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恵方巻きと猫


恵方巻きを買いに普段あまり行かないスーパーマーケットに行った。
数種類の美味しそうな恵方巻きが並んでいて、これとそれにするか?いやでもあっちの方が美味しそうだしと数分悩み、結局無難なのを2本とキンパを1本、カゴに入れた。
他にも必要な食材をカゴに入れ、初めて使うPayPayに少しドキドキしながら会計を終え、店を後にする。

店を出てすぐ目の前にある昔から変わってない古民家に少しホッとし、
長い坂を下る。昔とすっかり変わった家が並ぶ道に少し寂しさを感じた。
しばらくくだると神社に続く道が出てきて、気づいたら神社に足が向かっていた。

舗装されていない道を通ると、参道の石階が出てきた。かなり急なので手すりに捕まっていないと登れない。
一段ずつゆっくり登っていると、野良猫が別にある石階から降りてくるのが見えた。対して猫の扱いもよくわからないくせに猫派を名乗っている私は当然足が止まる。
野良猫は一回私の方へチラッと目を見やり、フンっと澄ました顔でさっき私が歩いていた道へ消えていった。どこか足が悪いのだろうか、引き摺るような歩き方をしていた。

段差が急で少しバランスの取りづらい石階をやっと登り終え姿を見せた神社は小さく、伽藍堂としている。
お賽銭箱もなかったので戸惑ってしまったが、そのままお参りして帰ることにした。
SNS等を見ていると、ある日思い立って神社に行ってお参りすると不思議な力が働いてなにか(運?)がよくなる、というような話を耳にするが、こう自分から出してしまっているのでそんなことは起こらないだろうなと今、書いてて思っている。

またあの急な石階を降りて帰路につこうとすると、近くの畑からまた別の野良猫が2匹現れた。普段、野良猫たちはあまり私に近づかないのに、近づいてくるのは、さっき買ってきた恵方巻きがいい匂いなのだろう。
でもごめんね、これは私の夜ご飯なんだ、猫ちゃんたちにはあげられないんだ。
ごめんねと手を振ってからそそくさと歩いて帰った。ゆっくり歩いていたら家まで着いてきそうだったから。それぐらい2匹の野良猫たちはお腹が空いてそうだった。ごめんね。

後ろ髪に引かれる思いでやっとこさ家に帰り、ストーブをつけその温かさに溶けていると、すっかり野良猫ちゃんのことは頭から抜け落ちていた。時に人間は残酷だなと思う。自分さえ良ければいいのだから。

恵方巻きを両手で掴んでワイルドに喰らいつくことはせず切って食べる私と、
あの後野良猫が何か食べ、どこで眠りについているのか、そんなことを自分のベッドで考えているだけの私。
どっちが残酷であろうか。

明日も神社に行ったらあの野良猫ちゃんに会えるかな




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