルート66を巡る旅 12 ニューメキシコ州 中部

山脈を避けサンタ・ロサから大きく北に迂回した旧ルート66は、サンタ・フェの町の南側を通りアルバカーキを目指します。皆さんもサンタ・フェという町の名前を聞いたことがあると思います。今回はこの街からスタートしましょう。

今回はニューメキシコ州のラス・ベガスからアルバカーキまでの200km、車で約2時間30分を紹介します。

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<Santa Fe>
ここは、アメリカができる遙か前からネイティブが町を築いていた場所です。プエブロ風と言われる土でできた建物があり、独特の文化を守っていることで有名です。
私がサンタ・フェについて知っているのは、このくらいでした。きっと京都のように町は発展しているのでしょうが、場所によっては昔の建物が残っているんだろうと思っていました。しかし、サンタ・フェに行ってみて私のイメージはいとも簡単に壊されたのです。
サンタ・フェの町に入ると、赤土で塗られたプエブロ風の建物(アドビ建築)が見えてきます。この建築スタイルは土を手で塗って壁にしているので直線がありません。全ての壁や屋根は微妙にゆがんでいるのです。自然界にはない「直線」がこの町にはないのです。とても落ち着ける街となっています。
暖かみのある建物に感動し、早く町の中心に行ってみたいという衝動にかられるのですが、車を走らせるとびっくりします。町の全ての建物がアドビ建築なのです!店、レストラン、ホテル、ガソリンスタンド、個人の家々...全てが統一されているのでした。これは、本当に驚きました。
日本の歴史的な都市では、確かにポツポツと歴史のある建物が残っていてそこが観光スポットになっています。しかしほとんどの建物は、鉄筋コンクリートだったりモルタルだったりの建物です。1階建てもあれば高層建築もあります。

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サンタ・フェは、町全てがアドビ建築で、高さ制限もあるようです。私は、車で町中や住宅地を走り回りましたが、全ての建物がアドビで、別の方式で建てられた建築物は見つけられませんでした。きっとサンタ・フェの町がきちんと都市計画を策定していて住人はそれを遵守しているのでしょう。
新しい建物は一番高いもので5階建がありました。これはきっと鉄筋で作られています。しかし、外観はアドビなのです。ここまでがんばって外観を作り上げている行政には感心させれました。
当然、世界中から観光客が押しよせ、町はものすごい数の観光客です。地方都市の観光ビジネスのお手本のような町ですが、よく考えてみると、ヨーロッパの都市も、サンタ・フェと同じように歴史と景観を大切にしているんだと気づきました。そういう町には人も集まる、と。
京都を代表する日本のいけてない観光地の役人達も少しはサンタ・フェを見習って欲しいと思いました。

<コラム:ニューメキシコ州の魅力>
オクラホマ・シティを過ぎ、テキサス州、ニューメキシコ州を横断してくると、アメリカらしい360度の大パノラマが楽しめます。そして、ルート66沿いには小さな町がポツポツと点在しています。そこには、小さいながら町独自の文化や風習があることがわかります。訪れる町自体の小ささは変わらないのですが、西に行くに従い町に明るさがあるように感じました。おそらく日差しや土の色の関係もあるのでしょうが、町の建物やサインのデザインがPOPになっていき、住んでいる人々もネイティブやメキシカンの血が入り、我々日本人にはどこかホッとするのかもしれません。
ニューメキシコ州は、走ってみると旅行者には楽しめる地であることがわかりました。高原地帯のパノラマ、何でも揃うアルバカーキ、夢の中に来たようなサンタ・フェ、西部劇のような町、ゴーストタウン、プエブロ文化....
誕生してまだ日が浅いアメリカなのに、建国以前からある文化がニューメキシコ州を彩っています。そして、その文化が移民にも受け継がれているのです。

<Albuquerque>
サンタ・フェから1時間ほど南に進むと、アルバカーキに到着します。アルバカーキは、ニューメキシコ州最大の街です。ルート66を辿るとオクラホマ・シティ以来の大都市となります。ここは天災がない町として有名です。1年中晴れていて、竜巻や地震がないのです。かつては原爆の開発などが行われていましたが、現在は映画産業とIT産業の町に生まれ変わっています。ルート66沿いには、60年代のアルバカーキの町が復元され、若者で賑わっています。ここにはバーもあり洒落たレストラン、高級ホテルもあります。
街には大学がいくつかあり若者がたくさん住んでいます。これにより若々しいイメージがあります。街としてもそれなりの規模なのでホテル、ガソリンスタンド、レストランなどが充実しているので、この街で宿泊するのが良いと思います。
この先の次の大都市は、はるか先のロサンゼルスなのです。

映画のロケ地
この街、実は映画の撮影地としても人気があります。「オールドマン」などハリウッド映画が撮影されていて立派なスタジオもあります。「ハイスクール・ミュージカル」の舞台もアルバカーキです。現在アルバカーキは映画TV産業に対し特別な税制措置をとっています。撮影で使った制作費の中でアルバカーキで支払った税金を戻しているのです。100億円規模の映画の消費税はアメリカでは10億円程度です。これが戻ってくると言うことは、単純に税金分の節約になると言うことです。現在おおくのハリウッド映画が、ロサンゼルスではなくアルバカーキで撮影されているのはこういうからくりがあるのです。
政府は、この税制措置で何を得ているのでしょう?まず雇用があります。映画産業が定期的にアルバカーキを使うことでスタッフの雇用がうまれます。これにより失業率が減るのです。次にロサンゼルスから訪れるスタッフ、キャストが映画制作以外で落とすお金もかなりの量になるのです。これが町の商業を潤します。このように税で損して、その他で大きく理を取っているのです。
日本では、各町にロケーションボックスなるものができていますが、内情はただの田舎のミーハー集団で、映画産業にはメリットがありません。こういう本来の行政のシステムを日本は何故学ばないのか不思議です。
アルバカーキを歩いていると、映画撮影に出会えたりしますし、アルバカーキで撮影された映画のロケ地巡りをするのも楽しいです。ネットにはアルバカーキのロケ地マップがあるので、映画ロケ地巡りも楽しむことができます。

Old Town
ルート66の以降は大都市にはあまり残っていないというルールは、この街にも当てはまります。しかしオールド・タウンには、古き良きアメリカを模した懐かしい街が広がっています。これはほとんどが再開発されたものです。メキシコの文化と若者文化がミックスした独特の雰囲気は観光客にも楽しめますし、我々アジア人も歓迎してくれます。旧ルート66沿いは、「ルート66ダイナー」とか「ルート66モーテル」という名の観光目的の新しい商業施設がかなりあります。歴史的なものだと、Royal Motor Inn、 Town Lodge Motel、 Aztec Motelなどが残っています。
夜はバーなども賑わうので、近くのホテルに宿を取り、歩いて飲みに行くのも楽しいでしょう。

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Night View of Albuqurque
アルバカーキの夜景は、アメリカで一番だという人がいる程とても美しいです。それはニューヨークのものでもないしグリフィス・パークから見るロサンゼルスのものとも違います。星を鏤めたような横に広い夜景です。町の周りには何もないので、夜景が余計に引き立っているのです。この夜景を見るには、町の西側がベストポジションです。州間高速40号線は、アルバカーキを出ると緩やかに高度を上げていきます。この途中から見る夜景が最も美しいです。

<コラム:冬のルート66>
12月に私がニューメキシコを旅した時は、このあたりで雪に見舞われました。サンタ・ロサを過ぎ、州間高速40号線を一気に西に向かった時の経験です。
モリアーティの街を過ぎ、道になにやら白い粉が落ちているなあと思っていたらもの凄い勢いで雪が降ってきます。日本だったら道路は閉鎖されるでしょう。しかしアメリカでは特に規制もなく大型トラックがかなりのスピードで走っています。セディロの街を過ぎると峠道に差し掛かります。峠道を進むと、パワーのない車がスリップしています。私は幸いSUVのレンタカーを借りていたので、なんとか事故を起こさず走り続けていました。そういう間にどんどん標高は上がっていきます。路肩にはスリップして車線を外れた事故車が無数に現れます。近くに町はないようですが、パトカーが事故車両の脇に止まっています。この時期、毎日何台のパトカーが出動しているのでしょう。そして何人の警察官が常駐しているんでしょう。とにかく次から次へと事故車が見えてきます。その殆どが単独事故です。複数の車両が衝突するケースは少ないようでした。事故が多発している光景を見て、車のスピードは一気に落ちます。そして渋滞が発生しました。雪の降る山の中で、渋滞すると、なんとなく嫌な雰囲気が漂います。どのドライバーも一刻も早くこの場を通り過ぎたいという焦りとスピードを出すと事故を起こす確率がとても高いというジレンマに陥っているのです。
そして1時間くらいすると道路は下り坂となり、だんだん標高が下がっていきました。それに伴い雪の量も少なくなっていきました。ただ、この下り坂が結構険しく、油断すると車ごと谷底に落ちてしまいます。ここでスリップしたら命はないでしょう。慎重に慎重にエンジンブレーキを使いながら坂を下っていきました。しばらくするとアルバカーキの明かりが見えてきました。

次回は、アルバカーキを去りニューメキシコ州とアリゾナ州の州境にあるギャラップまでを旅します。

お楽しみに!

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