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コーヒーはもう冷めていて

   私はコーヒーがあまり得意ではない。(ミルクコーヒーは何とかだけどブラックなんてもってのほか)
   だけど、たまに見栄を張って私の手には大きすぎるマグカップにコーヒーを入れる日がある。もちろんブラックではなく、ミルクと少しの砂糖入り。

   コーヒーの苦味にまだ慣れず、やっぱりコーヒー入れなきゃよかったと思うけど、ミルクと混ざって薄まった茶色いその見栄を無かったことにしたくて、私は胃に流し込む。
   やっぱり無理だ、と私はマグカップを机の上に置いた。

   コーヒーが飲めるようになったら大人だよ
飲めないならまだ子供だね(by母)

   日本中の図書館や本屋を探しても、コーヒーが飲めたら大人、なんていう文献はどこにも存在してないはずである。それなのに何故、コーヒーが飲めたら大人ってことになったのだろうか。不思議だ。

   と、そのようなことを考えながら、自分の部屋の窓を開け少し冷たくなった風に当たりながら電線に座っているカラスの影を数える。

有ったことを無かったことには出来ないのだ。自分の吐き出した言葉は飲み込めないのと同じように、その見栄はなかったことには出来ない。

   なんだか悔しくなって、マグカップを手に取った。
マグカップの半分くらいあるコーヒーはたぷんとゆれたが、湯気は立たない。そのまま残りを飲み込むが、マグカップの底には茶色い見栄がこびりついてるのだった。

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