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DMM TV独占配信「インシデンツ」全6話を観て

話題になっているインシデンツ全話観ました!


結論

ただただ素直にむっちゃ面白かった。そして新鮮でした。
表現する側の人間は必修科目であることはもちろんのこと、お笑い好きならこの挑戦的な企画をリアルタイムで見届けない手はないなと心から感じた。

何度でも観たくなる、世界観の作り込みとOPのかっこよさはサブスクならではで、何よりラジカルなさらばがメインに立ってこそ成り立つコント番組だった。あゝ愛おしの歩く五反田インシデンツ。

また、1話1話の性質が全く違い感情が忙しかった。
ブラックアウトするたびに映る、画面に反射した自分の顔は見るたび口が開いていて、圧倒されっぱなしだったことは明白だった。
ストーリーとして意図して進んでいく笑いの中にある恐怖、驚き、そして計算された裏切りは長尺の舞台演劇を見ているようでもあった。

極上の体験にネタバレは本当に勿体無いので、粗相が無いようにOPのマキシマム ザ ホルモン/包丁・ハサミ・カッター・ナイフ・ドス・キリを聴きながら、感想を記していくことにする。

そもそもインシデンツとは

今やお笑いファンのみならず、エンタメを好きな人なら一度は名前を聞いたことがあるであろうプロデューサーの佐久間宣行が、「DMM TV」で配信されるコント番組『インシデンツ』を制作した。本作は「地上波では流せないコント番組」というコピーのもと、芸人や俳優たちがタブーとされている過激なネタをもとにしたコントに挑む。


https://realsound.jp/movie/2022/12/post-1219725.html

DMM TVはローンチに先駆けこの番組を目玉にした。
この手の起こりはアマプラの「ドキュメンタル」、佐久間さんといえばネトフリの「トークサバイバー」のような、今回も認知度を一気に引き上げる大型バラエティ企画の立ち位置だ。

コンセプトは「地上波では流せないコント番組
DMMという名前の印象からイメージするに、とんでもけしからんコント番組なのだろうかと思っていたが、蓋を開けてみるとあらゆる角度のコンプラ、倫理観、公序良俗をぶち破っているくせエンタメとしてかっこよくめかしこんでいる。もちろんみんなが期待してるセクシーもある。ちょびっと。

タイトルはどうやら仮のままFIXしたっぽかった。事変、とか改革という意味だそうで、尖ったテーマにぴったりである。

構成は先に挙げたトークサバイバーのような即興コント、ドキュメンタルのようなお笑いゲームとも違い、1話完結型ではなくインシデンツはコントを織り交ぜたドラマ全6話である。
「長いッ…!!!!」
これは最初に感じた正直な思いである。観るまでの腰が重かったのは事実だ。ただ見初めてしまえば終わるのが寂しかったりするものである。

脚本は上記引用した佐久間さんのインタビューでもわかる通り、オークラさん、さらばの放送作家ナベちゃん、かもめんたるう大さんという鬼強な布陣。こんなん面白くならん方がおかしい。

脚本陣

さらに構成について、佐久間さんのインタビューでは以下のように続く。

ーー意識した番組や参考にしたものはありますか?
佐久間:(中略)あと参考にしたのは、どちらかといえばアニメ作品ですね。ここ10年くらいのアニメって、ストーリーも面白いけど、構造が凝ってるものがたくさんあるじゃないですか。例えば『魔法少女まどか☆マギカ』とか『デカダンス』とか。オークラさんとプロットを作ってるときに、共通認識としてこれらの作品の名前が出ました。あとはゲームですね。ゲームでも構造が変わってるものが好きで、『ブレイブリーデフォルト』や『UNDERTALE』とかが参考資料になっていると思います。

ーーその“構造”について、詳しく教えてもらってもいいですか?
佐久間:ゲームで例えると、「プレイヤーがやってきたことが、本当に世界に貢献してたかというと違ってくる」みたいな展開ですね。つまり、“操られていたオチ”のような、「能動的に見ているものが、そもそもルール自体が違っていた」というものが好きで、それをバラエティーとかコント、ドラマの世界に持っていきたいと思いました。なんでこんなにアニメとかゲームは進んでるのに、ドラマは“普通の”ものが多いのか、と思っていて。もちろん面白いドラマもありますが、それなら僕はドラマの門外漢だからこそ、やりたいなと思いました。

上記と同じ

まず、上記に出てきたようなアニメやゲームの展開にある「裏切り」を「能動的に見ているものが、そもそもルール自体が違っていた」やつと表現されているのを受け、端的に言葉として落とし込まれてらっしゃることに佐久間さんの凄さを感じる。

この「能動的に見ているものが、そもそもルール自体が違っていた」やつの特徴としては、比較的話数やシナリオの積み上げでの視聴者の移入、かつまごうことなき明確な敵の存在。「絶対に倒して、自分の幸せを掴む!」という視聴者の疑いのない期待からの「裏切り」こそ面白さの魅力だと個人的には思っている。

佐久間さんもご存じなんですね。これは裏切られた。

インシデンツは上記の観点でいくと、(感想としては今後さらにコンテンツが広がることを期待して渋めに評しますが)
話数はもっともっと増えてもいいなと思っていて、キャラクターへの感情移入をさらに膨らませたかなというのと、「明確な敵」という部分では、出てくる人間全員、無茶苦茶かっこいい、イイやつばっかりなので、その点裏切られきれなかったな〜と惜しいようにも感じているのも事実。
そうなんだよな。みんなかっこよかった!

例に漏れずドラマを多く見ない人間なのだが、そもそも恋愛の要素が無いドラマ自体が新鮮で、珍しい。
ドラマという媒体自体、TV局が視聴率の取れるF2層ニーズに刺さるものを主流にしている関係か、自ずとウケる恋愛ものが多くなる心象だからか、ドラマの可能性を自由に捉えている実験的な作品というのがよくわかった。

サブスク(オリジナルバラエティ)におけるパラダイムシフトはアマプラのドキュメンタルだとして、コントドラマ番組に関しては今後
インシデンツ以前インシデンツ以後に分けられるのではないだろうか。

最後に

インシデンツを一言で言うなら、
「TV以上に潤沢な予算でコンプラ違反あえて全部やったろうコントドラマ(さらば青春の光味)」といったところだろうか。
大変良い作品を観たと言う満たされた気持ちでいっぱいである。

ここからは私の個人的な願望なのだが、インシデンツという作品は、この6話で完全に完結してしまうには勿体無いくらい作り込まれていて、まだまだ広がっていく余地があるんじゃなかろうか。
2をやって欲しいし、実は舞台にしても面白いんじゃないかな、なんて思いながら観ていた。

舞台映えするセット、劇中劇での場面転換も、大分右っぽい衣装も、その過激な内容も、鼻のアレも、どれもすんなりと板で演っているイメージが出来た。
日替わりでゲストの芸人さんが出て来たりなんかしてね。
あのコントたちの少し続きをやったりね。
シティポップでチルな士気の歌を客まで立たせて、みんなで歌ったりなんかしてね。ズズズズーン
考えれば考えるほど面白そうだ…。
舞台「インシデンツ」、叶うのであればぜひお願いしたい。

そしてDMM TVさん、極上のコンテンツと、さらば青春の光をありがとうございました。
一人でも多くの方がインシデンツの極上体験をみんなと共有できますように!

ヨーロッパ企画の上田氏の応援コメントを添えて。
テイクサムシンなばっ

応援コメント
■上田誠さん(ヨーロッパ企画)
ドッキドキしてます。ぞぞぞとなりました。驚くべき多義図形だ。地上波では絶対放送できない。当局にみつかり指導を受けるからだ。赤信号をみんなで渡ることはある閾値をこえると正義になる。事象が大きすぎると裁きが追いつかなくなる。インシデンツは始まっているんだ。

https://dmm-corp.com/press/service/1866/

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