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葉月

風になびく富士の煙の空に消えて ゆくへもしらぬわが思ひかな 
西行「山家集」

気温は秋らしくなってきたと思っていたら、連続して台風に見舞われていますが、被害に遭われた皆さまにお見舞いを申し上げます。

冒頭の和歌は西行さんのもので、西行さん自身が自分の第一の自嘆歌(自ら褒める歌)としている歌だそうです。

風になびいていく富士山の噴煙が空に消えていく。同じように私の思いもどうなっていくのか行方もわかないのである

というような内容かと思います。

歌をどう歌うのかではなく、自分の心をどうするのかに苦心した西行さんのこの歌を小林秀雄は

「遂にこういう驚くほど平明な純粋な一楽句と化して了った」(小林秀雄「モオツァルト・無常という事」)

として

「この歌が通俗と映る歌人の心は汚れている。一西行の苦しみは純化し、『読み人知らず』の調べを奏でる。人々は、幾時とはなく、(中略)めいめいの胸の嘆きを通わせる」

と結んでいます。

西行さんはただ素朴で純粋な歌を詠んだのではなく、
自分の心に向き合いながらありのままに見ありのままに詠むことで、
読む人の人生の悲哀や嘆きと通じ合う歌を詠むことに至った天才の姿を見ることができるいうことになるのでしょうか。

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