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結婚したいと思ったときは既に遅し! 寄ってくる男性を拒み続けたアラサー女性の末路

 この時期、私は、チームリーダーとして、チーム内の部下社員の面談をしないといけない。私の面談のスタイルは、上から下に対する詰問形式というよりも、いわゆる今風(?)の、共に伴走する形というか、フレンドリーな感じを大事にしている。

 実際、Z世代の女子との面談においては、20歳くらい歳が離れているが、上司というよりはむしろ、先輩と接するような雰囲気での雑談スタイルだ。

 さて、そんな彼女は、(いい意味で)年齢よりも大人びて見え、しっかりとしているのだが、時折、私が仕事の愚痴を話しても、ニコニコと笑顔で聞いてくれるので、私も、つい、ことあるごとに彼女に愚痴を聞いてもらい、気がつけば結構な時間が経っていた――ということもある。

 ただ、今回は、そんな話の流れの中で、彼女自身も悩みがない訳ではないという話になったので、ちなみに、彼女は今、どんなことに悩んでいるのか何気なく聞いてみたところ……彼女がやや顔を赤らめて言う。

「……ケッコンですよ(笑)!」

 


○令和のZ世代の結婚観

 ――確かに。彼女は、ギリギリのZ世代で、四捨五入すれば30歳となる。適齢期といえば適齢期だろう。ただまあ、今のご時世ならまだまだ早い方ではないか? とはいえ、彼女が実家の田舎に帰るたびに、そんな話題になるので、悩まざるを得ない――と言う。

 そして、そんな彼女自身は、別に、特段強い結婚願望がある訳でもなければ、自分自身のそんな焦りのなさも含めて、いろんな角度からモヤモヤとした漠然とした不安となっているようだった。加えて、周りの既婚者を見ても、みな大変そうで幸せそうには見えないとのことで、そういうのが、自身の結婚観にも影響を与えているようだった。

 私は……この辺、あまり深入りはせず(ハラスメントになっても怖いし)、ここ半世紀の結婚にまつわる変遷の話というか、昭和のお見合い結婚時代の話から恋愛結婚への変遷の話や、最新のアプリ婚活までの歴史をお話しし、あとは、自分自身の過去の恋愛の失敗談を話したりした……。

 

○私の過去の恋愛の失敗談

・7歳年下の可愛らしい女性

 さて、そんな私自身の恋愛の失敗の話なのだが……。

 それは、私が我社に入ってすぐの頃。対象となるお方は、私より半年遅く入ってきた、7歳年下の女性だった。当時、彼女はまだ、高卒直後の18歳――今思うと、当時はまだ未成年だったのか。

 当時、7歳下といって思いついたのは、私が大学4年生の時の塾講師での、とある中3女子の教え子。塾講師時代、その教え子について、女性――というか女の子としての魅力は感じていたのだが、年下過ぎたので、どうも彼女を恋愛対象としては見れなく……私も卒業と同時に塾講師も終わったので、特段何も起こってはいない。

 ということで、そんな中3女子と同様、やはり7歳年下というのは、恋愛対象として見ることができず、当初は、そんな18歳の彼女に対し、特別な感情を抱いていなかった。しかしながら、毎日顔を合わせる期間が数年と続く頃には、そんな歳の差を感じさせないくらい、彼女が魅力的な存在となってきたのである。

 なんだろう……彼女。可愛らしくも、ちょっぴり不器用で鈍くさい感じが、守ってあげたいというか、共に成長していきたいと思えるようなタイプのお方だったのだ。

 とはいえ……私自身、彼女に対しては脈がないことは分かっていた。それで、私の人事異動のタイミングで、彼女をあきらめることにしたのだが……まさか! 彼女が1年遅れで私を追っかけてきて(?)、再度私と同じ部署で働くことになるとは想像が及んでおらず、驚きと同時に、彼女への気持ちも再燃した。

 

・友達以上恋人未満の越えられない壁

 その部署では……結局、毎日2人きりで、お昼ご飯を一緒に食べる関係になった。また、時折、夜も2人きりで飲み屋に出かけ、2人で大鍋をつつき合ったり、1つのアイスクリームを共につつき合ったりする関係にまでなった……のだが、彼女とは、決してそれ以上の関係に発展することがなかった。そして、あまりにも自分勝手に私を振り回し続ける彼女に、結局、私の方の気持ちが冷めてしまった……過去がある。

 この辺、あまり詳しく書いても仕方のないことだが、当時、いろんな友人に相談した結果、恋愛経験豊富な友人ほど、
「彼女は、落とすのが難しいタイプの女性。深入りするのはオススメしない。」
といったような、早く諦めたがいいという意見が多く、逆に恋愛に疎い友人ほど、
「それ、絶対イケる! 終電がなくなるまで一緒に飲んで、そのままホテルに行けばいい。実は、彼女もそれを期待しているはず。女性からそんなこと言えるはずがない!」
という感じだった。

 さて、そんな私は――実は恋愛経験が少ない方であり――後者の考えと同じだったのだが、やはりここは、経験豊富な前者の意見に従うべきだと思い……結局彼女とは、いわゆる友達以上の関係にはなったとは思うが、それはあくまで「仕事の上での先輩後輩」という関係の一線を越えることがなかった――というのが正直な感想だ。

 具体的には、平日のお昼、彼女は一緒にご飯を食べる人がいないので(男性の中では一番マシな)私を誘う。平日の夕方、仕事の愚痴を聞いてもらいたいので、(話を聞いてくれそうな――というか、独身は私くらいなので消去法で)私を飲みに誘う……。

 その反面、土日は当然だが、平日夕方でも、私からデートに誘っても「まず確実に」彼女は、気まずそうな顔をして、適当にはぐらかしては断ってくる。その頃は、私も日々の会話の流れの中で、単刀直入に、
「それ、僕も行きたいし、一緒に見に行きませんか?」
とデートに誘っていたのだが、彼女も、
「その日は、友達と一緒に行く可能性が……高い、かもしれないと思われるから……。」
とかなんとか言って、気まずそうに断ってくる。

 ちなみに、この件は後日談があり、その催し物の翌日、彼女にどんなだったか感想を聞いてみたら、
「いや、友達と連絡つかなかったので、結局1人で行ったんですよ。」
と、あっけらかんと言ってくる。

 その時は、さすがの私も、
「え? 私が先に誘っていたのに、結局友達と行かなかったのなら……。私に何も言わずに1人で行くって……それはどういうことですか?」
と、半ばキレ気味に詰問した覚えもある。

 なのに、それ以降も、彼女は平気に、
「お昼、食べに行きましょう!」
とか誘って来るもんだから、本当にタチが悪い。そして、誘われたら喜んで行ってしまう私も、どこか何かおかしかったのかもしれない……。

 

・結局、彼女にとっての私とは?

 まあ、要は、彼女にとっては、私のことなんてプライベートではこれっぽっちも想ってもいなかったのである。ただそれだけのこと……。

 そして、彼女との関係は、一切、持ちつ持たれつでもなく、まるで「惚れた方が負け」というか、「釣った魚に餌をあげない」というか、明らかに、彼女のみが主導権を振りかざすこの関係に、さすがの私も、もう辟易としてしまっていた……。

 当時はスマホなんてなく、今でいうガラケーが主流の頃で、それなのに、私のはカタカナ20文字しか送信できない PHS だったので、彼女から、
「携帯に替えたら、メールもいっぱいできますよ! 替えましょうよ!」
と言われたときは、実際に携帯を買い替えて、すぐに彼女にメールを送ったものの……やはり、返ってくることも……なく。

 要は、彼女にとっての私というのは、いわゆる「アッシーくん」とか「メッシーくん」とかと同様に、単に、平日の日中を寂しく過ごさないための、都合のいい話し相手という位置づけに過ぎなかったのである。

 それでいて、時折土日でも、私に仕事の悩みを聞いてほしいときは、私に電話をかけてきては、平気で1時間も2時間もグチるし。そんな私も、そんな長時間愚痴を聞き続けることになるし……。

 いや、私は私で、そんな時間も本当に幸せなひとときだったので、それはそれでよかったのだが……それはある休日のお昼の時間帯、パスタを茹でようと鍋に大量のお湯を沸かしていたのだが、そのまま彼女との電話に熱中してしまい、電話を終えてガスコンロに向かったときに、お湯も何も入っていない熱せら続けている鍋だけがあったのは、さすがに、
(こんな彼女との関係を断ち切らないと、いずれ何らかの事故を起こすのでは?)
と思ったのも、彼女を諦めようと思ったエピソードのひとつだ。要は、付き合っていればもう少し気を抜いた気軽な会話ができるものの、休日のお昼に彼女からの電話とか、またとないチャンスであり、これは、どうにかして、大事に大事にやり取りしないと――と、必要以上に彼女との会話に熱中していた、ということに他ならないからだ。

 結局その後は、やはり、またもや私が先に人事異動となり、しかも激戦地へ送り込まれたこともあって、今度こそ本当に、彼女と連絡を取ることもなくなった……。

 

・そして、気がつけばアラサーとなった彼女

 それは、私がその激戦地から離れた時のこと。私と入れ替わる形で、またもやその彼女が、激戦地に送り込まれていた。やはり私の後を追うかのような人事異動に、人事側から見ても、彼女と私は似たもの同士ということなんだろうな――とは思う。

 そして、それから数ヶ月が経過して、彼女も激戦地で間違いなく愚痴もたまっている頃だろうと、機会があったついでに、彼女の元に挨拶に行ったときのこと。最後に会ってから5年以上経っていたか……? その時既に、私も36ぐらい……そうか、彼女とは、10年来のお付き合いだったのか……。

 その場では、彼女から仕事の愚痴を一通り聞いた後、今度は……プライベートな悩みというか、仕事以外でも満たされていないという話になる。そして、ついに彼女が言う。
「私ももう30ですよ?」

 ――それは、私の年齢から逆算すれば分かる。

 彼女が言うには、周りはどんどん結婚していくので、休みの日に遊ぶ友達もいなくなってきた、だんだん寂しくなってきた――とのこと。加えて、結婚できない(彼氏ができない)自分は、何か問題があるのか? などと私に相談してくる。

 ――その時の私の気持ちは、正直、
(どの口が言うのか?)
というか、
(誰に何の相談をしているのか?)
と、むしろ怒りのような感情すらわいてきていたのだが……私もその頃、婚活も一巡していた頃で、もはや彼女のことなんて、これっぽっちも想っていなかった。

 

・その頃の私の周りの結婚事情

 余談だが、その頃私は……前述のとおり、既に彼女のことなんてすっかり忘れ、いわゆる婚活をしていた。今でこそ、30代後半の結婚も珍しくなくなっているが、当時は、30代前半の男性でさえ――少なくとも私の周りでは――売れ残り感があった。それで私も焦っていた頃の話だ。

 そういえば、そんな婚活で知り合った女性からのメールで、宛先欄にある私の表記が、

吉弘きよし(カツコン)

となっていた時もあったけな……。送り主には、優しく丁寧に教えてあげたものの、これ以外の出来事でも、婚活は婚活で本当につらいつらい経験をたくさんしてきた。

 端的に言えば、所詮、婚活で知り合うような関係というのは、やはり突然あっさり切られてしまうのだ! 理由も分からないままバッサバッサ切られ続けた私は、人間不信に陥りそうになっていた頃だった。

 だからこそ、過去、私からの数々の誘いや気持ちをとことん踏みにじり続け、構ってほしいときはゴロニャンなのに、構ってほしくないときは賢者モードで……今までの年齢ボーナス期間を有効活用もせず、それと同じ感覚のままで何の具体的な行動を起こさないにもかかわらず、グチグチと不平不満ばかりを並べる彼女には、もはや何の魅力も感じられなかった。

 ――といいたいところだが、そういう弱い部分を、私に見せてくるのが彼女の魅力でもあり、全く気持ちが揺れ動かなかったのか? と聞かれれば、私自身「はい」とは言えなかっただろう……。

 

・その後の彼女は?

 その後、結局、彼女は、この激務な部署に耐えられなかったのか、その翌年で退職していた……。表向きは、田舎に帰る必要があるということになっていたが、実は、メンタルをやられての退職だった。

 どうして、そんな裏話を知れたのか? ……それは、実は、私がまた、再度その激戦地へ、今度は、チームリーダーとして異動することになったからであり、そこでの前任者からの引継事項だったからだ。

 もし……私の異動のタイミングがあと数年早く、再度彼女と一緒に同じ部署で過ごせていたのなら……しかも、私が彼女の上長として共に仕事ができていたのなら……もしかしたら、また、何か違った未来になっていたのではないか――と、今でも思うこともある。

 ――ちなみに、この女性というのは、実は、以前記した生ゴミ臭(ケトン臭)がしていた彼女のことである。

 

○令和のZ世代への助言

 さて、話は、当初のZ世代の部下のことに戻る。

 以前は、お見合い結婚が主流という時代もあったし、もしその時代に生きていれば……とりあえず周りに言われたとおりにして、流れに身を任せておけば、そんなに悩むことなく結婚できたのかもしれない。

 でも、今やアプリですぐに候補となる相手と無数につながることができる時代。いくらでも候補がある訳だから、選ぶのも大変なのだろう……。確かに、可能性の幅が広がれば広がるほど、選択は難しくなっていくとも言われている。

 そんな彼女は、2年前にうちのチームに来たときは、まるで昭和の OL を彷彿とさせるような、やや地味でまじめな風貌だったのだが、2年経って、ちょっとした場面で幼さというか、可愛らしさも垣間見えるようになってきた。

 幸い、彼女は私の「タイプ」ではないので、私自身が、彼女に対し恋愛感情を持っている訳ではなく、逆にそのことが私の中では本当に救いなのだが……それでも、日々日々、魅力感じられるように変化していく彼女に、機会があればゆっくりお話ししたい気分すらなっていく……。

 いや、私の部下なんだから、そんな機会はいくらでも作れる……が、そんな彼女の未来を、私の個人的な感情でダメにするのは申し訳ない。というか、一歩間違えばパワハラ、セクハラだ(笑)。

 いやしかし。彼女には、私のような苦くつらい恋愛経験をすることなく、本当に幸せになってもらいたいものである。


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