タイミーに入社し、10ヶ月でやったこと
タイミーの横田です。
2024年2月に入社から10ヶ月が経過しました。
Timee Product Advent Calendar 2024の4日目の記事として、入社してからの振り返りをお届けします。入社時に出した記事をありがたいことに多くの方に読んでいただいたので、1年目にどうしたかを書いてみます。
自分の役割
タイミーには、プロダクトデザイン・コミュニケーションデザインの2つのグループが存在しています。私の最初の役割は、プロダクトデザイングループの組織化です。
組織化というと、メンバーをとにかくまとめる!という印象があります。個人的にはこれを人員・プロセス・仕組みなど、さまざまな形態をとるOrgan(器官)をうまく結びつけて(ないものはつくり)、上位組織に貢献できる状態を構築することであると考えています。その状態要件には、戦略適合性、相互作用性、成長性、持続可能性などがあると思います。
また、ベンチャーマネージャーの責務には、EVeMの長村さんの記事、「執行・活用・伸張・連携」をよく参照しています。フェーズ認識によって必要なアクションの重み付けはあれど、自分の行動バランスをよく点検するためにこの枠組みを参照しています。
これら4つの要素をプロダクトデザイン組織の文脈で読み替えると、次のようなトピックが浮かびあがってきます。
執行:プロダクト価値向上の主導
各デザイナーの価値貢献の定義
プロダクト体験価値の向上
デザインシステムの確立をはじめとした生産性
活用:プロダクトデザイナーの力を最大限に引き出す
適切な活躍機会を提供するための配置とサポート
プロジェクトの創出
伸張:組織とメンバーの継続的な成長
採用を通じたリソース・ケイパビリティの獲得
デザイナーのスキル向上機会
知見の蓄積と共有の仕組み
連携:部門を超えた価値創造
顕在的な協働機会の改善と発展
潜在的な協働機会の探索
1年目に見えている範囲だと、これらに対してフェーズに応じたプライオリティをつけて、相互作用するように取り組んでいくことになります。
それでは、いくつかのトピックにわけて取り組みをご紹介します。
1 | 共通言語をつくる
タイミーのプロダクトデザイナーは、それぞれの開発チーム(Squad)にembedされながら活動しています。開発チームの目指すものの性質や連携スタイルは多様であるため、あるべきデザイナーのふるまいもその状況の相対性の中で決まっていきます。
それでありながら、1つのプロダクト組織の中でどのようにプラクティスを推進するかを考える必要がありました。このため、プロダクトデザイナーの行動と成果のモデルを定義しました。自社の特性に応じてかなりジェネラリスト志向な構成です。
このモデルは、デザイナー間での目線を合わせることはもとより、採用やオンボーディングにおいて期待値を伝達したり、PM職とデザイナーでの読み合わせのたたき台にしたりと幅広く活用しています。
期末にあたってはモデルをもとにした他職種へのサーベイをおこないました。 その中では、他職種からの期待と実感の差分を把握したり、デザイナーが想定していた結果と実態の差分を把握したりできます。
そもそもこのモデルの体現度が純粋に事業成果への貢献として認識できるかは検証が必要ですが、長期間運用できるジェネラルな指標を持っておくことは重要だと思います。
2 | 生産基盤を確立する
タイミーでは、iOS/Androidのワーカー向けネイティブアプリ、事業者向けWeb管理画面を開発しています。前期は序盤からモバイル向けのデザインシステムやデザイントークンを0から設計しました。現在は、体系的かつ再利用性のあるUI設計と開発が、デザイナー・エンジニアによっておこなわれるようになりました。
さらに、少人数でスケーラブルな運用をするため、デザインから実装までのプロセスのコスト増を最小限にする必要がありました。大小さまざまな運用基盤の構築により、手作業による更新ミスを排除し、プラットフォーム間の一貫性を保つことに役立っています。これらは、DesignDataOpsという記事にしました。
デザインシステムはまだ実装反映の序盤ですが、デザインの質的向上と再利用性実現のための構造を整えられたように思います。各プラットフォームのエンジニアには日々お世話になっています。
3 | 他社との合同勉強会
インハウスでのデザイナーの課題は、インプットが自社でのプロセスや知見にとじてしまいがちであることです。そのため、他社の同規模のデザインチームと合同で勉強会を継続的におこなっています。第1弾はダイニーさん、続いてミニモさん、ファインディさん、ブックリスタさんと実施させていただきました。ファインディさんはDesignship 2024でもお隣の勝手知ったる仲になっていました。
ダイニーさんとはそれぞれ記事を出していますので、こちらで雰囲気をご覧ください。
ある回のアンケートでは非常に満足度も高かったので、1.5ヶ月に1度のペースで継続的におこなっていきたいです。
企画当初は純粋に他社のデザイナーの取り組みを吸収することが目的でしたが、アンケートでは「自社のプロセスを客観的に見つめ直す」をはじめ、自分たちの認識に役に立つとした項目の回答が多くありました。
メンバー間で「〇〇さんがいっていたあれ」というように共通言語ができたり、よい取り組みを一緒に聞くことで見直しの機運につながったりと、よい影響を感じています。
ご一緒させていただいたみなさま、ありがとうございます(そして、次回をどこかで!)。
4 | 外部に発信する
当初プロダクトデザイン組織はほとんど社外にアウトプットがなかったこともあり、だいぶミステリアスな存在だったのではないかと思います。
長期的に仲間を増やすために、個人的には発信に相当コミットしてきました。いくつかのnoteに加えて半年で登壇6件・個人取材3件と、毎月アウトプットしていました。お声がけいただいたみなさま、見ていただいたみなさま、ありがとうございました。
発信について体感したことがいくつかあります。
入社して発信する材料は、社内での取り組みがかたちになるまでの時間が必要であること。
短期的な成果は見えづらくとも、ある程度発信しないとはじまらない。特に採用の面では、今思えば採用活動自体よりも優先度を割いてもよかった。
外部向けに言語化する作業は、経験や知識を形式化するプロセスとして重要であること。
もう一つ、とっておきのちょっとした経験則がありますが、直接お話しするネタにとっておきます。
一方で、ほとんど自分が発信していた事実もあり、採用ファネルへのバランスのよい訴求には課題がありました。具体的には、現場で動いていることやどんなデザイナーがいるかの発信に改善の余地があり、カジュアル面談でよく尋ねられます。実際に、デザイナーの活動価値の総量は私のやっていることよりも、各メンバーの仕事のほうがずっと大きいので、そちらも発信できたらと思います。
来期は、学びの形式化の手段として他のデザイナーも巻き込んでいきたいです。Advent Calendarでも多く投稿される予定ですので、お楽しみに。
5 | 採用活動
最も時間を割いたのは採用活動でした。
入社時は、プロダクト組織の成長に対してデザイナーの数が追いついていませんでした。そのため、デザイナーは複数の開発チームを掛け持ちせざるを得ない状況でした。
複数名の採用計画を前にした状況では、求める人材像の定義や選考基準の策定、活躍機会の想定を洗練させていくことは、思っていた以上に難しかったです。はじめから優先度高くコミットしていましたが、先ほど書いたとおり、社内での取り組み→形式化と発信の段取りを経てからのほうがスムーズだったと思います。
結果的に、今後入社予定の方を含めて複数の心強い仲間が増えてくれています。ケイパビリティの多様化はもとより、現在は適正に近い配置で、より深い文脈理解にもとづいた探索やアウトプットにチャレンジができるようになってきました。プロダクト組織の成長についていくことで精一杯ですが、主体的に戦略貢献できる組織デザインを模索していきたいと考えています。
採用活動の中では、カジュアル面談では多くの方とお話しさせていただきました。(現在は私が単独で担っているため役得ですが)他社のデザイナーとお話しする時間は非常に学びが多いです。
引き続き、長期的にキャリア検討している方を含め、多くのデザイナーと接点を持ち続けたいです。
6 | コミュニケーションデザインとの協働
よく面談で聞かれることの一つに、コミュニケーションデザイナーとの協働があります。
プロダクトデザイングループとコミュニケーションデザイングループは隣の部署にありますが、プロセスやケイパビリティが近いようで異なることから、協働機会は個別にはありつつも散発的でした。
私自身は、タイミーではブランド体験とプロダクト体験は一体としてつくっていくべきであるという思いが強いです。ゆくゆく一緒に体験づくりをしていく範囲を増やしていきたいと考えています。それは、体験と認識、プロダクトとブランドが相互にフィードバックするからであり、それを接続可能なのがデザインの職能だからです。
これまでも、Emotional Designの枠組みでプロダクトに情緒的体験をとりいれる取り組みや、プロダクト開発チームへのコミュニケーションデザイナーの参加など、さまざまな点で連携事例を持つことができました。また、Designship 2024では共同でブース企画をおこないました。
今期からは従来隔週であった定例を、Design All Handsとしてリニューアルします。この会の目的は「トランザクティブメモリーの活性と活用」とおいています。トランザクティブメモリーとは、誰が何を知っているか(Who knows What)」という認識を指します。
全員の活動範囲の総和は膨大で、そのすべてを共有することはできません。私としては、そうした断片的な情報が連携を生むきっかけづくりを推進していきたいと思います。
7 | メンバーの連携の活性化
最後に、私ではなくメンバーがメインのトピックですが、デザイナー一人ひとりの動きも変わってきました。
デザイナーはそれぞれ異なる開発チームに所属しており、別々のタイムラインで活動していましたが、相互の協力機会も増えてきました。いうまでもなく、ここまでの取り組みは自分一人ではほとんど実態をつくることができません。組織的アジェンダ各メンバーの連携の媒介になってきました。
気がつけば相互のナレッジシェア、輪読会、デザインレビュー、隔週の振り返りなど、さまざまなタッチポイントが生まれてきました(書き出してみるとリッチになってきたのでそろそろ選択と集中が必要そうです)。
基本的な整合性確保ができてきたことはもとより、他の開発チームでのプラクティスをやりとりする場面が多くなったり、横断的な関心にもとづく検討プロジェクトが立ち上がったりするようになってきました。
これらは重要でありつつも、まだ規模化による複雑性をカバーできてきた段階だと思います。各開発チームに知見とインスピレーションを継続的に提供し、具体的によいプロダクト体験・ビジネス成果の実現につながる取り組みにしていきたいです。チームでよいやり方を模索していきます。
「一気にやる」だった1年目
タイミーに入社するときの面接で「仕事をする上でのこだわりはある?」という質問に、「はじめに一気にやること」と答えたのを思い出しました(プロダクトづくりのスタンスと異なる部分があります)。
なぜなら、組織化における諸要素は、時間的遅れを伴いながら複雑に相互作用することで成長するからです。特定の一要素にコミットすると、それだけ目指したい状態へのタイムラインが長くなってしまいます。
リソースがない中で、メリハリを持ちつつ「なければつくる(あるいは持ってくる!)」を同時展開する必要があります。システム思考の言葉でいえば、レバレッジポイントを複数特定して強く干渉し、ストックとフローを循環させる。
性質が異なる物事の相互作用をうまく表現・評価することは難しいなと思っていますが、時間のかかる仕組みづくりは一段落しました。今後は仕組みをチューニングしながら、チーム全体で顧客体験の良化に向き合っていきたいです。
手放す宣言
今期のテーマは「シェアードリーダーシップ」です。私は仕事を手放していくと同時に、各メンバーにリーダーシップを発揮してもらう体制に挑戦します。
手放すことには「開放のダイナミズ厶」のようなものがあると思っています。 例を挙げると、最初からそれぞれ任せていくよりも「マネージャーがやっているあれ、もっとちゃんとやればいいのに」という問題意識が生まれた頃にその人なりの改善アイデアを発揮するほうが、より主体的かつ的確に取り組めるのではないかということです。
これには原体験があります。過去に自分が退職した組織で「〇〇さんがすごく活躍しはじめたよ」という話を聞くことがしばしばあります(めちゃくちゃ嬉しい)。クライアントワークをしていたときも「横田さんがいてくれなかったら立ち上がらなかったよ」といいながらも、その後自分など及ばないほどの成果を出している方がいました。
だから、なるべく長い目では自分のイメージできる範囲をリミッターにしないように意識しています。具体的には次のような体制に移行しています。
期初にあたっては、組織運営のさまざまなことをメイン担当・サブ担当を仮決めしました。私の考え方がある程度伝わった状態から、メンバー各自の活躍を促進していきたいと思っています。たとえば、そのあらわれとして、私が設計した会議体がメンバーの意見で改善されることも増えてきました。
期間限定ですが、私自身がプレイヤーとして特定の開発チームにジョインしてIndividual Contributorとして時間を割いていきます。他のメンバーと同じような立場になることで、何でも拾う係から離れてみるトライです(そして、リサーチしたりプロダクトをつくるのは楽しいです……!)。
もちろん、単に自分の仕事を手放せばいいということではありません。
各メンバーが取り組みやすくなるようなサポートやゴールと背景認識の同期がセットになることですので、これまでと異なる努力が必要です。
これからがんばりたいこと
上記までは組織運営の土台を整えることに注力してきた話でしたが、組織規模の拡大に一定の時間がかかったゆえにできなかったこともあります。
まず、さまざまな取り組みと成果をプロダクト組織全体に広めること・影響範囲を拡大することは、ほとんどできませんでした。
他社のデザイナーさんに「デザイナーの間では横田さんはすごく活発な印象だけど、社内では実際どうなの?」とよく聞かれますが、耳が痛い点です。 プロダクトデザイン組織主体のコミュニケーションを通じて、各メンバーがデザイナー不在でも顧客体験にフォーカスしたものづくりを行える技術を身につけることが理想です。それぞれの動きやすさはもちろんのこと、そのための環境を用意していきたいと思います。知見の展開や、職種間をまたいで使えるプロセスの整備など、できることからアジャイルに取り組んでいく余地はあったと思います。
もう一つが、プロダクトデザイン組織としての役割のデザインとGo to marketです。 もちろんプロダクト体験をよいものにすることがプロダクトデザイナーの責務であることは共通認識として確立されています。それでは、組織という単位で上位組織・ビジネス成果にどう貢献するか?そのような枠組みが有効か?という観点では答えがでていないのが現状です。
私はデザイナーですが、よい顧客体験の実現が最重要であるので「デザイン組織の枠組みの強化」が自組織に最適解なのかはHowの一つとしてとらえています。こればかりは、一人で考えるものではないので、いろいろな方と対話を積み上げて取り組んでいきたいと思います。
おわりに
入社して10ヶ月ほどのことを書きました。この期間でもいろいろな失敗や学びがありましたが、また少し時間が経つとわかってくることもあると思うので、しっかり振り返りの時間をとりたいです。
1年目は比較的実現すべきことが明確でしたが、今後は理想を描きレバレッジを持って実行していくフェーズに入ります。タイミーではたらくことに興味を持っていただいた方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。
お読みいただきありがとうございました。
今回の記事テーマは投票をいただいて決めましたので、投票いただいた方もありがとうございます。
タイミーのAdvent Calendar、前日はPdMの大嶋さん、AndroidエンジニアのTick-tackさんでした。こちらも併せてごらんください。