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アメリカ ルート66を巡る旅 17 カリフォルニア州 東部

ルート66を走る旅、いよいよ最後の州カリフォルニア州に入ります。思い返せばシカゴを出発してイリノイ州、ミズーリ州、カンザス州、オクラホマ州、テキサス州、ニューメキシコ州、そしてアリゾナ州と7州を走ってきて、それぞれ異なる景色と文化を見てきました。

カリフォルニア州の旧ルート66

カリフォルニアには入りましたが、皆さんがイメージする西海岸に辿り着くまでは、これから広大なモハベ砂漠を超えていかなくてはなりません。今回は、モハべ砂漠を中心に紹介します。NeedlesからVictorvilleまでです。地図の右端から左に進み下(南)に下がったあたりまでとなります。美しいサンタモニカまではまだまだ距離があります。

小説「怒りの葡萄」では、モハべ砂漠を通ることで亡くなる方がかなりいました。主人公の家族でも死者が出ました。夢のカリフォルニアまではもう少しのところで息絶えてしまうのです。それほど過酷で広大な砂漠です。現在は、高性能な車で安全に走り切ることができますが、途中でガス欠にならないよう気をつけなければなりません。

今回紹介するニードルズからビクタービルまでは、ルート66は州間高速40号線と平行に走ったり塗りつぶされたりしています。地図を見るととてもシンプルなので、基本は40号を使いつつ、かつての宿場町があれば、高速を降りて旧道を走るのがいいでしょう。

ニードルズを出て20分程走ると95という降り口があります。ここで降り95号を北上すると旧ルート66(現在はGoffs Rd.)との交差点があります。66号と並行して鉄道が走っているので、わかりやすいです。Goffs Rd.は66という番号がついています。

何もないゴフスの街

<Goffs>
何もない町です。でもこの街は絵になります。まさにモハベ砂漠に残されたかつての繁栄を写真に収めることができます。打ち捨てられた古い建物がいくつか立っています。古き良きアメリカの街が廃墟化された砂漠の景色となります。この辺り、人がいないので治安も悪くないのですが、夜行くのは避けた方が良いでしょう。

ゴフスを出て66を西に走ると州間高速40号線と交差します。66号はNational Trails Hwyという名前になります。しばらく行くと何もないChemblessという町を通り過ぎAmboyに到着します。

ルート66で有名なROYs

<Amboy>
ここには人が住んでいます。小さいですが町となっています。観光案内所もあるのです。この砂漠のオアシスにROY'Sという有名なガソリンスタンドとカフェがあります。映画やドラマにも登場する場所です。看板のデザインが有名なので、写真を見ると記憶にある人もいるのではないでしょうか。まさに撮影ポイントです。この看板は夜ネオン管に光が灯った景色も美しいのですが、近くには宿泊施設はありません。
ここでは買い物をしたりガソリンを入れるといいでしょう。ただ、よく休業しています。私はここでガソリンを入れられると思い、寄ってみたところ、ガソリンが売切れていて、次のガソリンスタンドまで辿り着けないかも、という恐怖な体験をしたことがあります。くれぐれもこの辺りではガソリンは常に満タンを心がけましょう。

アンボイを過ぎると66は州間高速40号と並行して走ります。

映画で有名な「バグダッド・カフェ」

<Bagdad Cafe>
この辺りで一番の観光地となったバグダッド・カフェ。ひたすら走っていると、周りに何もない場所にポツンと1軒のカフェが建っています。ここが「バグダッド・カフェ」です。本来ならば潰れてしまう店ですが、映画「バグダッド・カフェ」で舞台になったことで世界中からファンがここを訪れ経営が成り立っています。建物は映画と同じです、ただ、映画に出てきた隣のモーテルは廃墟になっています。映画のポスターにもなった給水塔は、店の裏側に転がされています。タンクをよく見ると「Bagdad Cafe」という文字がうっすらと確認できます。
この場所は実はバクダットの街からは少し離れていて、元々名称も違いましたが、映画が撮影されたことでオーナーが店名を変更して維持しています。映画公開からかなりの年月が経ちますが、今でもドイツ人、イギリス人、日本人の観光客がよく来るそうです。店員さんは何故この3カ国から客が途絶えないのか理由がわからないと言ってました。
このあたりは砂漠なので、普段は殆ど雨が降らないのですが、私が行ったときは雷を伴う豪雨が降っていました。そして、バグダッド・カフェに到着すると、カフェが営業していませんでした。でも店の前に車を止め店内をのぞくと、店員さんが出てきて、先ほどの雷で停電になったと嘆いていました。店に入れてくださるということで中に入ると、コーヒーが保温機の上で暖かい状態でした。そのちょっとぬるいコーヒーを頂き、しばしの休息です。店には、ここを訪れた人たちのダイアリーが残されています。以前来たときに書いておいたメモを探してみました。そして新たに記録を残しました。そんなことをしていると電気が復活。店員さんは、すぐにジュークボックスにお金を入れ「Calling You」を流してくれました。こういう気配りがアメリカの田舎旅行を楽しくさせてくれます。

<Newberry Springs >
Rt40を東に走るとDaggettという街のあたりから平行して旧ルート66が残っています。勿論走ることができます。ルート66が栄えた頃は、道沿いにも数マイルごとに宿場町が形成され、そこにはガソリンスタンドやレストラン、モーテルなどがあったそうです。しかし、すぐ隣に高速道路ができたこと、そして車の性能がアップしたことで、1日に走る距離が伸び、人々はかつての宿場町を通り過ぎるようになりました。
旧ルート66沿いには、かつて街があっただろう面影が点在しています。看板の跡、建物があった気配、コンクリートの固まりなどが見受けられます。

ゴーストタウンという名のテーマパーク

<Calico Ghost Town>
ルート66から外れますが、有名な観光地なので紹介します。
バーストゥの手前、北の山にCalicoという文字が見えます。まるで京都の大文字焼のようですが、ここにはゴーストタウンがあります。かつて西部劇の時代に作られた街なのですが、現在は観光地化されています。入場料を払うと西部劇のセットのような街を見ることができます。蒸気機関車が走っていて西武開拓時代を再現しています。
カリフォルニアを車で走っていると本当のゴーストタウンがあります。これはリアルな廃墟ですが、ここは観光地です。どちらが好きかは人によって分かれると思います。

バーストウの街

<Barstow>
久しぶりの大きな街です。モハベ砂漠にはいくつもの宿場町があったのですが、40号が開通したことで、ほとんどの町は廃れてしまいました。しかしここバーストウは繁栄が続いています。理由はロサンゼルスとラスベガスの中間ということだからです。この2大都市を行き来する多くのドライバーたちがこの街にお金を落としていきます。バーストウにはたくさんのガソリンスタンド、ファーストフード、モーテルがあります。中にはここで一泊する人もいます。ただ、ここはあくまで経由地です。街には見るべきものはなく、ただチェーン展開しているモーテルやレストランがあるだけです。
わざわざ立ち止まる必要はないのですが、この先しばらく何もないので、給油とトイレのために必ず止まりましょう。
ここバーストウは、映画撮影がよく行われます。有名なところでは「キル・ビル」の教会のシーンや、「硫黄島からの手紙」の戦闘シーン(海は合成です)などです。撮影が行われている時はスタッフがホテルを占拠して予約が取りにくくなります。俳優やプロデューサーは、毎日ロサンゼルスまでヘリコプターやリムジンで帰ってしまうので、この街で有名人を見かけることはないそうです。

旧ルート66は、バーストウから南西に走っています。このバーストウから先の区間は、いい感じで古き良きアメリカが残っています。急ぐ方は並行して走る州間高速15号を利用するといいでしょう。旧道沿いには小さいですがルート66博物館があります。かつて西へ向かった人々が宿をとった街ではかつて賑わっていた頃の写真を見ることができます。
旧ルート66は、ここから次の街ビクタービルまで川と鉄道と平行に進みます。なんとものどかな景色です。そして道にはあの「Route 66」というマークが書かれています。

バーストーとビクタービルの間のルート66は、のんびりした旧道

<Victorville>
ビクタービルは行く度に大きくなっている町です。おそらくロサンゼルス商圏が膨らんで、この街に住む人が増え続けるのでしょう。ここまでくると大都市圏の郊外の街という雰囲気がします。ここから先は段々と人口が増え、郊外の街が段々と大きくなりロサンゼルスの高層ビル群が見えてくるのではないかと想像できます。

ビクタービルにもルート66博物館があります

小説「怒りの葡萄」では、この辺りが主人公達のゴールだったのではないでしょうか。かつては果樹園が広がっていたはずです。カンザスあたりのダストボウルに苦しむ農民達は、家財道具を車に乗せ夢の国カリフォルニアを目指し、この辺りで定住したり、さらに西に向かったり大都会ロサンゼルスに飲みこまれたりしたのだと思います。あの小説の家族がその後、どうなったのか、そんなことを想像してしまう街です。

旧ルート66は、この辺りまでが高地となります。アルバカーキを過ぎて高度を上げてから続いた高地がやっと終わります。ここから峠となり、かなり長いこと坂を下っていくのです。現在は州間高速15号という高速になっているので、ここは高速で進みます。結構険しい山を降り切ると、ロサンゼルスの広い平らな土地が現れます。摩天楼が見えるのはまだまだ先です。



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