見出し画像

老いを愛でる

人は一生のうちに何度開腹手術というものを体験するのだろうか。

母の人生の半分は、開腹手術して体力つけて元気になってきたらまた開腹手術を受けての繰り返し。だから当然人よりも内臓の量がかなり少ない。

そしてまた、腫瘍ができた。

それは子どもの体重ですか?くらいの重さしかなく、骨と皮になってしまっている老婆に、医者はまたもや開腹手術を勧める。手術をすれば寿命が伸びるよ、と。

人生の半分以上を病気と共に生きている母にとって、自分の身体に健やかさが感じられていた時は殆どない。手術のたびに、変化してしまった身体との付き合い方に翻弄されて、歯を食いしばるように生きてきている母に対して、医師は、「切ればまた元気になれる」と笑顔で言う。あんな言われ方をしたら、健康を臨む患者は手術に希望を持ってしまうじゃないか。

先生、頼むからそんなに簡単に言わないでよ。術後のしんどい身体を自分のものにするまでの辛さをもう少し想像してよ。ましてや、目の前のこの人は老いているよ。先生、お願いだから簡単に言わないでよ。

転倒してから、少しづつ微妙に調子を崩し出している母だけど、わたしはあきらめるつもりはない。何か他に手立てがあるのではないか、と思っている。それが自然療法でも代替療法でも、怪しいものでも、母の身体の健やかさを少しでも引き出すことができるなら、なんでも試してみたら何かが変わるんじゃないかと思っている。

親の人生の幕引きを感じながら、共に過ごすことにわたしは耐えられるのかな。そして、いつまでも母と一緒にいたいと、ただそれだけを願っている父を支えることができるのかな。

みんなはどうやっているのかな



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?