この世に一人、かつて家族だった人がいるということ

私には、かつて法的に「家族」だった人がいる。
今はどこでなにをしているかわからない。二人で過ごしたあの部屋からは、とっくに出ているだろう。
もしかしたら死んでしまっているのかも。でも、本当にそうであっても知る術がないのだ。
かつて、であったとしても家族であったというのに。

彼に対する好意とか、そんな類いのものはもう持ち合わせていないけれど、かつて家族だった、という事実は私を不思議な気分にさせる。

そしてもう、二度と会わないと思う。
そして、いつの日か死んでしまってもそれが分かると思う。

憎んでもいないし、愛しても、ましてや好きでもなんでもないけれど。

私にはそれが分かると思う。

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